カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ
「これは新しい眼差しの物語だ。特異なわけではない人間関係図が、特別なナイフで切り取られ、解剖されていく。その特殊なナイフによって見えてくる人物たちの切断面は、柔らかくもあり、繊細でも奇妙でもある」
フランシスは21歳、ダブリンの学生で詩人。彼女はいつも冷静な目で周囲を観察している。夜には、親友でかつてのガールフレンドのボビーと詩のパフォーマンスをする。ボビーは美しく、決然としていて、どこにいても注目の的だ。
あるイベントで、二人はジャーナリストのメリッサと出会う。彼女たちの記事を書きたいというのだ。家に招かれ付いていくと、そこには彼女の夫で俳優のニックがいた。裕福なこの歳上の夫妻との交流を続けるうち、フランシスはニックに抗いようもなく惹かれている自分に気づく――。
デビュー作にして世界を席巻した新世代作家の恋愛小説。Hulu/BBCドラマ化。
二人が好きな詩人。
kana.iconうえ〜〜、高等遊民の話かよ。なんだかなあ。
私は仕事からの帰宅途中や洗濯物を干したりして退屈しているとき、よく自分がボビーのような外見だったらと想像してみる。私よりもスタイルが良くて、印象的な美人。すっかりボビーになり切ったままうっかり己の姿が映った鏡を見ると、自分を奪われてしまったような不思議な衝撃を覚えたものだ。目線の先にボビー本人がいるのでなり切るのは難しかったが、それでも私は自分が彼女なんだと想像してみた。そうするとなんだか挑発的で馬鹿げたことを口にしてみたくなった。
kana.iconう〜〜ん。なんとなくわかる感覚。
でもこれ面白いのは、ボビーは主人公の元カノなんだよね。今でも友だちだけど
ディナーパーティーの写真。
実際にはボビーがいる写真のすべてに私もいて、照明の当たり具合も構図も完璧だった。思いがけないことに、ニックも写真に写っていた。彼が実物以上に輝いて魅力的なのを見て、私はニックが俳優として成功している理由が分かったような気がした。どの写真を見ても、ニックがこの場の主役だとしか思えなかったが、あの場ではそんなふうには考えられなかった。
そこに写っているディナーパーティーは、実際に私たちが参加したものとは似ても似つかぬものになっていた。現実では、私達の会話の中心にいたのはメリッサだった。
写真の中に彼女がいないとディナーの雰囲気はまったく違って見え、微妙におかしな方向に転がりだしているように見える。メリッサの存在がないと、写真にいる3人の関係性さえ不確かだった。
kana.icon
うわ、なんかたしかにそうだよねって思った。写真で見ると実際と全然違ってたりする。
メリッサが私よりボビーが好きなのは知っていたけど、気を引くために卑屈なタイドでも取らなければ、私は彼女たちの新しい友情の輪に入れてもらえないのだろうか。
その晩、遊びに来たボビーはメリッサについて一切口にしなかった。私に彼女のことを聞いてほしいというボビーの策略が見えたので、こちらも何も言わなかった。こんなふうに言うとあてこすりの応酬をしていたかのようだが、実際はそんなことはなく、二人で楽しい夜を過ごした。
kana.iconええ、なんでこんな殺伐としてるの?ちょっと主人公は神経質なのかな
仕事につく気はないとフィリップに言ったのは冗談ではなかった。働くことに興味がないのだ。将来の生計を立てる手段についてはノープランだった。お金を稼ぐためになにかしたいとも考えていなかった。
政治的にも経済的にも、それ(平均年収)以上のお金を稼がなくてはいけない理由が私にはなかった。
資産の所有に無関心
kana.iconこれはわかるなあ。
「本当の自分」というものがない
フランシスが持っている感覚。
喝采もまた自分のパフォーマンスの一部で、かつ最高の山場であり、あれこそが私の考えていたことのもっとも純粋な表現で、それによって私は自分を作り替えたのだと考えた。賞賛に値する人間に、愛されるに値する人間に。
kana.icon
メリッサとの本当の関係?というか姿のことが気になる。kana.iconはメリッサがフランシスを無視しているということはなくて逆にフランシスがキョリを置いているんじゃないかと思った。
洒落た家に気を取られるなんて、あなたらしくもない。この言葉は突き刺さった。
フランシスが母に、メリッサや、彼女の紹介で知り合った著名人の話をしている。
言うけど、私には何だかすべてが奇妙に思えるの。そんな年齢の女性が大学生とつるんでなにをしてるんだか。
kana.iconそ、それな〜〜。メリッサはともかくニックは32歳なんですけど。
kana.iconえ、フランシスのいとこは「時のオカリナ」をやってるんだ。なんか親近感。
年上の人がたくさんいて緊張する感じ、なんかわかるな。爪が清潔かどうか気になったり、どれすのあいた背中が気になったり。
ニックの友だちは無害そうだったが、彼らを小馬鹿にするのは気分が良かった。
kana.iconやだー、ちょっとこわい。なんというか、全能感があるね。
フラニーみたい。
フランシスはメリッサを嫌いなのか。嫌いかどうかわからないけど嫌いだと言いたくなる。それは、自分の先を行っているから?
