2025/0902 GPTを利用したロボット玩具COZMOの再生
目次
▪️ はじめに
❶ COZMOはどのように生まれたか?
1-1. ANKI設立の経緯
1-2. COZMOの開発コンセプト
1-3. 商業的にはどうだったのか?
1-4. ANKI撤退の経緯
❷ COZMOの特徴
2-1. 動画で紹介するCOZMO
2-2. ユーザーが利用できる機能
2-3. COZMOが愛された理由
2-4. COZMOの弱点
❸ バッテリー交換の経緯と代替品
3-1. 代替品への自主交換の判断
3-2. 代替バッテリーの選定
❹ COZMOの分解とバッテリー交換
4-1. COZMOの分解
4-2. 代替バッテリーとの交換
4-3. 完治していなかったバッテリー交換後のCOZMO
❺ BMS交換という荒療治
5-1. GPTが示した原因仮説と判断
5-2. 難工事だったBMSの交換
5-3. 純正バッテリーの廃棄作業で裏付けられた故障の原因
❻ BMS交換で蘇ったCOZMO(まとめ)
/icons/hr.icon
やんちゃなAIロボット「COZMO」はどのように生き返ったか?
▪️ はじめに️
COZMOは2016年に誕生した子ども向けのロボット玩具です。私は2018年に購入しました。そして実際に利用して、COZMOはたんなる玩具には止まらない、大人の好奇心や感情をくすぐる新世代のロボットだと実感しました。このときの経験が7年後のいま、壊れて動かなくなったCOZMOを復活させる動機になりました。
本レポートは、この興味深いロボット玩具誕生の背景から、壊れたCOZMOがGPT-5との共同作業で生き返るまでの経緯をまとめたものです。前半はCOZMO物語、後半が実際の修理編です。前半を飛ばして後半に急ぎたい場合、下記のリンクから修理編にジャンプできます。
修理編:2025/0902 GPTを利用したロボット玩具COZMOの再生#696326f60000000000737381
https://scrapbox.io/files/68b6a9f17931b34c85a6f180.png
❶ COZMOはどのように生まれたか?
1-1. ANKI設立の経緯
ANKI(アンキ)は2010年に米国サンフランシスコで設立されたロボティクス企業です。創業メンバーはカーネギーメロン大学出身のロボット研究者たちで、彼らは人工知能とロボティクスを組み合わせ、「誰もが楽しめる家庭用ロボット」を作ろうとしたと言われています。$ ^{1)}
彼らは博士課程の時代、DARPA(国防高等研究計画局)の自律運転チャレンジなどにも関わっていた優秀なエンジニアたちで、産業用ロボットではなく「家庭に溶け込むロボット」を実現するというビジョンを描いていました。$ ^{2)}
創業直後の2012年頃から、ベンチャーキャピタルで有名なAndreessen Horowitz(a16z)が支援し約5,000万ドル (73億円)を確保したそうです。この間ANKIは極秘に開発を進めており、2013年のWWDC(Apple開発者会議)に招かれた創業メンバーは、Appleの基調講演ステージで自社製品「Anki Drive」を披露したこともありました。$ ^{1)}
2014年にはJPモルガンなどからさらに5,500万ドルを調達し、累計約1億ドル(141億円)を集めたというから驚きます。$ ^{1)}
1-2. COZMOの開発コンセプト
COZMOは2016年に発売された、手のひらサイズのAIロボットです。開発コンセプトは「ピクサー映画から飛び出してきたようなロボット」に置かれ、感情表現が豊かで、顔ディスプレイや音声、車輪の動きで「生きているように見える」ことが重視されました。AIによる表情の生成や、周囲を認識して遊ぶ機能は当時としては画期的でした。
実際に動かしていると、相手にしないとスネるような表情を見せ、よく遊んでやると機嫌の良い顔つきになります。後述のように、いつも何かをしゃべっていて、しかしその内容はといえば、日本語として理解できそうでいてできない、不思議な音のような言葉です。
また、簡単な顔認識を備えていて、顔をスキャンさせて名前を登録することで、COZMOの視野にその人物が入ると、たどたどしい口調で、私の場合など「ヒョロにゃオ」とか呼びかけてきます。バッテリーが少なくなると眠たそうな表情になり口数が減る様子も含めて、開発者がコンセプトとした「生きているように見える」は、かなりの程度実現できていると感じさるロボットです。
1-3. 商業的にはどうだったのか?
