ロブスターとバイガイ
南アフリカ西海岸に近いマルガス島海域では、イガイやバイガイを食べるロック・ロブスターと海藻が生物相の最上位を占めている。そこから四キロメートル離れたマーカス島海域では、環境はマルガス島と非常によく似ているのに、イガイとバイガイが繁殖し、ロブスターと海藻はほとんど見あたらない。
地元の漁師によると、一九七〇年頃までは、どちらの島にも同じくらいロブスターがいたという。なぜロブスターは、豊富な餌があるマーカス島に戻らないのだろうか。その原因を探るため、二人の研究者が千匹のロブスターをマルガス島からマーカス島へ移す実験をおこなった。すると驚いたことに、バイガイが自分よりずっと大きいロブスターに群がり、一週間で一匹残らず食べてしまったのである。この例からわかることは、個々の種と環境全体の間にはフィードバック・ループがあるということだ。たしかに環境は個々の種に働きかけ、その行動と進化を決定するが、その一方で、環境とはその生態系内でともに生きるすべての種の集合にほかならないともいえる。どの種がどの種を食べるかという基本的な関係でさえ環境によって異なる。マルガス島ではロブスターがバイガイを食べるのに、マーカス島ではバイガイがロブスターを食べるのである。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0b/KreeftbijDenOsse.jpg
Bart Braun, Public domain, via Wikimedia Commons
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/14/Sea_snail%2C_top%2C_full_view.jpg
Photographed by Guttorm Flatabø (user:dittaeva)., CC BY-SA 3.0 <>, via Wikimedia Commons sea snailで検索して出てきたやつなのでバイガイではないかも……
捕食・被食関係の逆転についての報告論文:
↑バイガイの群れに食われて空っぽになるロブスターのGIFがある
この事例を含む種と生態系の間のフィードバックループとその多安定性について:
J. K., Polunin, N. V. C., Francour, P., Badalamenti, F., Chemello, R., Harmelin-Vivien, M.-L., Hereu, B., Milazzo, M., Zabala, M., D’anna, G., & Pipitone, C. (2000). Trophic cascades in benthic marine ecosystems: lessons for fisheries and protected-area management. Environmental Conservation, 27(2), 179–200. https://doi.org/10.1017/s0376892900000205 「$ A と $ B という二つの種がある」というだけでは、$ A→B(および$ B→A)の関係(射)は決まらない。