エナクティヴ・アプローチへの入門
に役立つものを挙げていく。
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Di Paoloの講演
https://youtu.be/E1VBeNRtxNo
心理学者向けに、主体性 Agencyの概念を中心としてEnactive Approachの全体的な解説をしている。英語がわかるなら、まずはこれがいいと思う。
Ezequiel Di Paolo(エゼキエル・ディ・パオロ)は、21世紀に入って以降のEnactive Approachを牽引してきた重要人物……なのだが、日本ではほとんど知られていない。
これには色々と事情があることがわかってきたので、いつか何か書きます
日本におけるEnactive Approachのメッカになりつつある北大のCHAINの教員の1人である飯塚博幸さんが、東大池上研でのPh.D取得後に彼のもとでポスドクをやっていた時期があり、共著論文も数本(これとかこれとか。どれもおもしろい)書いていたりする(が、哲学的な議論に関してはあまりフォローしていないらしい) Agencyの「定義」については、次の論文などを参照:Barandiaran, X. E., Di Paolo, E. A., & Rohde, M. (2009). Defining Agency: Individuality, Normativity, Asymmetry, and Spatio-temporality in Action. Adaptive Behavior, 17(5), 367–386. http://dx.doi.org/10.1177/1059712309343819 ; Di Paolo, E. A., Buhrmann, T., & Barandiaran, X. E. (2017). Sensorimotor Life: An Enactive Proposal. Oxford University Press. https://docdro.id/Hm5JTQY このAgencyの定義は、Di Paoloらが展開している今のEnactive Approachを知る上での良い参照枠になる。
Barandiaranらは、Agencyを「Individuality(個体性)」「Interactional Asymmetry(相互作用の非対称性)」「Normativity(規範性)」という3つの条件を満たすこととして定義している(くわしい内容については今後記事にします……)。このうち、最初のIndividualityは、オートポイエーシスを一般化した概念である自律性(Autonomy)に対応している。しかし、他の2つに関しては、マトゥラーナとヴァレラによる元々のオートポイエーシスの理論では外部の観測者による解釈の産物にすぎないとして明確に否定されているものであり、逆にそれをシステム自体に備わっているものとして積極的に認めているのが現在のEnactive Approachであるということになる。そのため、まずはM&Vがどのようなものとしてオートポイエーシスの概念を提唱したのかをざっくりと掴んで、次いでEnactive Approachがどのようにそれを批判的に継承し発展させているのかを理解する、というかたちでEnactive Approachの基本的な立ち位置を理解することができる。
Enactive Approachに入門する際にまず壁となるのが、Autonomyやsense-making、agency、adaptivityなど、イカつい概念が続々と登場し、それらがどのように関係しあっているのかを把握できるようになるのがなかなか難しいことだと思う。それらの概念は単独の定義をただ眺めていてもあまり十全な理解ができず、他の概念との関係のなかに置かれて初めて理解できるものなので、個々の概念の内実とそれらの間の関係を行ったり来たりする必要がある(これはどの理論でも同じだと思うが)。そこでもこのAgencyの3条件が一つの指針を示してくれる。上で述べたようにindividuality(self-individuation)がautonomy(自律性)に対応するのと同様に、interactional asymmetryは主に「sense-making(意味生成)」に、normativityは主に「adaptivity(適応性)」に関連している。
Autonomy guarantees self-individuation, adaptivity guarantees adjustment to vital norms, and sense-making enacted on the relations to the environment guarantees interactional asymmetry (see figure 2.2 for a representation of this concept).
Di Paolo, E. A., Cuffari, E. C., & De Jaegher, H. (2018). Linguistic Bodies: The Continuity between Life and Language. MIT Press.
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重要なのが、このagencyの「定義」が、細胞などの生物システムのレベルのみならず、感覚運動スキームのネットワークのレベルや、社会的相互作用のレベルにも適用されることである。
つまり、感覚運動スキームのネットワークや社会的な相互作用が、下のレイヤーに還元されないそれ自体としての主体性を持つ、ということである