第4章 クリエイティブ・ジャンプを生み出す読書的思考法―自分の世界を広げる本屋と読書
p.102~136
アイデアの新しさはどこから生まれるか
企画や新しいアイデアに必要な要素 → 想定外、欲望
いいアイデアを生むことができる人の特徴は、自分の世界を広げることができる
人を引きつけるいい企画にはたいてい想定外の要素が含まれる
- ビックロ → 家電とファストファッションを一緒に売ることで話題
- 35歳の高校生 → 35歳という年齢と高校生の組み合わせ
- エキナカ → 駅の中が飲食店かキオスクだけの時代に花屋や地産品などを扱ったお店を置くことで新たな客層の掘り起こしに成功
- オトナグリコ → 子供のイメージがあるグリコから大人向けのチョコ
想定外の要素を組み合わせたとき、斬新なアイデアが生まれる
斬新、新しいはこれまでに誰も考えたことがないということ
しかし、毎回斬新なアイデアを出すのは難しい
では、いいアイデアを出すためにはどうすればいいのか
その情報自体は多くの人が知っていることであっても、それらを思いがけない組み合わせにする
全く違うもの、誰もが同じフォルダに入るとは思っていないことを結びつける能力
必要なのはクリエイティブ・ジャンプ
仕事で成果を出すには、大きく2つの方向性がある
ある特定の分野を掘り下げていって他の人にはない強みを出すこと
異分子的に横から入り込んでくるものと掛け合わせて強くしていくこと
「若年主婦層に対して、調味料の利用促進を図りたい」
→できたのは、ギャルママ向けの料理支援サイト
→ギャルママ向けの理由1
→ギャルママは家族が大好きで、家庭で料理をしていることをギャルママ雑誌を読んで知る
→ギャルママ向けの理由2
→ギャルママたちは自分が10代の頃は比較的好きなことをして親に迷惑を書けたと思っている人も多く、自分の子に対して愛を注ぐ
こういう周辺知識からして、理想的なターゲット
料理とギャルという異分子が入ることで、調味料を若い主婦層に売りたいという課題に応えるクリエイティブ・ジャンプが起きる
人は企画にギャップを求めるのに、普段は以外にギャップの入り込むすきがない思考に陥る
この「すき」を作るのに、意外な情報は非常に役立つ
ギャップや振れ幅を作るためには、どこか全く別のところから異分子を探してきて、想定外の組み合わせを作る思考法が要る
「逆張り」と「順列組み合わせ」発想法
想定外のものを組み合わせる代表的な技術
逆張り
正反対の物を組み合わせる
- 多機能家電製品が目立つ近頃、そんなに機能が必要ない人や説明書を読みこなせない人向けに無駄な物を削ぎ落とした「単機能製品」を作れば、ある一定の需要があるはず
順列組み合わせ
予想外の組み合わせも含めてすべて試してみようとすること
- ももクロ
アイドルグループxプロレスなどを取り入れた激しいダンスパフォーマンス
ライブで意表を突く組み合わせの共演
- 名古屋人
抹茶小倉スパゲッティ
美味しいかどうかよりあらゆる味を試す
無駄だと思いつつ会えてやってみて、たまたま美味しいものもあった
情報どうしを組み合わせる視点
一見関係のなさそうな情報を組み合わせることで企画が生まれる
組み合わせ作業に重要な役割を果たすのが、視点
視点のわかりやすい例 → 雑誌
雑誌は、「雑」なものの集合
必然的に自分の興味の範囲外の情報も混じってくるので、想定外の情報に出会う確率は高まる
集合知に対する代替案にもなる
ある視点で編集されたコンテンツは紙でもWebでも売れる - クリス・アンダーソン(WIRED編集長)
中央線沿いの店を100軒紹介して、それぞれの店のどこが中央線ぽいか
「古本屋をやるつもりが、カレー屋になってしまった」
「ほうきが好きで、店の中に十何本もおいてある」
「家具は全部借り物」
など
中央線は元祖ソーシャルメディアという視点が見える
古本屋、シェアハウスが多く、好きな人たちが集まって、ものや人の融通をしあいながらビジネスをいている
「フリー」で「ノマド」で「ソーシャル」といういま流行りの価値観は、中央線沿いに昔からあったという新しい視点が提供できる
こういう視点が見えてくるところが価値あるコンテンツとなる
これがある雑誌は決してなくならないはず
情報にお金を出すのではなく、情報を組み合わせた方に対してお金を出す時代になっている
情報の組み合わせ方 ≒ 視点
本屋で「想定外」の練習
書棚の本をいくつか手にとってみて、何かリンクするものはないかを考えてみる
「なぜあの本の隣にこの本が並んでいるのか」を考えてみても良い
「書棚を作った人の視点は何だったのか」を想像してみる
異なる著者/ジャンルの本をバンドルする練習
日常生活の中で見たものであってもさまざまな形で結びつけることができるようになる
本を読むことの効用
自分にはない視点を持つことができる
違う立場/自体/国の人が世界をどのように見ているのかを取り入れることで視点移動の訓練になる
いい企画とは欲望に応えるもの
ただ単に「意外さ」だけでは、それがいい企画になるわけではない
発見した欲望に対しての解決策を探せば、それがいい企画になる
企画者 → 新しい欲望を発見するプロフェショナル
人は欲望をうまく言語化することができない
なので、欲望はネットの検索で探すことができない
欲望の発見プロセス
書店員の不満から生まれた「本屋大賞」
作家が選ぶ賞を見て書店員が持っていた「今回の直木賞は何であれなの?」という文句と不満
この発言は欲望の発露
つまり、この不満は「私ならこっちの作品を選ぶ」「あの作品を売りたい」という欲望の裏返し
その欲望に対応する文学賞をつくったから成功した
