フェヌロン
フェヌロン(一六五一―一七一五)
司教にして文学者。ルイ十四世の嗣子ブルゴーニュ公の伝育官となり、王子のために書いた教育に関する著書が多数ある。小説では『テレマーク物語』が有名。彼の宗教は同時代のボシュエの如き華かな活動的な総合的なものではなく、神秘的な神との情感的な結合を求め、幸福を謳わず、地獄を怖れぬ静寂主義である。『テレマーク物語』の中でも《民衆を愛せよ》、《王者は自らの光栄を求めて支配するのではなく、民衆の利益のために支配することを忘れるな》と説き、戦争の災禍を叫び《同胞の血を流す》ことを戒めている。これがルイ十四世の勘気にふれ、かつは王子が早世したため、フェヌロンの晩年は淋しいものではあったが、彼の思想は十七世紀への批判であると共に、十八世紀へ通ずる思想でもある。