トコトンやさしいエントロピーの本
・エントロピーとは自然に変化する現象の「不可逆性の指標」。乱雑さ。
・“エネルギーは保存されてなくならないため、エネルギーの枯渇問題とは、エントロピー問題”
・カルロ・ロヴェッリ『時間は存在しない』でも、時間の変化を示す唯一の法則はエントロピーの熱力学第二法則だと言っていた。温かいお湯が冷める、その逆の方向性はない。つまり変化の方向性は一定である。
(「変化の方向性は一定」これはカタパルト物語理論、ジッドの変化と誠実、吃りとアウフタクトによる感情の増幅とも関わりそう)
・全体のエントロピーがなぜ増大するのかの理由は分からない。
・エントロピーの名付け親はドイツの物理学者、ルドルフ・クラウジウス(1822-1888)。変化を表すギリシャ語「トロピー」に「中へ」を表す接頭語「エン」をつけた。
・自然現象は「質量保存の法則」「エネルギー保存の法則」「エントロピー増大の法則」すべてが満たされなければならない。
・熱エネルギーになるともう取り出せない(最後)
・エネルギーとは「仕事のできる潜在能力」
・自然の変化はエネルギーの質が悪くなる方向に起きやすい
質の良い(≒温度の高い)エネルギー=力学的エネルギー、電気エネルギー、太陽光エネルギー
質の悪いエネルギー=熱エネルギー
・エントロピーは全体を考えないといけない。熱いお湯が冷めて水になるとき、コップと水以外に、周りの外気も想定する。熱は高い方から低い方にいくので、冷たい外気にお湯の熱が動いた。少しだけ周りも熱くなるはずだが、周りは大きすぎて見た目上は温度は変化しない。
・ただ、全体のエントロピーを増大させるのはエネルギーの質の低下だけではない。インクを水に垂らすと広がる、芳香剤が部屋全体に広がるのもエントロピーの増大。
→つまり「物質の存在空間の拡大」もエントロピーを増大させる 秩序→曖昧(乱雑)さ の変化
・「エネルギーの質」「物質の存在空間の拡大」をまとめて扱えるところがエントロピーのすごいところ
・すべての変化は自然に起こる=エントロピーが増大
・錆びる、燃える、腐る、痛む→すべて酸素と反応している。腐る→カビや微生物が酸素を使い熱を出している
・温度が変わると 固体→液体→気体 と物質は広がりたくなる。エントロピーは増大
・塩が水に溶けるとき(塩化ナトリウムが塩化物イオンとナトリウムイオンに分かれる)など化学反応で熱を吸収する場合(吸熱変化)、エントロピーは減少。熱エネルギー→化学エネルギーにエネルギーの質が良化。しかし物質の存在空間の拡大の方が上回るので、結果的にエントロピーは増大。ただしすべての溶けるケースが物質エントロピーの増大では説明できない。リン酸カルシウムや塩化カルシウムの場合など。
・生命のエコシステムも全体で見れば、太陽光エネルギー→環境温度の熱エネルギーに変換しているだけ
・エネルギーがなくなる=質の良い、エントロピーの低いエネルギーがなくなる
・石油・石炭は太古の生物が元になっているとされる。植物は太陽光からエネルギーを得ている。ということは、2、3億年前の太陽光エネルギーの恩恵をいま我々が受けているということ(これは面白い)。低いエントロピーのため良いエネルギー。しかしこれをかなり速いスピードで使ってしまっている。
・再生可能エネルギー 風車があろうがなかろうが風の運動エネルギーは変わらない。自然に起こることのエネルギーを人間がお裾分けしてもらってるだけ。地球全体ではエントロピーは増え続けるが、夜に熱を宇宙空間に放射することでエントロピーを減少させている。
・この世のものは基本的にトビトビ、量子。エネルギーも量子化される。
・気体中の原子はいろんな速さで動いている。その速度の分布まとまると、マックスウェル・ボルツマン分布というグラフができる。前半にピークが早めに来て急に下がったあとはなだらかに下っていくグラフ。状態の数の分布と運動エネルギーの数の分布のかけ算。グラフはつながっているように見えるが、じつはとびとび。速さのグラフとエネルギー分布のグラフに分けると、前者は右肩上がりにまっすぐ上がるグラフ。後者は最初のピークからガッと下がる指数関数グラフ。後者をボルツマン分布と呼ぶ。これがエントロピー増大に関わる。
・ボルツマン分布の線もじつはとびとびの棒グラフのつながりとも読める。分子は動き回るがこの分布に沿うように動く。世帯ごとの貯金額などもボルツマン分布になる(面白い)。分子や1円などのようにとびとびの単位を配布する点では同じため。
・エントロピーが増大するのは含まれる原子がボルツマン分布を取ろうとするため。ボルツマン分布を取ろうとするのは、「他の分布よりもとりえる配分の仕方の数が多いから」。一定のエネルギー量を、なるべく多い粒子に分けようとすると、ボルツマン分布になる。均一に配分しようとすると、配分の仕方は少なくなる。ただ、なぜそれを自然が選ぶかは分からない。
・温度が高いところから低いところに移動するのは、低温に移動したほうが粒子のとりうる配分の仕方が多くなるから。
・体積が増える方向に行くのも同様。存在空間が拡大したほうが、とりうる粒子の配分方法が増えるから。
・統計学的な理屈が、エントロピーの増大、つまり自然に起こりうる変化の背景にはある。