マウスとラットのUSVsの違い
#ラット #嫌悪
おかべさんと書いた日本語総説で、マウスとラットのUSVsの基本的な特徴を記載し、マウスとラットのUSVsの違いについても少し記載しました。
岡部祥太・菅野康太 (2023). 情動表出としてのげっ歯類超音波発声 : マウスとラットにおける音声コミュニケーション」—小特集 ヒトと動物の音声の感情・情動伝達 日本音響学会誌 79(1), 41-48. https://doi.org/10.20697/jasj.79.1_41
大きな違いとしては、
ラットでは嫌悪の表出としての 22-kHz call が知られているが、マウスでは嫌悪の表出としてのUSVsは知られていない(マウスの嫌悪は可聴域の声で出す)
上と同じことを言い換えているだけですが、ラットでは声の高さで快(50-kHz call)と不快(22-kHz call)の表出の仕方を変えているが、マウスにはそのような "使い分け" が見られない(声の高さは遺伝系統ごとに違うので、おそらく遺伝的な特徴)
マウスの嫌悪の表出の声は、可聴域(参照→ マウスの嫌悪の声-ただしUSVsではない)
相手がいない状態ではマウスはUSVを示さない(1匹ではあんまり鳴かない)
Ratでは麻薬のアンフェタミンを投与して中毒状態にしたり、その状態でアンフェタミンを与えなくするとUSVsを出しますが、マウスではそれが見られないということも報告されています。
Serra, M., Marongiu, J., & Simola, N. (2021). Lack of drug- and cue-stimulated emissions of ultrasonic vocalizations in C57BL/6J mice repeatedly treated with amphetamine. Neuroscience letters, 749, 135733. https://doi.org/10.1016/j.neulet.2021.135733
その他、ラットだとランニングホイールで走らせると1人でもUSVsを出すことも知られている。
Heyse, N. C., Brenes, J. C., & Schwarting, R. K. (2015). Exercise reward induces appetitive 50-kHz calls in rats. Physiology & behavior, 147, 131–140. https://doi.org/10.1016/j.physbeh.2015.04.021