懇親会の質問メモ
Q: 新時代に合わせて法律を変えたければどうするのが手っ取り早いか?
A: 何法を変えたいかで変わる
Q: オフィスの中で書類を電子化するときに複製権の侵害とか言われないようにしたい
A: 35条が改正されるのでそれをもっと広げる方向に主張しよう
Q: 量子コンピューティングなので25年では実用化に至らないのでどうする、特許有効期間を伸ばせる?
A: 伸ばすのは難しい、そういうのは特許を取って、それを前提とした特許を取って、を繰り返していく
Q: JavaScriptの無限ループで逮捕された事件があった、曖昧な条文を誤って運用すると困る
A: そのために裁判所がある
逮捕されただけで有罪かのように扱う日本のメディアが問題
逮捕を判断するのは裁判官
そうだが、被疑事実があるかどうかではなく、逮捕の必要性があるかどうか
刑が確定するまでは無罪推定の原則
逮捕されただけで有罪だと思って社会的制裁してしまうのは間違い
Q: メタクリエーション
小説を書くプログラムを作ったときに誰が著作権を持つか
自分はプログラミング言語を作っている、その言語は別の言語のプログラムを出力する、この出力されたプログラムの著作権は?
A: 究極的には「人工物に権利能力を認めるか」という議論になってくるので難しい
生身の人間は持っている(民法)
法人も持っている(なに法?)
人工知能は今のところ権利能力者になっていない
だから著作権を認めることは不可能、これが現時点の法律による出発点
将来、どこまでが人かの境界が曖昧になっていく
かつて、奴隷は人ではなく権利能力がなかった
同じことがAIに対して起きるのかどうか、これは皆さんの世代が未来に議論していくこと
最終的には認める方向じゃないかとshioは思う
「権利能力を持てる条件」は人間が法律で決めている
生身の人間以外に権利能力を認めた実績はすでにある=法人のこと
nishio.icon現行法でも「法人を作り、人を雇い、その人が開始ボタンを押して、AIが著作物を作って、それを会社の名義で公開する」の場合、著作権法15条「職務上作成する著作物の著作者」によって法人が著作者となる。個人的には法改正を待つまでもなくこれでいいんじゃないのと思っている。
Q: 介護のアルゴリズム、公開しないと専門家から評価されない、知財をとってシェアしていくことになるのか、そのやり方の事例を知りたい
A: Scrapboxを作った増井先生は、アイデアを即座に公開してしまう、公知にすると他人が特許を取ることはできない
知財の戦略として特許権を取るのは方法の一つに過ぎない、コストもかかる
論文を書くか明細書を書くかは本質的な差ではない
公知にする方が良い戦略である可能性はある
弁理士さんは権利化することを大前提にしがち、出願しましょうって言いがち
もっと広い視点でどうマネージしていくか考える人が大事
そのために未踏にはPMがいると思う
社会に還元する手法が特許権の取得であるとは限らない
ご自身がその技術の業界内での位置付けを考える
競業他社がいっぱいあるなら取るという手もあるし。
Q: 特許を取っているのを大企業に安く買い叩けないという点は納得しているが自分たちでハンドリングできる範囲に縮まってしまう、一番理解している人間がいることをアピールして人を集め、マネジメントやアプリケーションで差別化していくのが良いか
A: 公開すると色々と想定外のつながりが生まれて人生が面白いのではないか、というのが僕の感覚
知財をやってるっていうと一般の人は「あれダメこれダメ」「守りに入る」をイメージしがちだけど、僕は逆で、法律は皆さんを自由にするツールと考えている。守りに入るのではなく、もっと攻めで、前に出ていく形でも良い。
公開してしまって他社が特許を取れないようにするという攻めの手もあり
Q: 公知として認められる要件は?
刊行物に書かれている
公に使われている
みんながアクセスできる状態
Webに書くのも公知の一つ
学会発表
特許取りたいなら出願前に学会発表してはいけない
「新規性喪失の例外」ってのを使って、数ヶ月遅らせることはできるが、そんなことにならないようにマネジメントすべき
Q: すでに学会発表されているものなら全部安心して使えるのか
出願してから学会発表した場合、学会発表のタイミングでは特許が公開されていないが、その後特許が成立する可能性はある
nishio.icon出願日から1年6ヶ月経過後に公開されるので、特許出願→学会発表→1年くらい経ってから公開、というケースはあり得る