LtVPickUp~How a deep-ocean desalination startup hopes to rewrite California's water future_20260702
#Ecosystem_Building #Script #PickUp
▼ケース記事
https://www.aol.com/news/deep-ocean-desalination-startup-hopes-100000378.html
▼記事の要約
米国カリフォルニア発のクリーンテック・スタートアップOceanWellは、深海の巨大な水圧を活用した革新的な海水淡水化技術の開発を進めている。
従来の沿岸型淡水化プラントは、大量の電力を消費するだけでなく、濃縮塩水の排出や海洋生物の吸い込みといった環境負荷が大きな課題となっていた。一方、OceanWellは水深約420メートルの深海にポッド型の逆浸透膜フィルターを設置し、深海に存在する自然の水圧をそのまま利用して淡水化を行う。
この方式により、従来の淡水化システムと比較して消費電力を最大40%削減できるほか、環境負荷も大幅に抑えられる可能性がある。すでに地域水道局であるLas Virgenes Municipal Water District(LVMWD)との共同実証実験に成功しており、年内には実海域でのテストを予定している。
将来的には、マリブ沖に総額5億〜10億ドルを投じて数十基のポッドを配置し、日量6,000万ガロン、約40万人分に相当する飲料水の供給を目指している。気候変動による深刻な干ばつに直面するカリフォルニアにおいて、新たな水源として大きな期待を集めている。
▼会社概要
OceanWell
設立:2019年
本社:米国カリフォルニア州
創業者:Robert Bergstrom、Charlie McGarraugh、Michael Porter, Ph. D.
事業内容:自然な深海水圧を利用した潜水型逆浸透膜による次世代海水淡水化システムの開発および運用
累計調達額:累計約1500万ドル
https://www.oceanwellwater.com/about-us
https://www.linkedin.com/company/ocean-well-water
https://app.dealroom.co/companies/natural_ocean_well
初期仮説(個人的にはこういう点が起業家にとっても価値だと思うので深掘りたいッス、な論点)
インフラスタートアップにおいて、起業家が最初に直面する最大の壁は、技術開発そのものよりも、主要顧客である公共機関をいかに巻き込み、保守的な規制を突破するかにある。
そのためには、創業初期から公共機関をエコシステムの一員として取り込み、規制当局が納得できる実証データを共に積み上げていく必要がある。
つまり、インフラスタートアップの起業家に求められるのは、優れたインフラを開発する技術力だけではない。強力なステークホルダーを巻き込むマネジメント力や、大規模プロジェクトを成立させるためのファイナンス設計力こそが重要な競争力になるのではないかと考えられる。
▼事前リサーチ by ずー
Q. カリフォルニア当局はなぜ海水に注目した?
カリフォルニア州が海水淡水化に注目する背景には、気候変動による深刻な水不足がある。これまで主要な水源であった河川やデルタ地帯からの供給は年々不安定化しており、実際に2022年には州内各地で厳しい節水措置が実施された。そのため、干ばつの影響を受けない安定的な水源として、事実上無限である海水の活用が重要視されている。
https://water.ca.gov/Programs/Water-Use-And-Efficiency/Recycling-Desalination-Stormwater-and-Graywater
https://www.latimes.com/california/story/2022-05-14/life-in-a-wealthy-water-district-amid-a-drought-what-about-my-koi-pond
https://opc.ca.gov/desal/
Q. OceanWellの今までの資金調達状況は?どんなプレイヤーが参加している?
OceanWellはこれまでに累計約1,500万ドルを調達している。
まずシードラウンドでエンジェル投資家から約400万ドルを調達し、その後シリーズAで約1,100万ドルを追加調達した。
シリーズAをリードしたのは日本の水インフラ大手クボタであり、そのほかにも海運・物流インフラ分野に強みを持つJon Hemingway氏のファミリーオフィスや、元ゴールドマン・サックスのコモディティ部門責任者であるCharlie McGarraugh氏など、インフラ領域に深い知見を持つ投資家が参加している。
https://www.prnewswire.com/news-releases/oceanwell-secures-11-million-in-series-a-to-build-deep-sea-water-farms-and-supply-abundant-fresh-water-302311679.html