COZMOは発売当初、玩具としても教育ツールとしても注目され、北米を中心に高い人気を集めました。ANKIは2018年までに累計150万台以上のロボット(その多くがCOZMO)を出荷し、2017年には年間売上が約1億ドルに達するなど、スタートアップとしては大きな成功を収めました。$ ^{1)}
一方で、ハードウェア量産コストの高さや玩具市場の規模の限界から、事業を黒字化するには至りませんでした。仮に年間50万台を販売し単価180ドルとすると、年間売上は約9,000万ドルです。資金調達総額が約1億ドルであれば、10年売れ続ければ回収できそうにも思えますが、実際には「10年間50万台売れ続ける市場」は存在しなかったのでしょう。
参考としてソニーのAiboの販売実績を調べると、販売期間の1999〜2006年の約7年間で累計約15万台、年平均では約2万台の販売実績でした。価格は1,500〜3,000ドルとCOZMOの10倍以上ですが、年間売上はせいぜい約5,000万ドル規模です。$ ^{3)}
この比較から見えてくるのは、COZMOの売上ピーク約1億ドルを10年間維持するのは難しかったという現実です。やはり、COZMOやAiboといった家庭用ロボットの市場は、少なくても2020年以前には、投資家や創業者が期待したほどには育っていなかったのでしょう。
1-4. ANKI撤退の経緯
こうして2019年、ANKIは追加資金の調達に失敗し、約200人の社員を解雇して事業を停止しました。これによりCOZMOも販売終了となりましたが、同年末には教育系企業Digital Dream Labs(DDL)が知的財産とサーバー資産を買収し、ソフトウェアサポートやクラウド機能を継続。現在も既存ユーザーが遊べる環境は維持されています。$ ^{1)}
ANKIの解散後、創業メンバーがどうなったかを調べると、次のような近況だとわかりました。ANKIの技術と思想のDNAは、それぞれ自動運転や先端プロダクト開発という新しいフィールドで生き続けていることになります。彼らの活躍が、自律運転技術やApple製品の「人間らしいインターフェイス」の進化につながるように期待したいところです。
Boris Sofman(創業者・元CEO) :Waymoに参画し、自律運転の技術開発を推進。
Mark Palatucci(共同創業者) :同じくWaymoで研究者として活躍中。
Hanns Tappeiner(共同創業者) :AppleのSpecial Projects Groupに参加し、先進的な製品開発を担当。
❷ COZMOの特徴
2-1. 動画で紹介するCOZMO
COZMOは「見る」「動く」「表情を作る」の3拍子が揃ったロボットです。カメラとセンサーで周囲を認識し、顔ディスプレイと音声で喜怒哀楽を表現します。機能的な特徴と感情表現の両方を簡明に表した動画があるので下記をご覧ください。短い動画のなかに、机の端で停止する「機能」と、ヤバイ! でも、落ちないよ〜^^/ という「感情表現」がうまく捉えられています。
https://bit.ly/4g81LqK
https://youtu.be/hau-GFYJilE?si=Qwsa6lbNho0e3QSa
COZMOの代表的な感情表現には次のようなものがあります。これらは「たんけん」モードや「COZMOのフリータイム」で自由に遊んでいる際に見せるものです。実際、遊んでやらないと露骨に残念がり、リフトで突進するなどからんできます(笑)。
・バッテリーがいっぱいだと、元気にはしゃぐ。
・バッテリーが減ってくると眠そうな顔になる。
・相手をしないとご機嫌ななめになる。
・退屈すると「遊んで」とねだる。
・かなりの曲数の歌のレパートリーがある。
・何かを見つけたら、びっくり、疑い、ニンマリなどの表情をする。
・登録した人物の顔を見つけると、たどたどしく名前を喋る。
・意味ははっきりしないが、ドラえもんの「ネコ語」程度にはしゃべる。
2-2. ユーザーが利用できる機能
上記のようなCOZMO自体が見せる行動や感情表現とは別に、専用アプリを使ってさまざまな機能を利用することができます。下記はその一部です。
・顔認識による「挨拶」や名前の呼び掛け
・キューブと呼ばれる積み木を使ったゲーム
