反知性主義ーアメリカが生んだ熱病の正体
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【出版年度】
【著者】
【目次】
はじめに
プロローグ
レーガン大統領とピューリタン/祝福か滅びか/「契約」概念のアメリカ化/宗教の伝播とウィルス感染/単純な二本線の論理/幸福の神義論/反知性主義の成分要素 第一章 ハーバード大学 反知性主義の前提
1.極端な知性主義
リバイバリズムを生む土壌/高学歴社会/ハーバード大学の設立/牧師養成の神学校として/一般教養の大学として/神学ではなく教養/学部と大学院/「万人祭司制」の教育/カトリックの神学教育/その後の高等教育
2.ピューリタンの生活ぶり
教会の成り立ち/高度に知的な礼拝/実像のピューリタン/水没した学長
1.宗教的熱狂の伝統
テレビ伝道者と大統領選挙/信仰復興運動の発端/「誠実な報告者」エドワーズ/信仰復興はなぜ起きたか/幼児洗礼と半途契約/教会員籍と公民資格/人口増と印刷業の発展/メディアとコンテンツの循環
2.「神の行商人」
「メソポタミア」の一言で/フランクリンとの出会い/フランクリンの絶賛/メディアの活用/ホイットフィールドとエドワーズ/歴史の証言者になるとは/伝道集会の規模 3.反知性主義の原点
なぜ野外集会なのか/古女房かコーラスダンサーか/反知性主義の決めぜりふ/原点への回帰/「熱心」の逸脱/「詐欺師」の伝統/信仰復興と「アメリカ」の成立 第三章 反知性主義を育む平等の理念
1.アメリカの不平等
平等理念のプロテスタント的起源/平等は画に描いた餅か/平等の超越的な根拠/宗教的には平等だが/宗教的反逆と政治的反逆/ニューイングランドの矛盾
2.宗教改革左派とセクト主義
第三の改革勢力/チャーチ型とセクト型/ミュンスターの惨劇/迫害への抵抗/法律違反という挑戦/クエーカーの過激な平等主義/フランクリンとクエーカー 3.宗教勢力と政治勢力の結合
第四章 アメリカ的な自然と知性の融合
1.釣りと宗教
2.「理性の詩人」と「森の賢者」
自然と魂との連続/映画化された哲学/エマソンの反知性主義/ヨーロッパ的な知性に抗して/ラディカル・セクトとの共通性/「森の賢者」ソロー 第五章 反知性主義と大衆リバイバリズム
1.第二次信仰復興運動
広がりゆくアメリカ/メソジスト教会の発展/「読み書きのできるバプテスト」/バプテスト教会の発展/諸教派の乱立 2.反知性主義のヒーロー
間抜けなロバ/ジャクソンの生い立ち/「読み書きのできるアダムズ」/大衆動員による選挙/反知性主義の使命/ジャクソン政権の遺産/ジェントルマンの凋落/ほら話のできるヒーロー/詐欺師の伝統/強者をやっつける反知性主義 3.リバイバルのテクニック
チャールズ・フィニー/弁護士のように説教を語る/宗教か呪術か/リバイバルは奇跡ではない/リバイバルのプロデューサー/女性と黒人の平等へ
第六章 反知性主義のもう一つのエンジン
1.巨大産業化するリバイバル
第三次信仰復興運動/子どもたちの日曜学校から/独立系教会のはじまり/理想のビジネスモデル/イギリスへの伝道旅行/体制派知識人の反発/スコットランド教会の立場/困惑するリベラリズム/唯物論者エンゲルスの見解 2.信仰とビジネスの融合
徹底した組織化/リバイバル集会の会場/資金と報酬/巡回セールスの起源
3.宗教の娯楽化
元祖パブリック・ビューイング/音楽家サンキーの魅力/秩序立った興奮/「天助」と「自助」の相即/温和な反知性主義/宗教と現世の利益
第七章 「ハーバード主義」をぶっとばせ
1.反知性主義の完成
戦闘的な反知性主義のヒーロー/サンデーの生い立ち/大リーグ選手へ/野球のプロスポーツ化/二つの出会い/妻に釣り合う人間となるために/伝道者への転身/牧師資格の取得 2.知性の平等な国アメリカ
3.アメリカ史を貫く成功の倫理
ショービジネス化する伝道集会/政教分離の副産物/リバイバルと音楽/ナショナリズムへの傾斜/反知性主義の変質/キリスト教の土着化/素朴な道徳主義/矛盾に満ちた晩年 エピローグ
知性とは何か/知性をもつのはどんな人か/反知性主義とは何か/反知性主義が生まれた背景/反知性主義の存在意義/反知性主義のゆくえ/ポジティヴ病の現代アメリカ/反知性主義は輸出されるか
あとがき
註
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教会や神父、秘儀、儀式に権威があったカトリックと違い、聖書にのみ権威をおくピューリタンの場合、聖書を読み解き、人びとに説明できること、日々の生活と結び付け、道徳的指針を示すことができることが牧師の重要な条件とされた。また、教徒自身も自分自身で聖書を読むことが要求された つまり、文字を読めなければピューリタンとして認められない
基本的に幼児洗礼は容認されているが、正式な教会員となるためには回心経験を、神との個人的な関係の証言をする必要があった
一定以上のリテラシー、言語能力が求められる
高度に知的な社会だからこそ、その権力の濫用を見張る意味での反知性主義が勃興
強者をやっつける「ヒーロー」としての巡回宣教のやくわり
※関連して、「ほら話のできるヒーロー」西部のカウボーイ文化
反知性主義=権威と結びつく知性への反対である
必ずしも知性そのものに対する糾弾ではない
むしろ、反知性主義者たち自身がハーバードやイェール卒のエリートであることも多い
アメリカ的な、権威・支配への抵抗が根底にある
知性の平等性
特権階級が知性を独占することをゆるさなかった
アメリカは世襲的特権的な貴族制をみとめていない
代わりに、一代で富を築く、「セルフメイドマン」などの概念は賛美される風潮である
リバイバル
エンターテインメント的な宗教集会が盛んであるアメリカ
ピューリタン教会の説教が高度な知性を求めたことによる
移民などで英語を覚えていない人々や、スラムで暮らす労働者たちにとって適したものではなかった
「世俗での成功」が道徳的な成功と結び付けて語られやすいアメリカ
リバイバル集会の説教者が富を誇示することもある
また、世俗での成功が神から選ばれた証であると考える傾向は、自己啓発的な方向に向かっていきやすい
世俗的な楽観主義、単純さ
アメリカに土着化したキリスト教
神との契約という概念を強調
自分たちが役割を果たしたのだから、神は恵みを与えるべきだという契約的な価値観
「リバイバル」項でもふれたとおり、勤勉に質実に生きているひとにはその褒美(?)としての成功(それはおおいに世俗的な)が与えられているという考え
だからこそここでは転倒が起こる。成功している=努力している、貧窮している=レイジーだから、のような
これは社会福祉がすすまないひとつの要因でもある
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3章はもう一度読まなきゃいけない気がする!