第21回観光情報学会全国大会にて発表しました「WebGPUを用いたデジタル万華鏡によるインタラクティブコンテンツの提案」(2025-06-28)
この度,2025年6月28,29日京都橘大学にて開催された第21回観光情報学会全国大会で「WebGPUを用いたデジタル万華鏡によるインタラクティブコンテンツの提案」というタイトルで発表させていただきましたので報告させていただきます! https://gyazo.com/10b3f0c90cff668313fa19958d89b568https://gyazo.com/f11357f9ee69c9e8db8d94a8a9ef5b5d
研究概要
近年チームラボなどデジタル技術を活用したコンテンツが観光施設でも増えてきており,これにより従来にはない体験を提供できるようになりました.
チームラボのようなコンテンツでは基本的に期間が長いものや常設で展示されてるものが多く,専用のハードウェアなどが使用されています.
しかし地方のイベントでこのようなコンテンツをしたいと思っていても,数日間のためにわざわざコンテンツのためのハードウェアを用意したり,アプリをインストールして環境構築をしたりするのはコストもかかりますし,とにかく手間がかかります.
このような背景から,イベント等でも気軽に,高品質なデジタルコンテンツを提供するために,普段から使用しているPCで,URLに飛ぶだけで動作するシステムを提供することが本研究の目的です.
具体的にはWebGPUという新しい技術を用いて,身近な端末でも動作可能なデジタル万華鏡システムです.
https://gyazo.com/103183d37ccb86360ed430564dec085b
ここでなぜ,今回コンテンツとして万華鏡を取り上げたのか簡単に説明します.
万華鏡は鏡と光による視覚効果で江戸時代に西洋から輸入されて以来,多くの人々に親しまれてきました.対称性や色彩変化といった無限パターンにより世代を超えて人々を魅了し続けています.
また,日本各地に万華鏡を題材とした観光施設が存在しています.京都万華鏡ミュージアムや仙台万華鏡美術館がその例です.
ここから万華鏡に観光価値としての価値があるのではないかと考え,デジタル万華鏡と題してコンテンツを開発しました.
次に技術的なこととして,WebGPUについて説明します.
WebGPUとはWebGLの後継として開発された最新のWebブラウザ向けグラフィックス・計算APIです.
WebGLはOpenGL ESを基盤としたJavaScript APIで,グラフィックス描画に特化しており,多くのWebコンテンツで利用されてきました.
GPUの一部機能を簡易的に利用できる反面,高度な最適化や計算には限界があります.
ここで,2023年に本格導入されたWebGPUを使用することにしました.WebGPUはVulkan/Metal/Direct3D 12などより現代的で高性能なグラフィックスAPIを基盤としており,GPUをより直接的かつ効率的に制御できるため,描画だけでなく汎用的なGPU計算にも対応しています.
また,Unityなどのゲームエンジンとは違い,専用アプリケーションの必要がなく,URLを開くだけで使用できることも踏まえ,今回WebGPUを採用しました.
本システムの構成について簡単に説明します.
以下の3つの主要技術が連携して動作しています.
WebGPU高性能描画処理
リアルタイム映像処理システム
インタラクティブUI制御システム
本システムの基本機能について,現在搭載している機能は以下の4つです.
万華鏡対称変換処理
ズーム調整
鏡の枚数変化
回転速度変更
これらを全てWebGPUシェーダーで高速処理し,リアルタイムでの設定変更に対応しています.
本システムでWebGPUを採用することで,効果な専用機器を用意したり,専用アプリケーションのインストールが不要になり,普段から使用しているPCで環境構築なしに動作させることができるため,導入コストの削減が見込まれます.
これにより,今まではデジタルコンテンツをすることができなかった小規模システムや地方でもイベント等で気軽に提供が可能になると考えています.
今後の展望は3つあります.
1つ目は実証実験と評価を行うことです.
具体的には愛知県半田市のキャナルナイトや豊田市のしきしまの家のふらっと祭りといった地域イベントへの出展を予定しており,参加者や主催している団体などからフィードバックをいただき,システム改良に努めたいです.
2つ目は現在のシステムの改良です.
現在のシステムではキーボードによる操作で,反射をしている回数も少ないためあまり綺麗な万華鏡とは言えないです..
鏡の反射を増やすといった処理を加えることでより無限に広がるパターンを再現することでよりリアルな万華鏡に近づけること,インタラクティブな要素として参加者の動きによって万華鏡が回転したり模様が変化したりする機能を追加したいと考えております.
3つ目は拡張機能を追加することです.
より地域に根ざしたコンテンツを提供するために以下の拡張機能を追加したいと考えています.
地域の特徴を反映した色調フィルタ
伝統模様の組み込み
体験記録の保存機能
SNSと連携し,体験記録を共有する機能
感想
今回初めて学会で発表させていただきました.人前で何度か発表したことがあるとはいえ,今までにはない緊張感を持って発表することができたと思います.
前日まで発表スライドを修正したり,原稿を考えたりしていたため,常に周りの様子を見ながら発表することができませんでしたが,多くの人が耳を傾けてくださったと信じています..
質問ではWebGPUについて聞かれると思い,それに対する準備をしていましたが,WebGPUのことには一切聞かれず,必要なハードウェア(Webカメラで動作するのか,プロジェクターは必要なのか)について聞かれました.また,観光地でどのように売り出すのかという質問や万華鏡に観光的価値って本当にあるのかということを聞かれました.その点は全く予測しておらず,即興で答えてしまったため,準備不足だなと感じました.
また今回万華鏡であることには重きを置いておらず,WebGPUを使用することでどこでも簡単にデジタルコンテンツを提供できるということを伝えたかったので,私の伝え方がよくなかったなと反省しております.
他の方々の発表を聴いている中で,普段は観光とは関わりのない研究をしていないため理解できない部分もありましたが,面白いなあという発表も多くありました.
個人的には自転車と自動車の研究が面白いなあと感じました.
発表の仕方についても参考になった部分が多くありました.
話の展開の仕方や説明の仕方など,今後の発表でも参考になる点が多かったです.
今回発表した経験を通して,自分の研究について,初めて聴く人に理解してもらうためにもっと噛み砕いた説明であったり,具体的な例をもっと出したりと,伝え方について改めて考えるきっかけになりました.また私の研究内容やコンテンツをイベント等で出展した際のイメージを聴いている方々にもイメージしてもらえるような発表内容にするべきだったという反省点も見つかりました.今後にも活かしていきたいです.
最後まで読んでいただき,ありがとうございました!