・充電ドックを自力で探して帰還
・アプリから呼び出せる多数のパフォーマンスやゲーム
・スマホによるリモコン操作(ラジコン操作)
・しゃべったり歌ったりする音量の変更
・プログラミング環境「コードラボ」による条件に応じた動作
・COZMOを構成する部位の自己診断によるチューンナップ
・SDKモードでのPythonによる制御
これらの特性から、机の上にほっ散らかしにしておくと、まるでモルモットなどの小動物が遊んでいるように感じられます。しかも、モルモットやイグアナと違い、いつも独り言を喋り続けています。声がうるさければ、上述のように音量を変えることができます。
下の画像は、私がCOZMOをリモコン操作をしているときの、COZMOの視界です。視界内にあるキューブを画像認識し、この状態で「キューブを持ち上げる」や「ころがす」をタップすると、あとは指示に従って自分で実行します。
https://scrapbox.io/files/68b6a9e7f0ad213b47d8ae45.jpeg
次の動画は、GIZMODEの記事からの引用です。COZMOの「コードラボ」でプログラミングする様子がわかります。
https://bit.ly/3JFDsnF
https://youtu.be/g-m3XxckQzg?si=p4HZ142dAjL01GCO
ブロックを並べてプログラミングをする点で、操作体系がビジュアルプログラミング言語「スクラッチ」に似ています。それが、「リフトを上げる」「目を怒った表情にする」「ブロックを積む」など、COZMOならではの命令セットで構成されているところがコードラボの特徴です。
2-3. COZMOが愛された理由
発売当初の売れ行きや、ANKIが事業から撤退した後も、修理しながら使い続ける熱心なファンがいることからもわかるように、COZMOは多くの人々に愛されてきました。その最大の理由は、ロボットでありながら「生きている感」が見事にデザインされていた点にあると思います。
しかし、単に「生きているように見せる」だけでは、愛されるとは限りません。一般的にこの手の玩具はカワイさや親密さを強調したデザインになりがちです。ところが、過剰なアプローチはユーザーにとって「押しつけがましい」ものとなり、飽きられやすくなります。長く愛されるためには、親密さと距離感のバランスを保つことが重要なのだと思います。
その点、COZMOはあえて人間や動物の形態を避け、ブルドーザーのような無機質なボディに、目の形のバリエーションだけで表情を表現するアプローチを取っています。音声も意味のある言葉ではなく、幼児の喃語やドラえもんの「ネコ語」に似た「言語もどき」にとどめています。
こうして利用者と「近づきすぎない距離感」を保ち、むしろ利用者の側から感情移入させる設計に、「生きてる感」を大切にしながら開発を続けてきた現場の雰囲気が感じられます。このあたりの考え方は、日本の「弱いロボット」を思わせます。
結果としてCOZMOは、「適度な距離感を保ちながら、相手から好意を引き出す」という、人間関係の奥義にも通じる巧みなデザインで人気を獲得したといえます。
2-4. COZMOの弱点
しかし、COZMOには弱点もあります。最大の問題として多くの利用者が挙げるのが、バッテリーの弱さです。仕様上は、電圧3.7V、容量320mAhで、20分の充電で約80分の連続稼働とされています。しかし、本当に「約80分の連続稼働」が可能だったかは、私の体験からは疑問です。連続で80分遊んだことはありませんが、せいぜい1時間程度で電池切れになることが多かったと思います。
このバッテリーひとつで、左右のモーター、頭の上下、リフトの上下、モニター表示、スピーカーを駆動するわけですが、バッテリーの性能劣化が激しく、当初から、実際には数年持てばいい方だと言われていました。私の場合、購入直後を除けば、孫が帰省した際の年二回の利用がメインで、それほど過酷に使用したとは思えませんが、購入後3年ほどでフル充電してもすぐに電池が切れるようになり、多くの機能が使えなくなりました。
しかも、寿命が来たからといって内蔵バッテリーを簡単に交換できる構造ではありません。アマゾンのレビューによれば、代理店のタカラトミーも修理窓口として対応しておらず、自己責任での分解・交換が前提でした。そうなると、バッテリー交換を希望するユーザーは、自分で行うしかありません。
