猫の絵描き歌
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ウィーンの絵描き歌(パン → かばん → がま口 → 猫)
Art and Illusionからの引用(訳・強調は松永による)
「表象〔=描写〕は必ずしも美術であるとはかぎらないが、美術でないからと言って不可解さが変わるわけではない。私は、絵作りの力と魔法がはじめてあらわになったときのことをよく覚えている。それに気づいたのは、ベラスケスを通してではなく、子ども向けの教本にあった単純な絵描き遊びを通してだった。絵の描き方は、ちょっとした歌によって説明される。まず、円をひとつ描く。これで一本のパンができる(というのも、私の故郷であるウィーンでは、まるまる一本のパンは丸かったので)。次に、その円の上に曲線をひとつ付け足すと、パンが買い物かばんに変わる。それから、かばんの持ち手の上にトゲトゲをふたつ付ければ、かばんが縮んでがま口になる。最後にしっぽを一本付け加えて、猫のできあがり。絵を描くコツをつかむとともに私が興味を引かれたのは、その変形の力だった。たとえば、しっぽは財布を破壊して猫を作り出す。一方を見るには、他方を消さなければならない。私たちは、この単純な絵遊びの過程すら十分に理解しているとは言えない。ベラスケスにいたっては、言わずもがなである。」
※ 松永コメント:3番目の「がま口」とされているのがどういう形状なのか前から謎。しっぽのない猫にしか見えない。