事前検死
事前検死は、「失敗するかもしれない」と考えるのとはまったく異なる。チームのメンバーは「プロジェクトは失敗した」「目標は達成できなかった」と伝えられ、いわば「すでに死んでいる」状態から始まって、検死(検証)を行う。このように失敗という抽象的な概念を具体化すると、問題に対する意識の持ち方が変わる。
この手法は行動経済学者ダニエル・カーネマンら第一級の思想家に支持されている。「事前検死はすばらしいアイデアです」とカーネマンは言う。「私はダボス会議でその話をしました。(中略)するとあとで、ある大企業の会長がダボスに来た甲斐があったと言ってくれました(15)」
事前検死は非常にシンプルな手法だ。まずチームのリーダー(プロジェクトの責任者とは別の人物)は、メンバー全員に「プロジェクトが大失敗しました」と告げる。メンバーは次の数分間で、失敗の理由をできるだけ書き出さなければならない。その後、プロジェクトの責任者から順に、理由をひとつずつ発表していく。それを理由がなくなるまで行う。