幸福は外的環境が決めるか
主観的幸福感の研究の初期段階では、心理学者たちは主観的幸福感が外部的要因の影響を大きく受けることが証明できると期待した。彼らの認識は、人々には普遍的基本欲求があり、環境がそれを満たすことができれば人は幸福を感じるというものであった。しかし後の研究で、確かに収入等の外界素因は個人の幸福感に影響を与えはするものの、その程度はかなり小さいことがわかった。性別、収入、知的水準などの統計数値から説明可能な主観的幸福感の差は高々20%であり、残りは内在的要因による。
1988年、ミネソタ大学が行った有名な双子研究によると、違う家で育った一卵性双生児は、同一家庭に育った二卵性双生児に比べて、成長後の主観的幸福感の程度が近似していた。統計分析によると、ポジティブな感情、ネガティブな感情、生活満足度への遺伝影響程度はそれぞれ40%、55%、48%に達する。一方、同一家庭環境との比較から得られた環境の影響はそれぞれ22%、2%、13%と見積もられ、遺伝素因の影響に比べかなり小さい。2010年4月 «Twin Research and Human Genetics» 誌に掲載された研究では、12000例余りの大規模サンプルにより、男性と女性の主観的幸福感の遺伝度はそれぞれ22%と41%であることが示された。
ただし遺伝子は個人の幸福感に直接は影響しない。その作用は間接的である。遺伝子は人の先天気質に影響し、人格形成にかかわり、ひいては人の行動と外界に対する反応図式に影響を与えるのである。
主観的幸福感度 = 32%遺伝 + 68%生活環境
注意 この数値は統計的分析により求められたものであり、遺伝の影響度は個人により異なります。
基因宝