『ロング・グッドバイ』
『ロング・グッドバイ』
シリーズの中で最も有名な作品なだけあって、作品全体に漂う雰囲気が美しく、よい テリー・レノックス氏の持つ悲しげで謎めいていて儚い雰囲気が背景音楽みたいに全体に作用しているという印象を受ける
物語全体の構成も美しく、最終的に的にパズルの最後の1ピースがはまった時のような満足感がある
が、それは爽快感のような感じた瞬間から弾けて散っていくようなものではなく、余韻として残り続ける
愛の不時着のストーリーの構成の美しさと似たような雰囲気がある 以下、ポッター氏の台詞部分の引用(音声書き起こしのため、少々間違いがある可能性あり)
「私はこれまで、世間に姿を晒してこなかったし、この先も晒すつもりはない。世間の注目を避けるために、あらゆる手を尽くしてきた。私には影響力があるが、ただその乱用はなるべく避けたい。ロスアンジェルス群の地方検事には野心があり、いくら一時的に名前を売ったところで、それで将来の道が閉ざされたりしたら割に合わないと理解するだけの常識を備えていた。
君の目に光が見えるぞマーロウ。つまらんことを考えるな。我々はデモクラシーと呼ばれる生態の中に生きている。国民の多数意見によって社会は運営されている。その通りに動けば理想的なシステムだ。ただし、投票するのは国民だが、候補者を選ぶのは政党組織であり、政党組織が力を発揮するためには多額の金をつかわなければならない。 誰かが彼らに軍資金を与える必要がある。そしてその誰かは個人かもしれないし、金融グループかもしれないし、労働組合かもしれないし、なんだっていいのだが、見返りに気遣いを求める。 私は立ち上がり、椅子の周りをぐるりと歩いた。彼は冷ややかな観察の目を、終始こちらに向けていた。私はまた腰をおろした。ささやかな幸運を私は必要としていた。トラック一台分の、ささやかな幸運を。 「金というのは奇妙なものだ」と、彼は続けた。
彼は大きな白いハンカチを取り出し、それを額に軽く当てた。私はそこに座ってぽかんと口をあけ、一体何がこの男の神経をかくも苛立たせているのだろうと訝った。彼はすべての物事を憎悪しているのだ。