2025/08/26a>02|回想 腹ぺこ淫魔(アブドリム)
主人とはじめて顔を合わせたとき。淫魔としての能力で築き上げた支配領域への侵入者を、領域の主として、絶対的な優位に立っていたはずのアブドリムは籠絡することができなかった。
あのとき、アブドリムがとった姿形は間違いなく、主人の眼鏡にかなうものだったのに。
淫魔としての手練手管で籠絡するどころか、逆に〔支配〕されてしまって。使い魔へと下された。
それでも、アブドリムはまだ、アブドリムという淫魔を簡単に〔支配〕してのけるほどの|魔力《ちから》を持った主人という極上の『餌』を、諦めてはいなかった。
「ナイト――」
真名隠しの意味もあって、|男《インキュバス》姿のアブドリムをそう呼ぶことにした主人が、アブドリムのことをどこまでも己の所有物だと思っているようだったから。