2.1 有線伝送媒体(pp.83-92)
物理層の目的 = 物理媒体によるマシン間の生のビット・ストリームの伝送
ここでいう「物理」は形のあるものも無いものも指す
なかでも 有線伝送媒体でよく使われるのが銅のケーブル、光ファイバー
有線伝送媒体(guided transmission media)=「物理的なケーブルや配線に依存する伝送媒体」
それぞれ、様々な点でトレードオフを持つ(周波数、帯域幅、遅延、価格、設置、保守性など)
「帯域幅」(bandwidth)= 媒体の輸送能力を表す尺度、単位はヘルツ([Hz]、[MHz]、[GHz])
この節では、主にツイストペアケーブル、同軸ケーブル、光ファイバの3つを取り上げる
2.1.1 永続ストレージ(p.84)
大量データをマシン間で移動するなら、永続ストレージの物理的輸送が帯域幅・価格ともに優れた最善解
永続ストレージ = 磁気テープ、個体記憶媒体など
Ultrium(アルトリウム)テープ
LTO(Linear Tape-Open)という磁気テープ規格のひとつ
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0b/LTODriveWithTape.jpg
画像:LTO Ultriumテープと読み出しドライブ
出典:Wikimedia Commons(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:LTODriveWithTape.jpg )
富士フイルムは磁気テープで世界7割のシェアを持つ
参考:日経ビジネス 田中創太,2022,「Googleも重宝 しぶとく生きる日本製磁気テープ」,日本経済新聞,(2023年12月8日取得,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC273UV0X20C22A6000000/ )
AWS Snowmobile(スノーモービル)は自社データのクラウド移行で活躍
https://ascii.jp/img/2016/12/05/559465/l/88663a0b07ae324c.jpg
画像:AWS re:Invent 2016 基調講演で登場した Snowmobile
出典:大谷イビサ/TECH.ASCII.jp,2016,「エクサバイトをAWSへ!写真で見る「AWS Snowmobile」」,ASCII.jp,(2023年12月8日取得,https://ascii.jp/elem/000/001/278/1278918/ )
2.1.2 より対線(pp.84-86)
永続ストレージは遅延に弱いため、現在は「より対線」が最もよく用いられる
より対線(twist pair)= 絶縁された2本の銅線をらせん状により合わせ、信号を2本の電圧レベル差で送る
銅線はノイズに弱いが、より対線の構造にすると電流と磁束のノイズが弱まる
ノイズは2本の電圧差にあまり影響しない
参考:東阪電子機器株式会社,2023,「ツイストペアケーブル とは」,(2023年12月8日取得,https://tohan-denshi.co.jp/technical-information/8291/ )
電話システムでもっともよく使用
アナログ情報、デジタル情報いずれも伝送可能で帯域も大きく安価
現在の標準的なより対線の種類はカテゴリ 5e(category 5e、Cat 5e)で、カテゴリ6、7、8もある
カテゴリ6までの配線は UTP(Unshielded Twisted Pair:非シールドより対線)
シールド = ノイズから銅線を保護するもの
用語
全二重(full-duplex)回線 = 線を両方向同時に使用できる
半二重(half-duplex)回線 = 同時に片方向だけ使用できる
単方向(simplex)回線 = 一方向だけ使用できる
2.1.3 同軸ケーブル(pp.86-87)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/73/RG-59.jpg
出典:ウィキペディア「同軸ケーブル」(https://ja.wikipedia.org/wiki/同軸ケーブル )
より対線に次いで、同軸ケーブル(coaxial cable、coax、コアックス)がよく用いられる
50[Ω]と 75[Ω]の2種類ある
特に 75[Ω]は技術的というより歴史的理由によりケーブル・テレビに用いられた
ノイズに強く帯域幅が大きい
光ファイバに置き換えられるまで電話の長距離回線に用いられた
ケーブル・テレビやメトロポリタン・エリア・ネットワークで広く用いられる
2.1.4 電力線(pp.87-88)
電力線でデータ通信できると便利だが、家庭内の電力配線はデータ通信向けではない
電力信号の周波数が低すぎる(50〜60[Hz])
家電製品のオンオフでノイズが発生する
電力線がノイズを拾ったり発生させたりする
短距離なら 500[Mbps]で送ることができ、標準もある
2.1.5 光ファイバ(pp.88-92)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/49/Fibreoptic.jpg
出典:Wikipedia「光ファイバー」https://ja.wikipedia.org/wiki/光ファイバー
