2014年08月号 スキャンとスナップの応用力
スキャンとスナップの応用力
なんでもiPhoneに取り込んでおきたい。iPhoneが身近になればなるほど、その気持ちは強くなる。書類も写真も広告も、図表も絵画も作品も。
iPhoneにさえ取り込んでおけば安心。見たいとき、見せたいとき、送りたいとき、あげたいとき……。いつも持ち歩いているiPhoneだからすぐに取り出せる。自分の回りのあらゆるモノをiPhoneに集約。iPhoneは自分情報のハブなのだ。
㈱PFUから発売された「SnapLite」はそんなiPhoneの使い方をサポートする強力な味方である。どんぐりを集めるリスのように「まいにちを集めよう」というメッセージがリスのマークに込められている。
まずはデスク、リビング、ベッドサイドなどに置いてデスクライトとして使おう。白色と暖色、2色の灯りを電源ボタンで選択でき、iPhoneアプリから明るさを5段階に調節できる。
普段からデスクライトとして使えるのがこの製品のミソ。iPhoneに取り込みたいものが現れたら即スキャナに変身する。
一般のスキャナ専用機は、手前にスキャン用のスペースを確保する必要があり、スキャンしないときはデッドスペースとなる。そこに物を置いた場合、スキャンする前にどけなければならず、スキャンをためらう要因となってしまう。
素材の電子化を気軽に進めるためには、スキャンするまでの気持ちの距離は短かい方がいい。そのため、日に何度もスキャンする私の研究室では、3台のPFU製スキャナ(ScanSnap「iX500」「SV600」「Evernote Edition」)を置いたデスクをひとつ、スキャン専用に使っているほどだ。
一方、SnapLiteの場合、普段はデスクライトだから、ライトに照らされる一角は作業スペースとしていつも確保されるはず。取り込みたい素材が現れたら、その場所がそのまま取り込みスペースになる。
準備は実にシンプル。ややこしい設定など何もない。SnapLiteアプリを起動したiPhoneをSnapLiteの上に置くだけでいい。自動的にBluetoothでつながり、SnapLite本体にあるリスのマークが点灯して、取り込みスタンバイ状態になる。
SnapLiteから前方に照射されるレーザーガイドがA4サイズの位置を示す。iPhoneの画面を見る必要はない。素材を置いたら、点灯しているリスのマークにタッチ。すぐiPhoneのカメラロールに保存完了。紙の資料であれば、自動的に紙のサイズに切り出して取り込まれる。また素材を上から撮影する方式だから、雑誌や書籍のページを100度ほど開いて手で保持すれば、片側のページをきれいに取り込める。少ないページ数であれば電子化のために断裁する必要もない。
名刺サイズまでの紙片を複数置いて同時に読み取ると、個別に取り込んでくれる。逆に大きなA3判は2回に分けて取り込むと、自動的に合成される。
普通のスキャナより軽快。そもそもスキャンとは「走査」することであり、既存の一般的なスキャナは紙やセンサーを移動させながら表面をナメるようにして情報をとらえていく。他方、SnapLiteは写真撮影の応用だから、瞬時に情報の取得が完了する。まさに「スナップ」である。
そういった相違は、SnapLiteという名称に「スキャン」という言葉が含まれていないことからも読み取れる。実は、公式Webサイトでも「スキャン」という表現はほとんど使われていない。
代わりに使われているのは「取り込む」という言葉。資料の保存以外にも例えば、子どもが描いた絵画や工作を離れて暮らす祖父母に見せたいといった場合に、学校から持ち帰ってきたらiPhoneに取り込めば、すぐに送ることができる。
また「残しておける」という表現も本質的である。たとえばネイルアートは生活の中で手指を使うほど傷ついたり汚れたりするから、爪に描いた直後の最も美しい状態を残したい、お土産にいただいたご当地もののお菓子のパッケージを開封前に残しておきたい、といったニーズがあるだろう。
工夫の楽しさ
簡単、きれいがとりえのSnapLiteは、シンプルゆえに工夫の余地も大きい。最も面白いのは画質の追求。細かい文字が記載されている書類を取り込むと、もう少し高画質を望みたくなる。手軽に取り込める反面、iPhoneを斜めに置いて「スナップ」する構造上、多少画質が犠牲になるからだ。
そこでA4判より小さい紙の情報を取り込む場合、紙を少しiPhoneに近づける工夫をしている。計算上、B5判の場合は約5cm、A5判なら約10cm、紙を持ち上げるといい。コピー用紙500枚の束が厚さ約4.5cmだし、手元のクリアフォルダーの束が約2cm。それらを組み合わせて台として使っている。
また私の場合、長年使っている測量野帳(コクヨ・セ-Y3・スケッチブック)に万年筆で描いた内容をさっと取り込みたい機会が多い。研究室内を見回すと、A4判書類を入れる紙製のファイリングボックスが厚さ約9cm。今では紙はスキャンして捨ててしまうため、ファイリングする機会など全くないので廃棄する予定だったものだが、その上に測量野帳を開いてスナップしたところ、大変きれいに取り込むことができた。
なおiPadは対象外だが、私の環境で試したところ、SnapLiteの上できちんと角度を保持すれば、動作した。iPadの大きい画面で見たい素材の場合、直接iPadに取り込むメリットは十分にある。
色々と工夫を楽しみながらSnapLiteを使っていたところ、6月10日、同じく㈱PFUから魅力的な製品「ScanSnap iX100」が発表された。Wi-Fiとバッテリー内蔵の細型スキャナである。
バッテリーで260枚もスキャンでき、重さ400gの細長い形状だから、海外出張にも持参できる。オフィスや家庭にある既存のWi-Fi環境はもとより、Mac/iPhone/iPadと1対1で接続することもできるので、場所を問わず利用可能だ。
ドキュメントスキャナで世界シェアNo.1のPFUがこうしてじわじわとスキャナを身近にしていく。身の回りの素材を取り込んで最大限に利用するための入り口を多角的に提供してくださる製品開発力と企業姿勢に、心から賛辞を贈りたい。
紙の書類を受け取った瞬間、内容を問わずスキャンして、捨てる。いまや私の研究室で行う事務作業の鉄則である。紙を廃棄するたび「もったいない」という森の嘆きが聞こえてくるが、リサイクルに回せない内容の書類が多いのも悩ましい。職場の全部署、そして全国の企業や官公庁がEvernoteなどのクラウドを使って業務を進めてくださる日を待ち望んでいる。