日の目を浴び始めた「変な楽曲達」
どうも!プランナー内定なのに曲のことばっか喋ることで多分有名なB4の安藤魁星です! 趣味としての音楽は楽しいのでこれからも続けていくでしょう!
さて、そんな私個人の話は置いておいて、私は近年の音楽シーンについて興味深く思っていることがあります。
それは...
変な曲、増えたなぁ
ということです。
変な曲、という言葉の定義が難しいので具体的なことを説明するのは少々難しいですが、なんとなく共感してくださる方はいらっしゃるんじゃないかなぁと思っています。
今回は、具体的な楽曲の例を挙げながら、「なぜ変に感じるのか」「その技術を使う理由は」などの観点で考察をしていきます。
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その1:音楽理論の破綻
音楽というのは、学問になるくらいですから、当然といえば当然に理論による座学が存在します。
一般的に音楽理論と呼ばれるものは、西洋音楽由来のものを指すことが多く、理論的に作曲を学んだり、既存楽曲の分析などを行うために存在しています。
しかし近年、構築されてきたそれら音楽理論の一部が破綻していそうなのに曲として成立している奇妙な曲が注目を浴びています。
そう、原口沙輔さん。
あなたのボカロ(広義)曲ですよ...
原口沙輔さんとは、オリンピックの音楽に関わっているようなすごい方で、「人マニア」を機にボカロシーンに参戦したことで注目を浴びているアーティストです。
https://youtu.be/HTxwOxFt5d4?si=onyLZeoRZ6xAXTKV
こちらの楽曲、初めて聞いた方はその奇抜さに困惑するかもしれません。
爆発や叫び声などの効果音を盛り込んだ「音MAD」的要素や、メロディ・コードの不気味さから、この曲のインパクトは公開当初からものすごいものでした。
特に注目したいのがそのコード進行で、音楽的に分析がなされた動画ではその破綻ぶりが明文化されています。
音楽理論に明るくない方でも、「なんとなく気持ち悪い」という感覚になるのでは、と思います。
https://youtu.be/JM0iwjHzE20?si=8Jl6jY1N9BlJKcjm
なぜ、要素を切り取ると破綻しているように思えるのに、楽曲として成立しているのか。
そもそも、音楽理論というのは、「過去の楽曲による経験の蓄積」です。
オーケストラのクラシック音楽や、ジャズ、ロックなど多種多様な音楽の歴史を踏まえ、一番普遍的になるうるものを分析している、と。
つまり、人が曲を聴いた時の感覚を理論的にしたものであるため、その元を辿れば人間の感覚に行き着きます。
つまり、これを言ってしまえば元も子もありませんが
聴き心地が良ければ、それが正義
です。
もちろん、人マニアなどのコード進行的に不安定な楽曲を理論的に説明することはできますが、間違いなく教科書の1ページ目には記載できないでしょう。
原口沙輔さんリスペクトの楽曲も徐々に増えているため、このスタイルの楽曲達がメジャーシーンに食い込んでいくことは十分に考えられます。
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その2:リズムが変
皆さんは、ノリのいい曲を聞いている時、足踏みをしたり、頭を振ったりなど、リズムに合わせた行動を行ったことはあるでしょうか。
かくいう私はことあるごとにリズムにノってしまうタイプで、電子レンジで物をあっためているような少しの待ち時間でも、曲を流して踊ってしまうような人間です。
さて、そんな「リズムにノる」という行為は、「普遍的なリズムの楽曲」でないと難しいことはご存知でしょうか?