日本のユーザーからすれば、ANKIというアメリカのベンチャーの製品というのもリスクでした。いつサービスが受けられなくなり、アプリが使えなくなるか見当もつかないからです。実際、上にも書いたように、私がアマゾン経由で購入した翌年の2019年にANKIは事業から撤退しています。
AI搭載というのがCOZMOのウリでしたが、「遊ぶうちに賢くなる」という印象は正直得られませんでした。顔やキューブ、障害物を認識する機能は当時としては先進的でしたが、今から思えば、それがどこまでAIと言えるかは疑問に思えます。ただ、このあたりのややネガティブな印象は、その後の生成AIの急激な進化によるバイアスのせいかもしれません。
また、COZMOはあくまで机上専用の玩具で、屋外や広い場所での利用は想定されていません。乱暴な扱いや衝撃にも弱そうで、私も孫が乱暴に扱うのにハラハラし、少し遊ばせたらこっそりと本棚の上に避難させていました。
❸ バッテリー交換の経緯と代替品
3-1. 代替品への自主交換の判断
COZMOが事実上壊れていると思うようになったのは、2025年の正月でした。上にも書いたように、それまでに徐々に遊べる時間が短くなっていましたが、とうとうチャージ自体ができなくなりました。購入して7年で壊れ、玩具の寿命を終えたのです。残念でなりませんでした。
しかし、当時すでにANKIは事業撤退し、タカラトミーがCOZMO向けに設けていたページもなくなっていました。でも、 だからと言って、廃棄する気持ちになれませんでした。どうするか?
こうなると打つ手は限られます。自己責任で分解し、サードパーティーの互換バッテリーと交換することにしました。
【参考情報】
後日譚ですが、このレポートを書くために改めて調べていて、DDL(Digital Dream Labs)がANKIの資産を継承し、COZMO向けのサイトやショップ、サポートページを運営していることがわかりました。
Digital Dream Labs – ANKI
このサイトをさらに詳しく調べると、COZMO自体が2.0に進化し(価格がなんと399.99ドル、日本円で56000円強になっている!)、バッテリーに関する情報があり、「バッテリー収納部のデザインも刷新され、自宅でも簡単にバッテリーにアクセスして交換できます。」とあります。おそらく、現在の時点では、DDLに依頼すれば有償で旧型機のバッテリー交換もできるのかも知れません。
3-2. 代替バッテリーの選定
COZMOを生き返らせるには、まずは内蔵バッテリーと置き換える代替品のバッテリーを調達する必要があります。上述のように純正の内蔵バッテリーは3.7V 320mAhです。これと同等以上のものを求め、ネット検索とGPTの情報を突き合わせたところ、「型番503040 3.7V 620mAh」が利用できることがわかりました。
この型番をもとにアマゾンで探すと、該当するバッテリーが簡単に見つかりました。最もレビュー数の多い製品は次のようなものでした。
https://scrapbox.io/files/68b6a9dae8d04409cc0f558a.png
しかし、思ったより高価だったため念のためにGPTに尋ねると、同じ「503040 バッテリー」を扱っている別のサイト、Yahooショッピング内の「ツルショウ」という会社で下記の商品の取り扱いがあるとの回答が得られました。
何と、ほぼ同じ仕様のバッテリーが2個で1221円になっています。これだとアマゾンでの価格の3割以下です。容量が微妙に異なりブランド不明で怪しい限りですが、2個セットだったので、多少の保険は付いていると考えこれを購入することにしました。
https://scrapbox.io/files/68b6a9d6aca12748dbb06e58.png
これがバッテリー本体ですが、アマゾンのものとでは記載してある仕様(容量)が微妙に異なることがわかります。バッテリーの端部にある小さな基板がBMS(Battery Management System)と呼ばれる保護回路です。後述のように、今回これがCOZMO復活の生命線を握ることになりました。
