多元的社会アメリカの史的原点ーメイフラワー誓約とその統合機能
『アメリカの分裂』?
元来縁のない人間同士がどうアメリカ社会を構成するのか、ひとつのアメリカという国を構成するのかは昔からの課題
アメリカ社会が元来、相互に他者、よそ者、知らない者同士の社会
現在アメリカに住んでいる人はネイティブアメリカン以外皆移住者・移民である
人種的な、文化的な、宗教的な多元性が存在せざるをえない
本来別々のものをいかに統合していくのか?
互いの間の契約関係
ただし、それだけではナショナル・コミュニティはできにくい
共通な考え方、価値の観念、信条をそだて、共有する
メイフラワー誓約の意味とはなんだったのか
saintsとstrangers
イギリスにおけるキリスト教会
政治的な理由からできたから中途半端な部分が多い
イギリス側からの迫害
イギリスから脱出したい
信仰の自由のあるオランダへ
ところが、イギリス人としてまとまった生活をどこか別の場所でしたいという希望が生まれる
オランダのライデンは都市であり、質実な自営農民としてのイギリス人たちはなじめなかった
オランダで外国人として生活し、オランダ語をつかわなければならない
子孫がオランダの文化になじんでしまう、英語を忘れてしまうという不安
すでにイギリス人が移住していた北アメリカ大陸へ
アメリカに渡るには資金が必要なので、資本家から援助してもらう
資本家のロジック
Separatistsだけで新しい植民地を作れるのかという不安
頑健な働き手を募集、一緒に送る
ピューリタンではない人が大勢加わっている
半分以上はピューリタンでない
メイフラワー誓約
上陸時のひとつの事件がきっかけで、メイフラワー誓約が書かれることになる
いよいよ上陸しようとした。ところが、こういうことが起こった。要するに、よそ者の間に、我々と別れて上陸したならば自由行動を取ろうという不穏な反抗的な言動をなす者がいた。というのは、われわれの所持するヴァージニア会社からの許可状はヴァージニア地方についてのものであり、今上陸しようとしているニューイングランド地方についてのものではない。ニューイングランド地方はヴァージニア会社とは何ら関係のない他の管轄に属する。したがって何人も、彼ら離反しようとしている者たちに命令する権限はない、というわけである
「よそ者」側のロジック
ピューリタンの人たちは家族ぐるみで来ていて、労働力になりにくい女子どもが多い
自分たちが働かされるのではないか
ピューリタンのロジック
自分たちだけで荒野の中、新しい社会をつくるのは難しい
労働力が必要
メイフラワー誓約
中心は、ともに行動するひとつの政治体を作ることを約束した点
教会契約を作った経験が背後にあって、政治団体契約が作られたという解釈あり
ただし、教会契約は同じ信仰をもつ=本来同質的なものが互いに、そして神との間に契約を結んでひとつの教会という団体をつくる
同質性が前提、純粋性が前提
政治団体のほうは、元来別々なもの、異質なもの、相互に他者である者が契約を結んでひとつの団体を作る
ある程度異質的なものも入れることが前提であり、必ずしも純粋でない(妥協がある)
メイフラワーでは、信仰は異なるが、ともにひとつの社会を形成していくために契約を結んだ
共通した目的、価値の明示
神の栄光のため
イギリス人であるから、祖国の名誉のため
新しい植民地と政府を組織する根拠、正統性
対等の合意以外にはない。人民相互の同意に正統性が依る
政府の特許状や、会社からの許可状がないので
生存の問題がかかっていたから、作らざるを得なかったという面がある
総督を毎年選挙
集団の意思決定にあたって、皆で相談してやっている
よそ者を含めたこの集団で、長による決定といった共通の伝統がなかった
カリスマ的なリーダーもいなかった
決定への服従を確保するために、相談して物事を決めて皆が従うという形の決定が必要だった
新しい人々の移住にあわせて、代表制が取られるようになる
移動が難しい、不便であるからだれかにリプレゼントしてもらうという意味での代表制
代表と、人びとの間の時間的、空間的距離が短いほうがよい
一年ごとの選挙
各選挙区と議会との距離が等距離であること
実際、アメリカの州都は大都会でなくただ州の真ん中であるということも多い
民兵制度
労働力が不足しているから正規軍を持てない
軍事的な必要に合わせて、仕事を持つものがそのまま兵士になる
牧師不在の場合も多い教会
公に確立された教区があるのではなく、それぞれの信徒があつまって教会をつくるという形での独立教会が散在
ヒエラルキーがない
牧師・長老・執事といった制度はあったし、洗礼や聖餐式も行うが、牧師不在の場合もおおかった
平信徒が説教することも
インディアンとの関係
はじめは友好的な関係、依存、共存関係
人が増えるにつれ、土地所有をめぐって問題が起こり、敵対した
多元的社会の統合=「アメリカの夢」
メイフラワー誓約は、多元的なものを統合してひとつの社会として形成した
法的な契約で相互をまとめてひとつの政治体をつくる
植民地時代も、移住した人たちの間で契約を作り、新しいタウンを作った
ステイトを作る憲法などもそう
合衆国憲法の制定
共通の価値、信条の共有
時代を経るにつれて、「神の栄光」ではなくより広く共有できるものが必要
それを提示したのが独立宣言
市民宗教(ロバート・ベラー)
「全ての人は平等につくられ」
「生命、自由、幸福の追求」
メイフラワー条約の場合、共通の価値が特定の人種、宗教、民族に結びついたものであった
独立宣言では、比較的普遍的な価値を提示することで長い歴史的生命をもっている
「平等」の理念が現実化するか?
黒人は未だに十分に市民権をえているとはいえない
アメリカの夢(共通の目的)が一歩ずつ現実化していくことが、ひとつの国アメリカであるためには必要である