推し,燃ゆ
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【出版年度】
【作家】
成美はアイコンを取り換えるように都度表情を変え
ええ、うそ、ほんと、え、そかあ、と口走った。いまはあたしのほうが絵文字みたいな、びっくり仰天、っていう表情を天井に向けているのだろうと思った。単純化された感情を押し出しているうちに単純な人間になれそうな気がする。
コピペしたみたいに階の積み重なったビルへ続くエスカレーターに人が押し寄せ、吸い上げられる。機械的な繰り返しのなかに人間が動いている。
この辺の比喩は時代性があって面白い.
アイドルのグループが男女混成なのが気になった.たぶんAAAみたいなイメージなんだとおもうけど,一般的には女性だけ/男性だけの場合が多いから,あえてそういった編成のアイドルということを考えたのかなとおもうと.
推しを推すことがあたしの生活の中心で絶対で、それだけは何をおいても明確だった。中心っていうか、背骨かな。 勉強や部活やバイト、そのお金で友達と映画観たりご飯行ったり洋服買ってみたり、普通はそうやって人生を彩り、肉付けることで、より豊かになっていくのだろう。あたしは逆行していた。何かしらの苦行、みたいに自分自身が背骨に集約されていく。余計なものが削ぎ落とされて、背骨だけになってく。
姉だったらこういうとき臆面もなく涙を流せるのかもしれないが、あたしはそれは甘えかかるようで卑しいと思う。肉体に負けている感じがする。
肉体の煩わしさ,肉体を持つことに対する違和感や嫌悪感のようなものがわかる.
推しを本気で追いかける。推しを解釈してブログに残す。テレビの録画を戻しメモを取りながら、以前姉がこういう静けさで勉強に打ち込んでいた瞬間があったなと思った。全身全霊で打ち込めることが、あたしにもあるという事実を推しが教えてくれた。
あたしは徐々に、自分の肉体をわざと追い詰め削ぎ取ることに躍起になっている自分、きつさを追い求めている自分を感じ始めた。体力やお金や時間、自分の持つものを切り捨てて何かに打ち込む。そのことが、自分自身を浄化するような気がすることがある
推しを取り込むことは自分を呼び覚ますことだ。諦めて手放した何か、普段は生活のためにやりすごしている何か、押しつぶした何かを、推しが引きずり出す。だからこそ、推しを解釈して、推しをわかろうとした。その存在をたしかに感じることで、あたしはあたし自身の存在を感じようとした。推しを取り込むことは自分を呼び覚ますことだ。諦めて手放した何か、普段は生活のためにやりすごしている何か、押しつぶした何かを、推しが引きずり出す。だからこそ、推しを解釈して、推しをわかろうとした。その存在をたしかに感じることで、あたしはあたし自身の存在を感じようとした。
自己実現の方法としての「推す」こと,なにか打ち込めるものとしての「推し」