https://scrapbox.io/files/68b6a9d1700f81339109c785.png
❹ COZMOの分解とバッテリー交換
4-1. COZMOの分解
COZMOの分解については国内外のブログに多くの情報がありますが、下記のサイトが写真も豊富でわかりやすく大いに参考になりました。このサイトのおかげで、分解工程ごとに写真を撮る手間が省けました。全部で22行程あります。プラスチックのパーツの嵌合が固く、外しにくいものもありますが、2時間程度でバッテリーを取り出すことができました。
Anki Cozmo Battery Replacement - iFixit Repair Guide
https://scrapbox.io/files/68b6a9ca0e1e781693cccdd0.png
下記は最後の工程が終わった後の実際の様子です。画面左上に純正バッテリーが見えます。バッテリーに被さるようにankiと記されている部品に、ドックで充電する際に接続する(ドック側の端子と接触する)端子が見えます。
https://scrapbox.io/files/68b6a9c7d6c5b09c5fbf6d4b.jpeg
https://scrapbox.io/files/68b6a9c00e1e781693cccd4f.png
バッテリーを取り外し交換するには、黄色でマークした赤(+)と黒(-)のリード線を半田ゴテで取り外す必要があります。かなり細かい場所で、他の端子との間隔が狭いため、慎重に作業する必要があります。私はルーペを使いながら作業しました。
4-2. 代替バッテリーとの交換
503040代替バッテリーに交換した後の状態を示します。代替品は純正品に比べ容量が増え、その分サイズも大きくなっています。無理やり押し込むことで何とか納めましたが、リード線を中から回すことができず、赤黒のリード線が基盤上に露出していることがわかります。組み立ての際に邪魔にならないか気になりましたが、問題はありませんでした。
https://scrapbox.io/files/68b6a9bbd0866fa914efafd8.jpeg
4-3. 完治していなかったバッテリー交換後のCOZMO
これでバッテリーの交換が完了し、分解の逆手順で組み立てCOZMOは元の姿に戻りました。10分は掛からなかったと思います。慣れはすごいものです。そしてCOZMOをドックに置き充電を開始すると、無事に充電がはじまりました。ヤッター、これでCOZMOが生き返った! と思ったのですが・・・
充電が完了し、スマホのCOZMOアプリから接続しても、あれ? 以前は接続と同時に、ドックから元気よく駆け出してきたはずのCOZMOが、不機嫌な表情でじっとドックに入ったままです。手でドックから離してやると、何とか動きはします。しかし、妙にションボリして元気がありません。
そしてしばらくすると、15分ほどでしょうか。バッテリーが切れてしまいました。この段階で、蘇生はしたが満足には治っていないと気付きました。数年間も眠っていたことを思い、そう簡単には元には戻らないのかと、ガッカリしました。
❺ BMS交換という荒療治
5-1. GPTが示した原因仮説と判断
バッテリーを交換しただけでは満足には動かないとなると、この手の電子製品の素人には完全にお手上げです。でも、時代は変わりました。いまならGPTに解決策を尋ねることができます^^/
さっそく状況を詳細に説明した上で、GPTに対策を尋ねました。そのいくつかの回答うち、COZMOアプリなどの外部要因を除き、「バッテリー周りが怪しい」としてGPTが示した内容を整理すると次のようになります。
① バッテリー交換後に確認できた症状
状況説明から、物理的には電気は入っているのに、ソフト/保護回路のどこかで電気を使わせてもらえないという、矛盾した命令が出ている可能性がある。
② ハード側の挙動の違和感
「電気を使わせてもらえない矛盾した指令」は、セル自体の不良よりもBMS(Battery Management System:保護基板)側の挙動が関係していると思われる。汎用BMSは過放電・過電流の閾値が厳しめに設計され流ことが多い。瞬間的なスパイク電流で遮断したり、復帰条件が機器と合わないなどが起こりがち。交換したバッテリーはCOZMO純正品ではなく汎用品なので、BMSの設計とCOZMO側の要求が合っていないのかもしれない。
