『いつも「時間がない」あなたに: 欠乏の行動経済学』(センディル・ ムッライナタン)
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いつも「時間がない」とはつまり、時間が欠乏しているということ。
本書は、「欠乏」という状態に目を向け、それがもたらすことや自分の中に引き起こす変化、陥る状態などを明らかにしていく。 欠乏
トンネリング
処理能力
ジャグリング
スラック
という言葉が頻繁に出てくるので、これらの言葉の意味を押さえながら読み進めることで、しっかり理解することができた。
192.欠乏は心を占拠する。…人の考え方を変える。人の心に居すわるのだ。
何かに欠乏感を抱くと、人はその欠乏している事ばかりを考えてしまい、心が占拠される。欠乏に集中してしまう。これがトンネリング。
829.欠乏への集中は無意識であり、人の注意を引きつけるので、ほかのことに集中する能力を邪魔する。
トンネリングを起こすと、集中はできるものに集中し過ぎてしまい、ほかのことには気が回らなくなる。ほかの一切のことに対する処理能力が低下する。
欠乏がトンネリングを引き起こす。そしてトンネリングは、処理能力の低下を引き起こす。いろんなことがうまくできなく、考えられなくなる。
本書では、処理能力や自制心の低下への対抗として、「スラック」つまり「余剰」の必要性を挙げている。余剰があれば欠乏を防ぐことができ、トンネリングをおこしにくくなる。トンネリングによる処理能力や自制心の低下を防ぐことができる。 ただ、話はそう簡単ではないことが本書では繰り返し述べられる。スラックがあったとしても、ちょっとした突発的なできごとですぐに欠乏を感じる状況に陥ってしまう。余剰があるときは、余剰があるからのちの欠乏を引き起こさないための適切な行動がとれず、ひとたび欠乏が起こればトンネリングをおこし、処理能力の欠如によってこれまた適切な行動がとれなくなる。
潤沢な余剰は、確かに欠乏を防いでくれるけれども、「ありあまるほど時間がある」なんて状況は現実的じゃない。
欠乏していない時に、欠乏に陥るきっかけとなる突発的な事柄に対応できるような仕組みなりツールなりを準備しておくことが大切になってくる。
「タスクシュート式」は、時間の欠乏に対抗する仕組みの一つとなってくれる。 いくつかの本を併せて読むことで、本書の理解はきっと深いものになる。