ブッダにはこのことがよくわかっていた。
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ブッダにはこのことがよくわかっていた。彼は、自分の教えは、「世の潮流に逆らう」、人間の利己主義的な欲望に逆らうものだと言っている。「目覚め」の四週間後、菩提樹の下に坐って、ブッダはこうつぶやいた。
「私が体現したこの真実は、見がたく、理解しがたく、賢者にしか把握されない。潮流に逆らい、高遠で、深く、微妙で、難解なこの真理は、欲情に打ち負かされ、闇に包まれた者たちには見えない。」
内心こう思いながら、ブッダは自分が理解した真理を世間に説明しようとするのは無駄ではないかと一瞬躊躇した。