スペース・マシン
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1976年発表。
創元SF文庫。
中村保男訳。
復刊フェアで新装版が出ている。
入手難度はやや高め。
本国のBBC Radio 4 でもラジオドラマ化されている。
三三歳。ウェルズオタク垂涎の冒険小説
概要
どのプリースト作品とも異なった異色作だ。
あえて乱暴に形容するのであれば、H・G・ウェルズの『タイム・マシン』と『宇宙戦争』を悪魔合体させました、という体の、ある種の翻案作品ということになるだろう。
復刊フェアで新装版が出ている。
構成
プリーストは彼好みのガジェットをほとんど詰め込めるだけ詰め込んでこの作品を作っている。無制限にヒトの意図を越えて屹立する巨大建造物、現代自然科学を完全に無視した機械、登場人物の不可視化、地上から干渉不可能な飛行物体、などのことだ。
魅力的な女性への接近、異星都市の探索、異形生物との戦闘などの強力なフックが次々に繰り出されるので、退屈なパートはほとんどないはずだ。
作家自身はこの作品への偏愛を『アンティシペイション』序文において公言しているが、批評家からは「楽しみのためだけに書いた」との批判も受けたそうだ。
いずれにせよ娯楽SFの喜びに満ち満ちた、安心して楽しめる佳品であることに間違いはない。
あなたが「プリーストの文学ぶったアティテュードが気に食わない」「本物のSFファンはプリーストを読まない」というような主張を持っていて、なおかつ本作を未読なのであれば、一読を強く推奨する。
もっとも、プリーストは現代科学の知見からの外挿から話を作らない作家だ。
だから、あなたが万が一にでも、現代科学とある程度親和的な問題解決型ストーリーだけをSFと呼ぶ読者であるのならば、そもそもプリーストにSFを期待すべきではないのだ。