遺伝単の解説
2017年9月 日本遺伝学会は 遺伝学用語の改訂を発表
報道では「色覚異常」をそのまま「色覚多様性」と言い換えたということで発表された。これは少々誤解があったようだ。ネットでも少々ネガティブキャンペーンが行われた。何れにしても報道の誤解であることが確認されている。文法的にも色覚異常という言葉を色覚多様性に置き換えることはできないというのは当たり前のことで、例えば「人間には正常色覚の人と色覚異常の人がいる」は「人間には正常色覚の人と色覚多様性の人がいる」ということになることでも自明である。(実際に日経新聞では「色覚多様性の伊藤啓さん」という表現がなされていた。日本語としておかしいですよね)
10月にテレビ番組の中で「最近若者に増加していること」として「色覚異常(色覚多様性)」に気がつかない若者がいるという形でテロップが作られた。
これは翻訳後を置き換えたのでは無く、従来「Color blindness 」の和訳としては「色覚正常・異常」の概念しかなかったが、遺伝学会としては「人の色覚には多様性がある=Color vision Variety 」という概念を加えたものである。
個別の遺伝的形質による 色覚型の呼称は、C型+P型D型(CUDO・海外)、3色覚+2色覚・1色覚(眼科学会)などがあるが今後統一に向けての協議を提案している。
同時に「優性・劣性」という言葉も性質の優劣に感じられてしまうことを避けるため「顕性・潜性」に置き換えられることとなり、こちらは学校用の教科書などですでに対応が進んでいる。
2021年版遺伝単では「色覚多様性」については「color vision variation」という言葉の提案が、そのままcolor blindnessの訳語変更と誤解される向きもあったとして「(生命科学の教育用語として)色覚多様性」を使うと書かれている。
こうなる原因は「日本医学会医学用語管理委員会遺伝学用語改訂に関するWG」で議論され「違いを知り、共に生きる」ために、「異常」は廃止することはできない言葉だと確認されたから。同時に医療と関連しない場合など、「異常」と呼ぶ必要のない場が多くあることも議論された。
医学側は議論の中で「医学用語においては、「異常」は、科学的なハズレ値を示す言葉で差別的な意図はなく、「色覚異常」という言葉も、医療介入や福祉を考える上で避けて通ることができない」ときには厳しい現実と向き合うために、廃止できない」とされた。
一方で、遺伝学会側としては、血液型のAB型に匹敵する頻度のものを異常と称することへの違和感を表明しており、そこは2017年版同様。CUDOのP型、D型といった呼称も紹介されていて、「日本眼科学会、日本医学会を中心にCUDOらの提案も含めて、より適切な用語が選定されるように希望したい」というのも以前のまま残った。