人前で演じているようなじんぶつと自分はかけ離れているのだ。家事室のニックの友人たちの前でさもウィットがあるかのように振る舞ったのを思い出して、気が滅入った。裕福な人たちの家で私は場違いだった。ボビーと一緒だったから、どこでも受け入れられる彼女の魅力のおかげで目に見えない存在でいられたから招かれただけだった。
なんかふたりとも両親とはうまく行ってないんだ。フランシスは母親と仲がいいけど。
フランシスやフィリップ、ボビーが平然と当たり前にフェミニストなのが感心する。ほんとに、なんというか流行ってるんだな。
気がつくと私はいつも、ボビーのような外見だったら何も悪いことは起きないだろうと考えている。朝起きてボビーの顔になっても、見覚えのない姿になったとはかんじないだろう。すでに自分のものだと信じている顔だから、きっと当たり前に思うに違いない。
kana.iconこのな〜〜〜、フランシス→ボビーはどういうことなんだろう。
あんなにずっと叫んでドラマティックに反応した後では、もうメールの時みたいに自分とは違う人間を気取ることもできない。
私はバスで街に戻った。後ろの窓際の席に座ると、顔に当たる日の光が錐のように突き刺さり、座席シートの素材がチクチクして素肌に痛かった。
ここの表現、なんか好きだな
ニックが本当のところ何を思っているのかを知るのは至難の業だ。ベッドでこちらに無理強いするようなことはなかったし、私の要求には繊細に応えてくれた。でも彼はどこか虚ろで自分を見せないところがある。ニックは私の外見を褒めなかった。自分から私に触れてもキスはしてくれなかった。私は一緒に服を脱ぐときはまだ緊張していたし、初めて口でした際も、彼がずっと黙ったままでいるので、痛いのかと思って途中でやめてそう聞いた。大丈夫だと言われて私はまた行為に戻ったが、彼はその後も完璧に沈黙を守っていた。その最中は私に触れてもくれないし、見つめられている気配すらなかった。お互いがどちらも楽しめないようなことを強要したみたいで、終わった後は最低の気分だった。
kana.iconうわーー。なんとなくわかるなこういうの。どう考えたらいいのかわからないよね。気がなさそうなことはわかるけどさ。
え!!ボビー好き。これもうBLですよ
ボビーからのメール。
あんたを独り占めしたくて私が男と張り合ってるなんて、うちらの関係をそんなレベルに貶めるつもりなのかよ。私を何だと考えているわけ?本当にあんたにとってうちらの友情ってあんたがやりたいと思っててすぐ忘れちゃうような中年の既婚男よりも下なの?悪いけどめちゃめちゃ傷ついているからね。
フランシス、ニックと会うようになってから詩もかけてない!!まずいよ〜、うう
ボビーにはそんな説明はできない。私みたいな平凡で心の冷たい女を好きになってくれるところが彼の魅力だなんて、絶対に言えない。
kana.iconフランシスは才能ある字書きなのに、ボビーに対しての劣等感とか、彼女以外にも周りに対するなんとなくの「自分って平凡だなあ」って意識があるんだよね
まじで、kana.iconからしたら才能あるだけマシなんですけど〜!!ムカムカ、だけど、田舎育ちというのも同じだし、なんとなく共感はできる。
ここ!!めちゃくちゃわかるんだよねほんと。
富裕層は嫌いだと口では言っても本人も恵まれた家庭の出身で、同じ階級の人間は彼女が自分たちの仲間だとすぐに見抜いた。彼らはボビーの過激な政治思想やブルジョワとしての自己批判を聞き流して、彼女とレストランやローマにおける宿泊先について語り合うのが常だった。そういう場にいると、私は自分が場違いに思えて疎外感を覚え恨めしかったが、自分がそこそこ貧乏で共産主義者だと悟られるのも怖かった。でも自分の両親と同じ社会階層の人たちを前にすると、母音の発音が気取っていると思われるのではないか、フリーマーケットで買った大きなコートのせいで裕福に見えるのではないかと気がかりで、やっぱりうまく話せない。フィリップも裕福に見られるのを気にしていたが、彼の場合は本当にそうだからだ。
kana.iconこれなー!!!!わかりすぎて首取れるかと思った。
あとフランシスが社交苦手そうなのがいい。kana.iconは親近感を持てる。
「天才児たちをテーマにしたドキュメンタリー」か。グラス家が出てたやつみたいね。
フランシスとボビーが二人でタバコ吸ってるのなんかいいな。
どうやらアイルランドの作家らしい。