ここでいう、「普遍的なリズムの楽曲」というのは、4/4拍子、もしくは3/4拍子のことを指します。
4/4拍子とは、1、2、3、4、1、2、3、4...というように4拍からなるリズムのことで、2の乗数であることから、手拍子などでリズムがとりやすい最もメジャーな拍子です。
ほとんどの既存楽曲がこれに当たりますし、作曲を勉強する際にもまずこの拍子から入ることになるでしょう。
3/4拍子とは、1、2、3、1、2、3...というように3拍からなるリズムのことで、ワルツなどの一部ジャンルでは印象強い拍子でしょう。
「アン、ドゥ、トロワ」というフランス語でのリズムも聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
さて、これらメジャーな拍子を紹介したということは「そうでない拍子」もあるということです。
2拍子や6拍子など、4拍子や3拍子の近似的な拍子は比較的に理解しやすいですが、
5/4拍子や7/8拍子など、4,3,2の組み合わせで成り立っているような少々気持ちの悪い拍子も存在します。
楽曲を通して5拍子である有名な曲として「Take five」があります。
https://youtu.be/vmDDOFXSgAs?si=77b_oMcn_wPxahWY
(リンクから直接見ることができないようですので、聴きたい方はYouTubeへ飛んでください)
5拍子は、変な拍子の中ではメジャーな方で、比較的に楽曲が多いです。
ですが、奇妙なことに、1つの楽曲の中で拍子がコロコロ変化する曲があります。
有名なのは、星のカービィスーパーデラックスの「VSマルク」
https://youtu.be/Hl_ZL5eiubc?si=ygKe7vt7LdWM08V8
(便宜上原曲を載せたくなかったので、ピアノ楽譜の動画を掲載します)
5
4
のように表記されている部分が拍子記号ですが、
5拍子になったり3拍子になったり4拍子になったりと、非常にコロコロ変わっていることと思います。
個人的な感覚ですが、こういった変拍子の曲はゲームBGMに多いと感じています。
多分、歌をつけるとなると難易度が爆上がりするんだと思います。
実際、私も似たようなことをやった際には結構苦労した思い出があるので。
そして、今となっては変拍子BGMの代表格となっているのが、スプラトゥーンシリーズの1ゲームモード「サーモンラン」のBGMです。
https://youtu.be/lSkjcPE-lOA?si=HCeDaE7-kCE36DQ_
(こちらもYouTubeへ飛んでからご覧ください)
31/16とかいう元から気持ち悪い拍子が出てきたり、小節が進むごとに拍子が増えていったりと、やりたい放題です。すごい!
歌のある曲でもこういった変拍子はあり、有名なものに「幾望の月」があります
https://youtu.be/z4k9fPvw_LQ?si=k0Dr-8pRLOexsEas
作曲者本人も「クソ変拍子曲が作りたかった」みたいな発言をしているらしいので、納得ですね。
ただ歌としてまとまっているのがすごいと思います。
演奏したくはないけど。
技術としてさらに面白いと思うのが「ポリリズム」です。
Perfumeさんの楽曲ではなく、概念的な話です。
これは、別のリズムが同時並行的に鳴らされることを指す言葉で、有名な曲に「彁」があります。
https://youtu.be/wjel9mRqSQA?si=_BI3hyk4dDFnWfmU
(ご本人によるリズム解説動画)
動画にて示される通り、別々のリズムが同時並行的に鳴らされており、非常に不思議な雰囲気を作り出しています。
とてもじゃないですが、リズムにノるとかそういうのはもう不可能な域に達していそうです。
このような変な拍子というのは、その曲の強烈な個性となり得るため、効果的に使うことで曲の存在感を示すことに繋がります。
単純に扱いづらいということもあり、変拍子でいい曲を作れた人は「リズム強者」を名乗ることができるでしょう!
目指せリズム強者!
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その3:音程が変
皆さんは、熱に浮かされた時や、朝起きたばかり、夜疲れている時などに楽曲を聴いた際、「なんかいつも聴いてる音と違くない?」という感覚に陥ったことはありますか?
具体的にいうと、ちょっと音が低く聞こえたり、高く聞こえたりなどです。
私は曲を作る関係上耳を酷使しやすく、たまに突発性難聴を引き起こしてしまっています。
ひどい時には、左右の耳で聞こえる音の高さが異なってしまったこともあり、めちゃめちゃ気持ちが悪くて嫌だった思い出があります。
...とはいえ、これはちょっと限定的な体験ですので、その1その2の前口上と比べると共感性が低いかもしれませんね。
そうですね、ちょっと攻撃的な表現ですが、カラオケも例にあげましょう。
採点のバー的には音が取れてそうだけど、耳で聞く分にはなーんか音程がちょっとずれているように聞こえて少々気持ち悪い歌い方の人、たまにいますよね!!
