NFTは何を取引しているのか?
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NFT(Non Fungible Token)をめぐる取引は究極的に「トークンの所有情報のみ」を取引している。 どういうことかというと、例えばNFTアートを購入するというようなストーリーでは以下のような理解になる。 ❌NFTマーケットでアートを購入した場合、アートの所有権を購入したことになる
⭕NFTマーケットでアートを購入すると、購入したマーケット上でそのアートがアイコンになっているトークンを購入したことになる
NFTとは Ethereum などに代表されるブロックチェーン技術を用いて、取引をトークンとして表現したもの。 つまり、基本的にはNFT単体には、「どういう取引をした」という情報だけが記録されることになる。
より厳密には、NFTを購入するとは発行されたトークンに対して取引情報を追記しているということになる。
オンチェーン/オフチェーン とは?
取引のメタ情報に、base64などで符号化したコンテンツデータを合わせて記録することもできる。こういう形態のコンテンツの取引をしばしばオンチェーンと呼ぶ。 オンチェーンである最大のメリットは、ブロックチェーンにより取引記録が改ざんされにくく、特定の母体の消失によりコンテンツが消失しない点にある。
消失しないという点に着目して、データサイズによっては IPFS を組み合わせて永続性を表現することもある。 一方で、ブロックチェーン上に記録された情報は一般的にはすべて開示される情報であるので、秘匿性をもたせたいと言うような要件では合致しない。
こうした場合は、コンテンツ自体はトークンとは別途管理する形態を取ることがあるが、これはオフチェーンと呼ぶ。 NFTを持っていればコンテンツを持っていることになるのか?
ブロックチェーンをたどり、所有しているトークンが、正規の発行元により発行されたトークンかどうかは検証できる。
ただし、コンテンツそのものが購入者にのみ利用可能な状態かはNFT自体は担保しない。
例えば、全く同じ画像がマーケットに流されたなどで、保持しているトークンが本物なのか偽物なのかはわかる。
一方でコンテンツとNFT自体には直接的な関わりがないので、NFT単体でコピーを防止することはできない。
複製されたコンテンツを別のNFTとして流せないようにすることはできない。
購入したコンテンツがどう扱われるかは、NFTを取引しているマーケット上に存在する機構によって実現されるものであり、NFT単体は、購入したコンテンツがトークンを保有している特定個人にのみ利用可能な状態を実現するようなものではない。
そういったコンテンツの利用制限は、NFTを発行したマーケット上の仕組みとしてコンテンツ利用の認可やDRMの実装が別途必要になる。 NFTマーケットでコンテンツはどう扱われているのか?
2021年11月においては、NFT、特にNFTアートの分野においてはGenerative Artとの組み合わせで、多量に生成された画像や音楽などのコンテンツを象徴としてトークンを多数発行し、NFTを取り扱うマーケット上で取引されることが多い。 象徴となっているコンテンツそれ自体は、NFTの所有状態によらず見聞きできる状態である事が多い。
トークンの視覚的な識別子として活用されていることが多いように見える。
NFTアートがNFTマーケットで取引されること自体がアートというような見方もできる。
NFTはどう活用されていくだろうか?
NFTの以下の特性を活かした仕組みに活用されていきそう
非代替性である点
改ざんされにくい特性を活かし取引が正当なものかを後で検証できる点
特定の母体に依存しない高い可用性を持つ取引システムを低コストで構築できる点
例えば・・・
あるプラットフォームがそのプラットフォーム上で活用できるリソースをトークンとして発行する
ユーザーはそのトークンをプラットフォームから購入することでプラットフォームのリソースの使用権を得る
使用に際してのトークンの正当性はブロックチェーンの履歴によって担保されている
別途、プラットフォーム上でトークンが示す使用権はNFTではなくプラットフォーム自身によって担保される
加えて、トークンはユーザー同士がプラットフォーム上でトークンを売買できる
というような感じ。より具体的には、
特定の銘柄のカードゲームが、
デジタル版としてゲーム上で使用可能なカードをトークンとして発行し、
トークンを所有することでゲーム中でそのカードの効果を使用でき、
カードは不要になればユーザーはマーケットで再販できる
というような現実にもありそうな仕組みをEthereumなどを使って作れる、というようなことになる。 単に、同様の仕組みをブロックチェーン以外の仕組みで代替可能ではあるものの、特定の運用母体が、高度に冗長化したり、対改ざん性を高めたりすることは、これまで通常は非常にお金のかかる話ではあるので、それらから比較すると、ブロックチェーンにより低コストで実現できる点が有用といえるのかもしれない。
また一見、「データベースの代替えとして使えそう」というようにも見えがちだが、あくまで取引を示すトークンに限っての話であるので、そういう話ではないというところには注意したい。
また別の具体例としては、NFTマーケットであるOpenSea では取引履歴を検証できる特性から、トークンの取引のたびに、一定マージンを発行元にロイヤリティとして還元し続ける仕組みを実現している。