https://www.kubota.com/news/2024/20241120.html
Q. クボタがシリーズAで出資したバックグランドは?
クボタは100年以上の歴史を持つ世界有数の水インフラ企業であり、水処理設備や高圧パイプ分野で高い競争力を有している。
クボタがアーリーステージで出資した背景には、世界的な水不足を見据え、革新的な淡水化技術を早期に取り込む狙いがあったと考えられる。
今後、日本を含むアジア各国ではインフラ老朽化や水不足への対応が大きな課題となる。OceanWellの潜水型逆浸透膜システムが商業化された場合、クボタが持つ配管技術や水処理設備の製造能力と組み合わせることで、次世代の水インフラ市場で優位なポジションを築ける可能性がある。
https://www.kubota.co.jp/corporate/business/water/index.html
https://www.kubota.com/news/2024/20241120.html
https://www.worldbank.org/ext/en/topic/water
Q. OceanWellが開発した淡水化システムを長期的に維持管理するにはどういうコストや技術的なハードルが考えられるか?どういった解決法がある?
水深1,400フィート(約420メートル)の深海は、台風や高波などの影響を受けにくい一方で、フィルターの目詰まりや設備故障が発生した際の保守作業が極めて困難である。そのため、メンテナンスコストが大きな課題となる。
OceanWellはこの課題に対し、設備を独立したモジュール型ポッドとして設計することで対応している。それらに関しては初期実証実験も行われている。
また特定のポッドに不具合が発生した場合でも、システム全体を停止することなく、該当ポッドのみを海上へ引き上げて修理・交換できる。その結果、運用停止時間を最小限に抑えながら、保守コストの削減も期待できる。
https://www.oceanwellwater.com/lifesafe
https://www.oceanwellwater.com/water-farms
https://www.oceanwellwater.com/pilot-test
Q. カルフォルニアの水道コストはどういうふうになっているのか?OceanWellの推定コストは、現時点使用されている水源に対して競争力があるのか?
カリフォルニア州の水コストは、水源によって大きく異なる。
デルタ地帯などから取水する従来型の水源は、1エーカーフィート当たり数百ドル程度と比較的安価である。一方、既存の地上型海水淡水化プラントでは、同量当たり約2,500〜3,000ドル以上のコストがかかる。
OceanWellの推定コストは本記事にもあった通り、1エーカーフィート当たり約2,000〜3,000ドルとされており、通常時の既存水源と比較すると価格競争力は高くない。しかし、地上型淡水化プラントと比較すれば十分に競争可能な水準にある。
また、2022年には、一部地域で最大40%規模の利用制限が実施されたような深刻な干ばつリスクを考慮すると、天候に左右されず安定供給できる「確実な水源」という価値は極めて大きい。そのため、水道当局やインフラ事業者にとっては、「干ばつ時にも安定供給できる」というレジリエンスの価値が、単純なコスト比較を超える競争力につながる可能性がある。
https://water.ca.gov/programs/california-water-plan
https://www.poseidonwater.com/
https://www.waterboards.ca.gov/water_issues/programs/conservation_portal/
https://water.ca.gov/Programs/Water-Use-And-Efficiency/Recycling-Desalination-Stormwater-and-Graywater
▼結論
結論(リサーチの結果、個人的にはやっぱりこういう点が起業家にとっても価値だと思うッス、な論点)
本記事を通して改めて感じたのは、先進国におけるインフラスタートアップの競争優位は、単なる技術革新だけでは生まれないということである。
特に水道やエネルギーのような社会インフラ領域では、最終的な顧客や許認可顕現を持つのは公共機関であり、技術が優れているだけでは事業は前に進まない。重要なのは、早い段階から自治体や規制当局を巻き込み、実証実験を通して信頼を積み上げながら、規制や社会実装のハードルを一つずつ乗り越えていくことである。
OceanWellが水道当局と共同で実証実験を進めているのも、まさにそのためである。彼らが構築しているのは単なる淡水化技術ではなく、公共機関や投資家などのプレイヤーを含めたエコシステムそのものである。同様に、インフラスタートアップの企業に求められるのも、優れた技術者としての能力だけではなく、複雑な利害関係者を束ねるマネジメント力、そして長期間にわたる大規模のプロジェクトを成立させるファイナンス設計力である。それらこそが、事業成功の鍵となる。