こんなん思っても本人に言っちゃダメですよ?本当に。
まあとにかく、なんかちょっとだけ音程がずれている、というのは、メジャーな音楽に慣れている人ほど気持ち悪く感じやすいと思います。
そんな中、密かに注目を浴び始めている要素があります。
それは「微分音」です。
現在主流な楽曲は、上記の楽曲でさえ少々工夫を行えば「五線譜」による記述が可能です。
五線譜ってのはこういうやつですね↓
https://gyazo.com/7bc7654d926e12434848141f1cb66a9d
あげていた動画でも使っているものがありますし、何より小学校教育でも用いられるため、見たことがない方はほとんどいないと思います。
この五線譜というのは、いわゆる「12平均律」に適応した記譜用のフォーマットです。
はい、出ましたねよく知らんワード。
「12平均律」とはなんぞや?と思ったことでしょう。
音程を指す言葉に「ドレミ」などがありますが、「ド」の音と言っても複数あり、高いドや低いドがあります。
この音の違いはオクターブといい、一般的な平均律では、1オクターブ間には12音あります。
1 ド → 2 ド# → 3 レ → 4 レ# → 5 ミ → 6 ファ → 7 ファ# → 8 ソ → 9 ソ# → 10 ラ → 11 ラ# → 12 シ → 13ド
ということですね。
この、1オクターブの間に入る音の数を変えた平均律などのことを広義で「微分音」と呼びます。
例に出すと、「31平均律」の場合、1オクターブ間に31個の音があるということになります。
そうなると、もう「ドレミファソラシド」では収まらないので既存の記譜法はあまり使えないことになります。
https://www.youtube.com/watch?v=ca7iDI9pcCw
自分が作曲を行なっている近辺の界隈の楽曲ですが、31平均律の楽曲がございましたのでご紹介します。
32秒あたりの「ライトを持った人がいた」のあたりが顕著かと思うのですが、明らかに音がズレます。
「気持ち悪い」と感じる方も多いかとは思いますが、「不思議と心地いい」という感想も多いです。
じゃあそもそもなんで微分音なんてものを使用するのか、という話ですが
まず一つは、使える和音の幅がぐんと広がる、ということです。
https://youtu.be/NKRj3IJSFEI?si=Wf6Hd3WDUkxVnBRT
こちらは、ご自身の作品「Caftaphata」のうち微分音の要素についての解説部分になります。
注目すべきは「倍音」という要素を数学的に構築していることで、既存の音楽に囚われない新しい扉を開くことができます。
電子音楽特有の強みであり、今後研究するにおいて非常に興味深い分野だと思っていますので、私もいつかは取り入れたいと思っています。
二つ目の理由は、12平均律では和音に「ゆがみ」が発生するためです。
実は、我々が好み親しんできた12平均律には欠点があり、和音を鳴らす時に「歪み」ができます。
音は波ですから、合わせた時になんかこう、ぐわんぐわんなるわけです。
31平均律は微分音作曲の中で最もポピュラーですが、その理由の一つにそういった和音構築の際の歪みが発生しにくいことが挙げられます。
↑これも某界隈の方の記事の引用ですが
12平均律の長3度は純正音程(周波数比によって正確に協和する音程)から約13.7セントもずれているようで、サイン波を用いて聞いてみると、意識すればわかる程度に歪みがあります。
まあ、わかりやすいかは置いておいて、なんかズレているということがわかればOKです。
https://gyazo.com/06611097058ba6b24fd18a397dc42f3c
31平均律では、長3度の和音は0.8セント差であり、かなり正確だということが伺えます。
そんなこともあり、一部のマニアの間で発起された微分音作曲が今、徐々に広まりつつあります。
ただ、原口沙輔さんの楽曲や変拍子に比べるとその知名度はまだまだ低いです。
逆に言えば、このプラットフォームを広める第一人者になることができるかもしれません。
皆さんも、微分音作曲、やってみよう!
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まとめ
今回は「変な曲達」を紹介してきました。
既存の音楽理論をぶっ壊している楽曲や、
則りながらも暴れたリズムの楽曲、
そもそも音楽理論を新たに構築するべき楽曲など、
やはり音楽というのは非常に奥深いものだと感じます。
こう言った、いわゆる奇を衒った(かどうかはご本人にしかわかりませんが)楽曲がなぜ受け入れられているのか。
それはいわゆる「多様化」によるものと思います。
近年では、本当に様々な個性のある楽曲が多数公開されてきました。
今ではメジャーとなった電子音楽や、機械音声が歌う曲。
それらも元は少々奇妙な目で見られていたはずで、そう言った個性も「いいものだ」と受け入れられれば、徐々にスタンダードになっていきます。
DTMという、PC上での作曲手段もかなり大衆に触りやすいものとなり、無料でもかなりいい音源が揃えられたり、先日のブラックフライデーのセールなどによってびっくりするほど値引きされたりしており、その間口が広がってきています。
母数が多ければ個性的になるのは必然で、地理・生理学的に例示するならば熱帯雨林に生息する生物の種の多様性が他の地域からずば抜けて多いのも似たような理由です。そんで、なんかカラフルだったり変な形してたりなど、個性的な生物が多いですよね。
つまりは今の音楽シーンがそれだけ活発ということで、まだまだ盛り上がりを見せていくことと思っています。
こう言った新しい技術達に物怖じせず、積極的に学んでいきたい所存です。
ということで、作曲家の端くれによる浅い考察でした。
以上!