コストを度外視すれば、光ファイバの通信性能は(コンピュータの CPU 計算性能と相対的に)実質無料なくらい速い
用途:バックボーンの長距離伝送、高速LAN、高速インターネット・アクセス
システム:ガラス繊維の両端に光源と検出器を取り付け、光の全反射を利用して一方向データ伝送を行う
中1理科の復習:全反射
屈折率:光の進みにくさ。媒質によって屈折率が異なり、真空に比べて遅いほど屈折率は高くなる。
屈折:光が異なる媒質へ進入するとき、光が曲がる現象。
全反射:屈折率の大きい媒質から屈折率の小さい媒質へある角度以上で光が進入すると、屈折せず反射する現象。
参考:「【中1理科】全反射とは ~全反射のしくみ・具体例~ | 映像授業のTry IT (トライイット)」(2023年12月9日取得,https://www.try-it.jp/keyword_articles/43/ )
ガラスの直径による性質の違い
マルチモード・ファイバ(multimode fiber)
複数の光が異なる角度で進めるほどにガラスの直径が太いことにより、複数の信号を同時に伝搬できる性質のファイバ
比較的安価な光ファイバ装置で 15km まで伝送できるが、距離が長いと帯域も限定される
シングル・モード・ファイバ(single-mode fiber)
単一の光が反射せずまっすぐ進むほどガラスの直径が細いことにより、単一の信号を伝搬しないファイバ
高価だが、例えば増幅なしで 100 Gbps で 100km を伝送できるくらい速い
ファイバを通した光の伝送(pp.89-90)
光ファイバのガラスは海面から海底が見えるほどめちゃくちゃ透明
ガラスを進む光は波長が短すぎたり長すぎたりすると減衰が大きくなる
[dB](デシベル)は電力比の単位
三つの波長帯がある(図 2-5)
155[μm]帯で用いられる「エルビウム添加増幅器」
1980年代に光通信が始まり、電電公社(現 NTT)の研究員2人が装置を開発
https://static.tokyo-np.co.jp/image/article/size1/9/e/1/7/9e172abb5706c67f821a930cb2c00937_1.jpg
画像:エルビウム添加増幅器(EFDA)
出典:永井理「世界とネットでゲームや会議、なぜ手軽? 日本で開発の「箱」のおかげ 偶然から実用化「光増幅器」」,東京新聞,2023,(2023年12月9日取得,https://www.tokyo-np.co.jp/article/229446 )
光の長さの広がり(色分散:chromatic dispersion)は、分散を打ち消すパルス(ソリトン:soliton)を用いて対処
ファイバ・ケーブル(pp.91-92)
2種類の光源(図 2-7)
LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)
半導体レーザー
ファイバの接続は、どうやっても損失が出る
1)コネクタを取り付けてファイバ・ソケットにはめる
https://www.fiberlabs.co.jp/wp/wp-content/uploads/2018/06/c81c99fa2761ff8c78358411a1538260.png
画像:光コネクタとアダプタによる接続
出典:光ファイバーラボ株式会社(2023年12月9日取得,https://www.fiberlabs.co.jp/tech-explan/about-optical-connector/ )
2)機械的なつなぎ合わせ
https://www.doujiku-hikari.com/images/optical/15_img03.jpg
画像:一般的に「メカスプ」と言うらしい
出典:橋本興産株式会社「光ケーブルの接続・延長」(2023年12月9日取得,https://www.doujiku-hikari.com/optical/splice/)
3)2本のファイバの融着(ゆうちゃく)
https://www.doujiku-hikari.com/images/optical/15_img02.jpg
画像:融着接続
出典:上に同じ
光源とファイバの間に干渉計を挿入すると波長を調整できる(光の干渉を利用)
ファブリ・ペロー干渉計(Fabry-Perot interferometer)
マッハ・ゼンダ干渉計(Mach-Zehnder interferometer)
ドイツ語なので「マッハ・ツェンダー」が正しいと思う
受信端は光を電気信号に変換するフォトダイオード(photodiode)
応答時間が転送速度 100Gbps に制限
熱ノイズもあるので、検出するには光パルスに大きなエネルギーが必要
パルスを強くすると誤り率は小さくなる
脱字:p.92 「光パルスが検出するのに十分なエネルギーを持っていなければならい。」→「ならない」が正しい?
光ファイバと銅線の比較(p.92)
銅線と比べての利点
より高い帯域を扱える
減衰が低く中継機コストが低い
電気的トラブルの影響を受けない
腐食性の化学物質の影響を受けない
細くて軽い
光を漏らさず分岐が難しいので盗聴に強い
欠点
特殊技能が必要
損傷しやすい
双方向通信には2本または1本で2つの周波数帯域が必要
インタフェースに費用がかかる