オリエンタリズム(サイード)
オリエンタリズムという語は、エドワード・サイードが1978年に発表した著書『オリエンタリズム』の影響によって、従来の東方趣味、東方研究という以外の語義を帯びるようになった。彼はこの著書で、そもそもオリエントやオリエンタリズムとは西洋人が一方的につくり上げた概念であるとして、その概念自体を批判した。
18世紀以来西洋人は東方世界に旺盛(おうせい)な興味を抱き、軍事的、商業的、芸術的、学術的とさまざまな目的でオリエントと交渉をもち、その結果膨大な文献が生み出された。サイードによれば、1800年から1950年までにヨーロッパで近東を扱った書物は6万冊に上り、体系的なオリエント学が成立したのである。それらの全体をサイードは、ミシェル・フーコーfoucaultにならってディスクール(言説)としてとらえる。サイードはこの言説としてのオリエントを綿密に検討し、分析して、「オリエンタリズムは西洋の東洋に対する文化的支配の様式であり、したがってそれはヨーロッパ人の自民族中心主義(エスノセントリズム)の所産にほかならない」ということを、つぶさに、執拗(しつよう)に論証するのである。