断片化とアウトライナー
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「断片」という観点からアウトライナーについて考える。
アウトライナーはまさしく、断片化のためのツールであり、断片を扱うツールでもある(この両者が一致しないこともありうる)。
アウトライナーは、ひとまとまりの大きな文章を断片化する。項目一つに全文章をいれられないこともないが、自然な使い方とは言えない。むしろ、一行を一項目とするのが自然な使い方だろう。
これは解体という言い方もできるが、バラバラになってもなお、前後の文脈が維持されていることを考えれば、分節化という表現がふさわしいかもしれない
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一行を独立した一項目として扱うアウトライナーは、断片化を促す。さらにそれが流れの中に位置するので、分節化とも呼べる。アウトライナーの残りの機能はどうだろうか。つまり、項目の移動と階層化である。このどちらも、断片化には寄与しない。これらの機能が寄与するのは、むしろ、断片の扱い(断片の操作)である。つまり、アウトライナーは、断片化を促すUIがあり、断片を操作する機能があると言える。
項目の移動はシンプルでわかりやすい。やることは、字義通りの断片操作である。これがスムーズに行えるほど、断片が持つ情報的自由度は高まると一手いい。重要な要素である。
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アウトライナーのツールとしての1つの特徴は階層化であろう。
トップダウン的に使いやすいが、ボトムアップでも使える。
また、断片化を進めるためにも使えるし、統合化(組織化)を行うためにも使える。
階層化は大きく二つの意義がある。1つは情報をとりまとめ、操作しやすくすること。もう一つは、言葉通り情報を階層的に表現すること。ここには、情報の関係性を視覚的に表現することも含まれる。
Webのパンくずリスト派、階層的表現ではあるものの、視覚的表現としてはやや情報量が落ちている点で差異がある。
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階層化という機能によって、アウトライナーは、断片化から組織化がシームレスにつながる(あるいは1つのツール上で実現できる)ツールとなっている。
また、階層構造を、階層的に表現できることで、私たちの認知の負荷をぐっと減らすこともできる。しかしこれは良いことばかりではない。ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』によれば、認知的な負荷が小さいものほど(流暢性が高いものほど)、私たちは真実らしいと感じやすい。つまり、負荷の小さい階層的表現は、意味的な階層構造との乖離があっても、「それらしく」感じられてしまう、というデメリット(あるいはトラップ)を有している。それが組織化の道のりを阻害することもありうる。
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"すべては断片である"の思想に基づけば、あらゆる断片は何かの回に位置する要素であると共に、自らが上位となり、そのしたに要素を位置させる要素でもある。
その視点では、個々の断片は、可能性的に等価であり、また固定化される見出しを持ちえない。あらゆるアウトラインの状態は、三次元以上の平面描写でしかなく、構造のスナップ写真以上のものではない。あくまで、便宜的な仮留めという言い方をしてもいいだろう。そのアウトラインは、一瞬後にはまるで異なる姿をしている可能性がある。それがアウトライナーというツールが持つ真なる流動性ある。
(この話は、カンタン・メイヤスーの『有限性の後で: 偶然性の必然性についての試論』を彷彿とさせる)
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一般的にアウトライナーは、断片的なものたちに関係性を与える。使われるのは階層的表現だ。その表現は、一つのリニアな流れを持ち、ある断片は、別の断片と上下でのみ接続する(≒関係を持つ)。カードや付箋などが二軸以上の関係性を与えられることに比べるとやや限定的だとは言える。むろん、その限定性がプラスの意義を持ちうるのは言うまでもない。
さて、WorkFlowyというアウトライナーは、タグという機能を有している。このタグ機能は、上下の位置関係とはまた別の形の断片の連帯を作り出すことができる。デジタルならではと言えるだろう。
初出:2017.Apr.18 ~ 25