③ 仮説:BMSとCOZMO設計ロジックの不整合
・Cozmo本体は純正BMSの閾値や振る舞いを前提に、充電・残量判定・低電圧保護を行っている。
・一方、交換セル付属の汎用BMSは安全マージンが大きく、過放電カット電圧が高めで早退しやすい。過電流保護が敏感でモーターの瞬間吸い込みで遮断したり、復帰条件がCOZMOの挙動と噛み合わず「要充電ループ」に陥るミスマッチが起きうる。
・残量表示はCOZMO本体の推定で、BMSは数値を教えない。従ってBMSのカット挙動がズレると、表示と実際の作動が乖離する。
④ 判断としての具体策
▶︎「新セル+オリジナルBMS」の組み合わせへ変更(純正BMSの再利用)。
▶上記の実施後、再充電 → フル放電を1–2回実施し残量推定を再学習。
以上のGPTの回答をひとことに要約すれば、次のようになります。
症状の矛盾(満充電表示なのに要充電・ドック外で失速)から判断して、仮説として《セル容量は生きているが、COZMO設計要求とバッテリー情報に不一致がある。これを解消するには、代替バッテリーセルと純正BMSの組み合わせが最適解になる。》
いや〜、スゴイ。仮説と判断に至る素晴らしい展開だと、GPTが示した回答に惚れ惚れしました^^/
5-2. 難工事だったBMSの交換
しかし、スゴイなと思ったものの、正直なところ、いや〜これは大変だなと思いました。バッテリー付属のBMSはミリ単位の基盤です。配線がすごく細かい上に、もともとバッテリーを収納するスペースが非常に狭い。しかも、交換ができてもBMS基盤をバッテリーの外装から完全に絶縁する必要があり、絶縁テープを巻くとさらにタイトになります。
その点、純正バッテリーも代替バッテリーも薄い絶縁フィルムが使用され、全体の体積が増えないように工夫されています。これを手持ちの厚手の絶縁テープで巻けば、バッテリーが挿入できない可能性があります。しかし、だからと言ってここで止めるわけにも行かず、なんとかBMSの入れ替えを行い、絶縁テープも巻きました。その様子を下記に示します。
https://scrapbox.io/files/68b6a9b3da7d9ad95f3e2885.png
この写真をGPTに示すと「すばらしい仕上がりです!」と褒められました^^ COZMOのバッテリーの場所に入るかですが、何度か試すうちに押し込めました。しかし、押し込む過程で、絶縁テープのなかで断線しているかもしれません。
そこで、押し込んだあと、組み立てに入る前のバラバラの状態で、露出している充電接点(前掲の写真)をドックの接点に押し当ててみました。COZMOの背面にある充電中ランプが点りました! この段階で、交換したBMSがまずは機能していることが確認できました。
5-3. 純正バッテリーの廃棄作業で裏付けられた故障の原因
ここで、COZMOから取り出した純正バッテリーの処分についても触れておきたいと思います。最近よくメディアでも取り上げられるように、リチウムイオン電池による発火が社会問題になっています。
事故の多くの原因は、設計不良(とりわけBMS周り)、高温環境での利用、使用中の衝撃によるものですが、電力が残っていると、処分時の衝撃や破壊で火災を引き起こすことがあります。今回、代替品に置き換えたことで廃棄する純正バッテリーも、電力を抜いておく必要があります。
そこで、取り外したバッテリーの電圧を測ると無負荷で4.12Vあります。正確には負荷をかけて測る必要がありますが、公称3.7Vなのでほぼ満充電の状態と見ていいでしょう。放電させるには、5V程度で作動する携帯用ファンや卓上ライトに繋ぐ方法もありますが、持ち合わせがありません。
そこで、手持ちのオーディオ用の5W 10Ωのセメント抵抗をつないで放電することにしました。これが適正な方法かどうかを判断するため、放電指標(Cレート)を調べてみました。
