Thunder Valley by PYATT STUDIO
2019_04_06
Sweat Equity Project
2017年、私達は、Lone Tree project というsweat equity project を行った。sweat equity projectとは、 クライアントが自ら汗を流し、金銭の代わりに労働力を提供することで住宅を受け取るプロジェクトだ。これまで、DesignBuildBLUFFプログラムを通して、住環境に問題があるクライアントを相手に、無償でプロジェクトを提供してきたが、無償、というのは住まい手がその住宅の取得に何も責任を果たしてない分、長い期間で愛着をもって住んでもらうというのが難しい、という現実をこれまでいくつも見てきた。つまり、学生や私達が頑張って作り上げたプロジェクトが数年後に空き家になってしまうケースだ。
大きな原因としては、ナバホ居留地での職不足があると思う。都市で職を得たためあっさり引っ越してしまうのだ。こういった大きな社会問題の場合、私達だけでは解決できないが、私達が出来ることとして、クライアントとの関係を見直すという方法がある。一方的に与える、与えられる関係であることより、よりクライアントをパートナーに近い相互関係に仕組みを変えるのだ。クライアントに金銭でない、労力としての責任の一端を担ってもらうことを解決策として考えられるのではないかと思い、sweat equity project に取り組むことにした。
今年2019年に、2年ぶりに同様のプロジェクトを計画しているので、前回の反省、改善を踏まえて、同様のプロジェクトをアメリカ、サウスダコタのThunder Valley で行うPYATT STUDIO 建築事務所のRob Pyatt さんに話を聞いた。彼らはこれまでにネイティブアメリカン、ラコタ族のコミュニティーにいくつかの自力建設プロジェクトを行ってきた。
資金集め
彼らのぷロジェクトの成功には、資金集めが功を奏したところも大きいようだ。明解に、自力建設に対する補助を始め、社会経済開発、都市開発、等のより大きな組織から多額の補助金を受けることに成功したようだ。その成功には、申請の主体者として、ラコタ側が自ら支援を募った、というが要になったらしい。支援を実際に受ける側からの主張、彼らに手を挙げてもらうことで援助が受けやすかった様だ。余談として、支援金の一部と、今回のSweat equity プロジェクトを通して得た経験、知識をもとに、ラコタの地元で労働力開発を担う施工会社も実際に立ち上がったようだ。地元での雇用を広げるところまでできているというのは素晴らしい。
パートナーシップ
また提携先として、コンサル会社(Sweet Grass Consulting)をパートナーにして活動をしたという話も伺い参考になった。彼らはプロとして、各種の必要データとともに、プロジェクトの内容を文書にまとめ、助成金申請および報告のための情報を収集したそうだ。 さらに、一年に及び、地元の人に対するインタビューを通して、既存の住宅の改善が必要な点(カビ、気候データ、など)をまとめ、現地での住宅評価基準の作成も中心的に行ったようだ。確かにこういった作業までなかなか手が回らず、文書化や広報がおろそかになることは私達にもたたある。
プログラム組織内部には、若く、情熱と強いリーダーシップを持つラコタのメンバーがいたというのもとても重要なポイントだったようだ。それが地元行政側の人物であれ、地元の住人であれ、誰か地元と私達よそ者をつなぐ橋の重要性はよくわかる。
実際の住宅設計での留意点
:高断熱住宅であること。(最低R38)
:地元の文化的/伝統的要素の解釈。 重要な焦点の一つだったようだが、決して「土」などの特定の建築材料や先入観に焦点を当てているわけでなく、提供されたデザインの意図や目標を地元の人々の目線を通して、変更することを可能にしてほしいという柔軟さを求めていたものだったようだ。
:労力のかかる仕事について(主に土、伝統工法)の彼らの考察。彼らは、労働投入量が多ければ多いほど、プロジェクトが減速し、労働参加者の熱意を維持し、完成するのが困難という理由で否定的な見方をしていた。
私達は住宅の開発、デザイン、建設の中心的存在ではあるが、プロジェクトを大きなビジョンを描き、実際に動かすには、地元の人、私達の場合、ナバホの人々が中心になって動かないと大きな夢は描けない。
そのほか
契約方法
クライアントは当初は現地の住宅局であり、初期プロジェクトは賃貸住宅だった。約250ドルから300ドルの家賃と40ドルの公共料金( 太陽光発電を追加すると、これらの住宅は実質ただに可能性もある。)という安価な 家賃と公共料金の設定がプロジェクトを成功させたそうだ。
住宅ローンのための住宅評価
また、その後ラコタ居留地の外側を敷地とした場合には、それらのプロジェクトは住宅評価を行うことが出来たので、ローン組むための資産としてとらえられることもできたそう。
今回の話は、資金や人材を含む支援体制を含む大きな視点で話を聞くことが出来た。類似の状況も多く、参考になる点が多かった。特に、私達は住宅の開発、デザイン、建設の中心的存在ではあるが、プロジェクトを大きなビジョンを描き、実際に動かすには、地元の人、私達の場合、ナバホの人々が中心になって動かないと大きな夢は描けないというのは、本当に共感する。