第二言語習得論のエッセンス
第二言語習得論のエッセンス
英語の先生ならこれだけは知っておきたい
第二言語習得論(Second Language なんちゃら, SLA)
とは:第二言語はどういうメカニズムで学習するのかを明らかにする学問
第二言語とは:外国語
外国語を教える立場にある人は第二言語習得について学ぶべき
なぜ:おまえは無免許医に治療されたいのか……?
日本では外国語教師養成にSLAの授業がないからお前ら大変だな
母語の影響
言語転移(language transfer)
とは:母語が外国語の学習に影響を与えること
たとえば:日本語と英語は似ている部分が少ないので互いに学ぶのが大変(= 負の転移 negative transfer)。ヨーロッパ内なら方言くらいの違いしかないのもあるので類推でなんとかなることもある(= 正の転移 positive transfer)。
転移は言語だけでなく、スポーツなど人間の認知活動全般に生じる。
似ているからこそ間違えやすいということもある
ぼくのかんがえた例:中国語で行くは「走zou」、走るは「跑pao」。
普遍的な習得順序が存在する
母語によらず、文法事項の学ぶことのできる順序というのもある。
たとえば英語では:まず易しいのは「進行形、複数形、be動詞」次に「助動詞、冠詞」、その次に「不規則動詞の過去形」、一番難しいのが「規則動詞の過去形、三人称単数現在の -s、所有格の 's」(スティーブン・クラッシェン(Stephen Krashen)の「自然な順序(natural order)」)という有名な話。
ただし、母語が日本語だとその影響を受け、「所有格『の』」を 『's』に置き換えるだけだから簡単、しかし複数形とか冠詞とかはその概念を理解するのに時間がかかるので時間がかかるなど、母語の影響がつよい。
スピーキング重視の弊害
「どう思いますか」をHow do you think about it? と言のは間違い。正しくは What do you think about it? と言う。間違える人は上級者にも多い。(エスペラントも Kion vi pensas pri tio)
なぜ間違えるのか:What do you think about という表現が身につく前に「どう思いますか」を直訳して使い定着してしまった。
第二言語の知識が身につかないうちに無理やりプロダクションさせると、How do you think about it が出現する。学習者にスピーキングを強制するときに注意すべき。
文化の転移
日本人が常識にしたがい日本流の謙遜を英語ですると「ほめられたとき、ほめことばを受け入れなければだめだ」と怒られる。相手にとって謙遜ではなく、相手の発言を拒絶したともすれば無礼な振る舞いと見られるため。
年齢要因(臨界期仮説)
年齢が上がると外国語をネイティブレベルにするのは不可能だという説。
ある程度正しいと考えられている。
「臨界点」がるのかは諸説あり。
大人の方が初期の学習の速度が早いが、一年くらいすると子供が追い抜いていくことが知られている。
なぜ年齢の影響があるのか:諸説あり。脳の柔軟性、大人は分析しすぎる、子どもは環境に溶け込める、母語に長けると母語で解釈してしまう(母語によるフィルター)など。特に母語によるフィルター説が注目されている。
母語によるフィルター
母語を身につけてしまうと、母語を通してしか外国語が処理できなくなるという説
たとえば:/r/ と /l/ を ル で解釈してしまうので区別が聞き取れないなど。
たとえば:複数形が重要でない。映画『おくりびと』の英語タイトルはDepartures
バイリンガルの利点
認知能力が優れている。(創造性、類推能力、柔軟な情報処理能力)
距離の遠い言語を身につけているほうが認知能力が高い。
トレーニング効果で頭が良くなるのだろう。
認知症の発症が遅い
個人差
外国語学習適性とは
動機づけ(motivation)
動機づけと学習の成果の関係
SLA研究から見た効果的学習法とは
言語ができるとはどういうことか
外国語教育が目指す能力とは
単語と文法を習得すればいいのか
言語習得の本質とは何か
クラシェンの「インプット仮説」
インプットだけで習得できるのか
インプット+「アウトプットの必要性」がカギ
なぜインプットで言語習得ができるのか
自動化理論
まとめ