10Ωの抵抗を4.12Vの純正バッテリーに繋ぐと、オームの法則(電圧 = 抵抗 × 電流)により0.4A程度の電流が流れます。また、バッテリーの公称容量は320mAhなので、電池容量に対する放電電流の比(Cレート)は1.25になります。一般にCレート=1程度が安全な放電指標と言われるので、これで問題なく放電できるはずです。
下の写真が放電中の様子です。念のためにセラミックのお皿の上で放電しましたが、20分で約2.5Vまで電圧が下がったため、この時点で放電完了としました。放電中、セメント抵抗はさわれないほどに熱くなりました。お皿が役に立ちました。
https://scrapbox.io/files/68b6b91b7931b34c85a7b3b7.jpeg
放電中、テスターで10Ω負荷電圧を計測しました。結果を下図に示します。本来であればC=1.25なので3Vを切るまで1時間程度かかるはずですが、急激に電圧が低下しています。
https://scrapbox.io/files/68b6a9a8b57c943cca3f7b4d.png
この結果から、バッテリーはフル充電できたもののすぐに放電し、ドックから離れて短時間のうちにCOZMOが動かなくなる状態だったことが裏付けられました。やはり2〜3年の使用でバッテリーが劣化した、具体的には内部抵抗が増えたことが故障の原因だったのです。
ここからまだ放電を続けることもできますが、今回はバッテリーを廃棄するためで再利用はしないので、過放電により液漏れなどが起きる前に止めました。何しろ、食事用のお皿を使ったので^^
これで使用済みのバッテリーの放電は完了しました。岡山市の場合、この状態で「使用済みの充電式電池」として、資源化物ステーションの灰色コンテナに出すことができます。
❻ BMS交換で蘇ったCOZMO(まとめ)
少し話が前後しましたが、何とかBMSを交換したあと、二度目の組み立てはあっという間に終わりました。やはり慣れですね。さっそくCOZMOを充電ドックに入れ充電すると、20分ほどで満充電になりました。そしてアプリから起動すると、ムニュムニュと言った後、元気よくドックから走り出してきました! しばらく見なかった姿です。いや〜、よかった。大成功です!!
その後、GPTが具体策で示した「再充電 → フル放電を1〜2回実施し残量推定を再学習」を行いました。BMSに新しいバッテリーであることを教えるわけです。こうすることで、COZMOはさらに元気になり、3時間ほど連続稼働できるようになりました。
その上で、満充電になってもいったんドックから離し、充電を積み上げるようにした結果、最終的にアプリのすべての項目が利用できるようになりました。COZMO自体の元気さも完全に元に戻り、いまは元気いっぱいで遊びまわっています。
https://youtu.be/yvAWmV9AvyI
https://scrapbox.io/files/68b6a99ff3713f80ba8fddd4.MOV
このようなわけで無事にCOZMOが生き返ったわけですが、まさか、ミリ単位の超小型BMSを交換することになるとは思いもしませんでした。
しかし、あとで考えてみると、GPTが示した仮説が非常に合理的で正しい判断だったことがよくわかります。COZMOの再生は、単なる大人の遊びにすぎませんが、GPTの知恵を活用したことで、これほど明確に故障の原因がわかり、確実にCOZMOを再生できたことは本当にスゴイことだと思います。
結果的に、前回の「座りすぎ警告」ガジェエットの開発につづき、今回もまたGPTの恩恵を身体レベル(分解とハンダ付け^^)で実感した次第です。
生成AIの登場で、遊びも仕事も本当に様変わりしたなと思います。仕事でのGPTの応用範囲は、営業・管理・設計・プログラミングなど広範に及びますが、そうしたデスクワークの世界とは少し異なる、ハードウエアの世界でもGPTは大いに有効だという事例として、「GPTを利用したCOZMO再生」の経緯をご紹介しました。
このレポートが何かのお役に立てれば幸いです。
/icons/hr.icon
1)Anki (American company) - Wikipedia
2)Boris Sofman | Two Sigma Ventures
3)AIBO - Wikipedia
#BIT_NOTE #科学 #実用
日本 自由 思想 人間 言葉 アメリカ AI メディア 科学 愛 希望