第1章 なぜ本屋に行くのか―情報との出会いを増やす歩き方
p.14~40
本屋に行く理由
- なんとなく面白い本がほしい
- 漠然と、なにか新しいことに触れたい
本屋に行くことで想定外の情報との出会いがある
想定外の情報こそ、実は自分が求めていた情報だったり、以外にも役に立つ情報だったりする
(2章で詳しく扱う)
いいアイデアを生むためには、自分の中だけで考えているのではなく、多くの情報を集めることが必要
本屋に行くことで、日常生活の中に新しい情報との出会いを劇的に増やし、それらの化学変化を生み出すことに繋がる
書棚は本屋によって違う
書棚はその本屋の考え方
好みの問題で、自分に合う本屋が見つかればそれでいい
本屋は元祖セレクトショップ
雑貨/服のセレクトショップよりも本屋のほうが元祖
本屋の数だけいろんな情報との出会いがあって、試してみればそれだけ入り口とルートがある
その個性の中で自分に合った情報を摂取しやすい/自分が心地よく情報と出会えるタイプの店が見つかると、日常がより楽しくなる
本屋:お客さんが本と出会う場をデザインをしようとしている
その出会いの演出方法にそれぞれ個性がある
著者曰く、「なるほど」「そう来たか」と気づかせてくれるものが個性
買う側はその個性を大いに活用すればいい
書棚はガウディの建築であり、AKBである
東京堂 → 品揃えのサイクルが日々変化していく
昨日と同じ本屋は二度と現れない
本屋はその時点でのベストの棚を作るという作業を延々と繰り返している
ガウディが設計したサグラダファミリアは1882年着工依頼、今の建設中
AKBはセンターを誰が取るかでイメージがガラッと変わる
本屋も長い間続く中で変化を加えている
新たな魅力や気づかなかった自分の関心を発見できるかもしれない
本屋の歩き方・五カ条
1. 本屋に行くのに目的はいらない
2. 自分の持っている本を探してみる
- 自分が持っている本がどこに置かれているか探してみる
- その本の周りにどんな本が置かれているのか
この2つでその本屋の個性や得意分野が見える
3. 普段行かないコーナーに行ってみる
- 文系なら理系のコーナーに行ってみる
- 園芸コーナーに行ってみる
など
4. レジ横は見逃さない
- その時々でのお店の一押しやついで買いを狙ったものが置いてある
5. 迷ったら買え
- 出会いの種を摘み取るため
いい本屋の条件
自分にいちばん合う本屋を見つける
想定外の出会いを演出してくれる
その方法は、ドラマチック/刺激的/さり気なくなどなど
著者が言ういい本屋の要素
1. 店の前に自転車がいっぱい停まっている
- 地元のお客さんに愛されている証拠
※普段あまり行かないコーナーに関する本のメタ的なつながりがあるコーナーに置くことで、想定外の出会いを演出する本屋もある(京都の恵文社一乗寺店)
入り口の敷居の低さ
店全体をけっしてマニアックにならないようにすることで敷居を下げている
複数の人が1つの棚をいじることで、1つのテーマに様々な本が集まる
店に来る人が近寄りやすくなるための方法
売れない本屋と売れる本屋の違い
売れない本屋
一人のひとの興味/好奇心だけに閉じたラインナップの書棚
「わかっているやつだけわかればいい」(スノップ)という店だと不親切
売れる本屋
未知なる能力を開花させてくれそうな、いろんな見方ができるようなものになっている書棚
カルチャー本/おしゃれな雑貨に関するだけを売る本屋は意外と作りやすい
でも、一般の書店はターゲットが決まっているわけではないから、いろいろな人のニーズに答えつつ、そういう人を刺激して、開眼させて行かなければならないから難しい
なぜ売れる本屋を作るのが難しいのか
本屋というのは、整理整頓や在庫管理の観点から、新書は新書、文庫は文庫、著者ごとみたいに管理しやすい形で並べたくなる
本の在庫がどこにあるのかが分からないような棚の並べ方は負担になる
そのため、ひと手間をかけられる書店の存在は貴重で、買う人からしたら未知なる能力を開花させてくれそうな本に出会えそうな本屋
個性的な本屋たち
東京・千駄木の往来堂書店
「今日は何の日」という本棚をおいて、その日に関する本をいろいろと置く
→普段接することのない本とアトランダムに出会わせてくれる装置として本屋を考えている店
リトルプレス(小冊子)がいっぱい揃っている
本屋で買っているペットを見に行く
などなど本屋に行く理由は実は何だっていい
本屋の個性的なところを見つけ、楽しみながらそれを利用できる用になっていたらそれでいい
いい本屋にはいいお客さんがいる
代々木上原の幸福書房
派手なポップでアピールすることはないが、売りたい本を棚に二冊並べてる
「二冊挿し」
何のために役立つのかよくわからないような本だけど、つい買ってしまう
周りに面白い本を読んでいる人がいたら、その人にどこの本屋に行っているのかを聞いてみる
棚には文脈がある
書店の棚は、基本的に大きく分ければ、テーマ別/出版社別/著者別で本を並べている
いい本屋の中には、「文脈棚」を作っている
何かの順番や規則性で並べるのではなく、その内容を緩やかにリンクさせながら一つのつながりとして並べる
夏目漱石の本の横に寺田寅彦の本があったら、
夏目漱石が英語の先生だった時の教え子に寺田寅彦ががいたことを知っている人もいれば、知らなくてもそこからその人に関して興味を持つ人もいる
一つの本をきっかけにして他のいろいろな世界が聞けてくる
という感覚が得られる
ある本を買った人に対して類似の書籍をおすすめする(レコメンド)のは、ネット書店の得意分野
しかし、レコメンドの同じ著者/テーマ/読者層という鋳型(いがた)にはめられる感覚で反発する人もいる
文脈棚にはそういう押しつけ感がなく、自分の興味の引っかかりをうまく探り出してくれるようなところがある
著者名/テーマという直接的なリンクではなく、ゆるやかに結びついていながら、適度にジャンプしていくような感覚は他ではあまり経験できない
書店の個性は、この文脈のつくり方にあって、だからこそ同じ人であっても、いいった本屋によって違う本を買ってきてしまうことが起きる
本屋は世界と繋がる場所
専門書店でない限り、できるだけ多くの分野を揃えているはず
書棚には人間の携わるすべてのものがあるぐらい
そうした空間を歩くことは、まさに世界に触れることでもある
MITの石井裕教授などが提唱している「タンジブル(触れられる)」という概念
タンジブルユーザインタフェース
本屋というのは、広い世界全体がタンジブルになっている場所
書棚は一つの世界であって、いろいろな本屋に行くことによって、その数だけの世界にコンセプトを差し込むようにつながることができる
書店の情報の総量はネットに比べて少ない
しかし、全体を短い時間で一覧することができる
フィジカルなつながりで人間っぽい感じ
書棚の間を旅するように
いい本屋の棚はシームレスにつながっている
入り込むには、どこか一箇所でもいいから自分と合う入口を見つけるところが大切
入口さえ見つかれば、その文脈棚が提示する文脈にしたがって進んでいくことができる
いい本屋は、入り口も見つけやすく、いろいろバリエーションが作られている
興味がある棚の間をジャンプしていく → クリエイティブ・ジャンプ
一冊の本を起点とした旅