単純に本屋大賞を模倣しただけの「〇〇大賞」がヒットしないのは、欲望に対応して作られていないから
単なる企画のコピーでしかない
欲望の発見は街の中を歩いていてもできる
「おひとりさま」
一人で食事している女性の姿
あるボリュームを持った女性の欲望の発露
それまでの不満、文句としてあったもの
「団体行動なんて面倒くさい」
「何でいつも彼氏と一緒じゃないといけないの」
「女子会とかもういいわ」
平積み台は「欲望の鏡」
欲望を見つける訓練をするのに適した本屋
本屋の平積み台は「欲望の鏡」
平積みになっていることは、そのときに求められているものが並んでいる
他の棚では、分野別に別れていることが多いが、店頭の平積み台は、人々がいま深く知りたいと思っていることが集まっている
検索急上昇ワードも人々の欲望の発露だけど、その性質上、非常に刹那的
その時ちょっと知りたいと思ったことのランキング
平積み台を見て、一言でキャッチコピーをつける訓練
KJ法
集めた情報をカードに書き込んで、そのカードをグループワケしていきつつ、そのプロセスの中で新しい気付きや発見を得ようとする方法
書店に行って1冊の本を1枚のカードに見立てて、グルーピングしてみるのも同じ効果を得られる
平積みされている本は書店によって異なる
丸善丸の内本店 → ビジネスマンが求めているもの
青山ブックセンター本店 → クリエーターが好みそうなもの
あゆみブックス早稲田点 → 学生向け
など
企画を考えるのに資本はいらない
目の前の風景すべてが素材になる
そこからどれだけの情報を読み取れるか
実店舗に訪れて得られる情報としての例
時間帯x客層
閑散している時間帯に訪れる客層は何でその時間帯に来るのだろうとか
その客層向けに新たなサービスのアイデアが浮かんでくるかも知れない
欲望発見の手段はいろいろある
電車の中で隣の人たちの話を聞いてみたり、売上げランキングを追ってみたりする
「異分子」を集めよう
自分の中に「異分子」となるもののストックがなければ組み合わせることもできない
ストックを増やすために必要なこと → 自分の世界を広げること
自分の知らないことを知る
2種類の情報収集
目的を持って集める情報
とくに何の役に立つかは分からないけれども知っておくべき情報
目的がある情報収集は検索でこなす
何の約に立つか分からなかった情報じゃアイデアを生むのに必要な「異分子」
本から得られる「無駄な知識」の効用
「寄り道思考」が大事
道草はなぜあんなにも楽しいのか
寄るところが目的地ではない
途中で予期しなかった物を見つけたり、拾ったりする
そのプロセス自体を純粋に楽しめる
「余計な荷物」のような情報を沢山持っていることがアイデアを生み出すのに役立つ
目的や答えに向かって一直線に行かず、迂回することによって思考は確実に深まる
あえて答えを探さない勇気
探しているものだけで企画を作るとろくなものはできない
誰にもできることだから
本は寄り道のツール
すぐに答えは出ないし、読み終わってから目的ト違うこともある
読書にはそういうそういう無駄があって構わないし、それこそが読書の価値
読書とは旅である
目的も成果も定かでない体験をしないと、人は自分の知らないことにたどり着けない
だからこそ、人は旅を繰り返すように、今日も読書をする
2種類の「知る」
知りたかったことを知る
知らないことを知る
知らないことを知るには、検索では得られない「ジャンプ」がある
検索では読書で得られる情報ほどの「飛距離」がない
あくまで隣に飛び移るような感覚で、「想定外の価値」には出会えない
最近は、「知る」ということが検索的な「知りたかったことを知る」の意味に偏りすぎているように見える
「知らないことを知らない」と検索は気づかせてくれない
検索は「見たことのあるもの」しか見つからない
知ろうと思ったことだけを知っていては自分の世界は広がらない
「知らないもの」は知ろうとさえ思わない
検索と読書で見つかるものの違い
「知らないことを知る」ためには、どのような方法がいいのか
知らない世界に強制的に連れて行ってもらい、偶然の出会いを増やすこと
旅、読書はそうした世界に強制的に連れて行ってくれるもの
検索でこれをやるのは至難の業
検索は自分の自由意志だから、自分の関心のあるもの以外は、よほど意識しないと探そうとしない
読書は子供の砂遊びに近い
特定の目的があるわけではないけど、何かが出たらいいなくらいの気持ちで、なにが見つかるかよりも掘ることそのものが大事
自分で能動的に何かを探すのには向いていない
何が出てくるかはわからないから、全くコントロールできない
出会いの「偶発度」で情報収集を分類する
←偶発度が高い 低い→
飲み会 懇親会 会議
旅行 読書 SNS 検索
あなたの世界を広げる方法
まだまだ知らないことがあると思っている人ほど成長する
自分の世界を広げ続けることこそ、アイデアの源泉
しかし、もっと知らなきゃ、と義務に思うと、蘇たんに重荷を感じる
なので、検索的な方法で自分の世界を広げようとするのは難しい
手っ取り早く知らない世界に抜け出るためには、強制的に連れ去ってもらう方法がある
ただ、強制的といっても、ちょうどいい強制力を持っているのが本屋
本屋に行って、本を買って読む
自分の気づいていなかった欲望を刺激して満たしてくれる心地よさ
300人をフォローすることで、友人/興味ある有名人だけでなく、自分の興味外の情報も見てみるという意図的な無駄の要素
結局、必要なのはゆだねること
ゆだねて、新しい世界に連れて行ってもらう
知らないことがあっても、生きていくのに支障はない
けれど、知ることができたほうが、単純に楽しい
書を捨てず、町へ出よう。行くのはもちろん、本屋さん