「あなたはときどき、私のことなんかどうでもいいって思っているように見えるの」
はぐらかされるフランシス。
「どんなになりふりかまわずぶつかったところで、彼が応える気がないのをわかって、私は言うべきことをなくした」
こうやって一人、みんなが寝静まったあとの家でベッドに横たわっていると、自分がコントロールできるものは何ひとつないような気がする。ニックとセックスするか、しないかという選択肢があるだけ。それでどんな気持ちになるのか、それがどんな意味を持つのかは私が決められることじゃない。彼と喧嘩はできても、喧嘩の内容も、相手の出方も、自分がどれだけ痛手を負うかも分からない。自分を抱きしめてベッドの上で丸まっていると苦い思いがこみ上げてきた。彼が全権を握っていて、私は無力なのだ。
………
私はみんなに嘘をついていた。メリッサにも、ボビーにさえも、ニックにだってついていたかもしれない。誰かに頼るなんて甘えたことが許される身分ではなく、同情の余地もなかった。それに結局のところ彼は他の人を愛しているのだ。
kana.iconそうだよね。だれも味方がいないような感じ。というか助けをもらいにくい状況。
そういうのわかってるはずなのにのうのうとしてるニックがむかつく〜!
そして、ニックはメリッサを愛しているようなのになんでフランシスに応えるわけ??ハッキリしなよね。寝たいだけなら寝たいだけって言えばいいのにそうでもないし。なんなの怒
あとさーーーメリッサがフランシスにすごく優しいじゃん。「この人にきらわれたくない」とかはあんまりフランシスは思わないんだなと思った。kana.iconなら……と思ったけど、ニックへの気持ちが今は強くて、そこまでは考えないのかな。kana.iconはメリッサに好かれていたいが……、あぁ、でもメリッサは「なりたいけどなれないロールモデル」なのか。ちょっと嫌かも、やっぱり。
あぁ、やっぱりこの人の描写が好きだな。視覚や聴覚、触覚的なこと。
ヴァレリーをもてなすディナーについてメリッサらが話しているときに、ぼうっと机の上を角砂糖目指して歩くてんとう虫を眺めているフランシスの姿。
みんながどの部屋を片づけて彼女に使ってもらうか話し合っていたが、私は鋼鉄のようにつややかな赤いてんとう虫が角砂糖を目指して果敢にテーブルを横切っていくのを眺めていた。機械の脚を持ったミニチュアのロボットみたいだ。手分けしてディナーの準備をしなくては、メリッサが言っている。何人かでスーパーにお使いに行ってほしいんだけど、いいかな?買うもののリストを作るから。
…………
メリッサはクロワッサンを割って中にバターを塗っていたがそのナイフをなんとなく振り回しながら指示を出した。
………
もうひとり手伝いがほしいわね。フランシスがいい。行ってくれるよね?
てんとう虫は砂糖の器までたどり着いて、キラキラした角砂糖の縁を登り始めていた。私は迷惑そうな表情をしないよう気をつけて顔をあげる。もちろん大丈夫です。
イヴリンとニックと車に乗る。二人は前の席でフランシスは後部座席。「自分の居場所がやい内密な空間に封じ込められた」。
え、ヴァレリー誰だっけ?と思って調べたら、別荘を貸してくれた人だ。メリッサの友だちの。なんだけど、メリッサとヴァレリーは折り合いが悪いのか、ヴァレリーがディナーに来るとなったとたん、メリッサはイライラし始める。みんなちょっと気を使い気味。
kana.iconいや、え、でも家貸してくれた人なんでしょ?どういうことだってばよ。
フランシスは、気まずいときに、ここにいなかったことにしようとする(笑)
kana.iconてか、前から思ってたけどこういう別荘って不便すぎるよね。少なくとも車で30分は行かないとスーパーもないじゃん。
ん?メリッサとボビーが一度キスしたって話から、「メリッサについて私は勘違いしていたみたい」と。どういうこと?
ヴァレリーが来る云々のいざこざで失望したってこと?それとも、相手側にそこまで好意はなかったみたいなこと?
フランシスは、まあジョークかもだけど、別にあんた以外に友だちもいないよ、と。
そういえばボビーとはなんで別れたんだっけ。
なんかそういう価値観の違い?
ヴァレリーはフランシスは無視、ボビーにはきれいなだけ、と。
ボビーが生徒会の選挙に破れたとき、彼女は気にしていなさそうだったのにボビーは「肺が痛くなり顔がすりむけるまで泣いて」、屈辱に打ちのめされた。
public.icon