最近
最近、ぼろぼろぼろぼろ泣いている。いつもすぐに泣いてしまうけれど、瞳のうえのほうの、ちょうど涙がたまってゆらゆるするところがずっと弱くなってしまっているみたいで、ゆらゆらせずにすぐに零れてしまう。
好きな歌の歌詞を見て泣いた。あつあつのココアにビスケットを浸しながら。ちょうど、あるひとのことを思い出してしまった。ココアは少し濃くつくりすぎたみたいで、飲み終わったら口の端がべとべとした。ビスケットはぐずぐずになってしまったけれど、柔らかくておいしかった。おいしいなあと思いながら、涙はだらだらと止まらなくて、かさかさした頬からゆっくり滑り落ちては机の上にぽとぽと落ちていた。ココアの中にも入ってしまったかもしれない。
緑色の吹き出しにちいさく収められた文字を見て泣いた。
君のため息が聞こえてきそうな言葉を読んで泣いた。わたしのことばではなにも届いていなかったんだというのがつらくてたまらなかった。
「自分のことばでなにかを変えたい、わたしから生まれたもので誰かひとりでも救うことができたら、きっとわたしには生きた意味があるんだと思う」
そう思って生きてきたし、将来の夢でもあった。わたしのことばで、たったひとりでも救うこと。最近はなんとなくその軸が揺らいでしまっている気がする。言葉にそれほどの力がないことに気がついてきてしまった。すこしちがうかもしれない。言葉には力がある。わたしのことばに、それほどの力がない、ということ。
けれど、ぜんぜん知らない人を救うのは無理でも、わたしに近い人たちであれば、もっとなにかを伝えることができると思っていた。言葉だけではない。
君のやさしい笑いかたが好き、理由はないけれど、どうしようもなく好きで、わたしはそれをずっと見ていたいよ。
君の不器用なほどにまっすぐなところが好き。
君のなにに対しても楽しそうなところが好き。
君のきらきらした瞳が好き。
わたしのおしゃべりを楽しそうにたくさん聞いてくれるところが好き。
いろんな好きを伝えることができるはずなのに、自分では伝えていたはずなのに、それでもわたしではどうにもこうにも届かないようなところで、ひとりでぽろぽろ泣いている君が見える。どうしようもできないことが目に見えてわかるから、わたしもぽろぽろぽろぽろと泣いてしまう。
どうしたらいいのかな。君はわたしよりも物知りだし、どんな質問にだって答えてくれるからって頼りすぎていたね。わたしの中で答えを出さなければいけないことも、考えられなくなっている。
ココアがおいしい、涙はあつい。
hr.icon