デジタル時代のポケット一つ原則
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野口悠紀雄は、『「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)』において、書類の置き場所を一カ所に限定する整理の原則を提示した。それが「ポケット一つ原則」だ。書類の散乱を避けるだけでなく、そこを探して見つからないなら持っていない、という探索のエンド・ポイントを設定できるメリットがある。
このポケット一つ原則は、断片を保存するための二つの技術が含まれている。1つは、ワン・ライブラリという技術。これはEvernoteやWorkFlowyへと接続する。もう一つは、規格化による断片のパッケージング。断片を複数まとめておけば、一つのポケットを探索sいやすくなる。
しかし、ポケット一つ原則は、基本的にアナログ情報の整理であり、バージョンアップも必要だろう。
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デジタル情報は、容易にコピーを生成できる。おかげで複数のバックアップを作成も容易である。このような環境で、ポケット一つ原則はどのような位置づけを持ちうるか。
利便性等を考慮すれば、データを複数の場所で管理することは、許容された方が良いだろう。その上で、マスターライブラリ(セントラル・ライブラリ)を作る。何かを探すためのインデックスを集約した場所が、マスターライブラリーであり、そこにデータがあるならば、それ以外の場所に同じデータがあっても気にしないことにする。これで冗長性を保てる。
たとえば、書類をスキャンしたとき、それをGoogleドライブにもアップするが、Evernoteにもアップする。こうしておけば、Evernoteはマスターライブラリで在り続ける
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現代におけるポケット一つ原則は、2つの視点を持ちうる。まず多様なアウトプットを統合し、一カ所でまとめる視点。これはワンライブラリ(マルチポケット)である。
逆に、一つの入り口(ポケット)から、同時に複数の保存先に送信できる、というデジタルツールならではの視点もある。これはマルチポケットの思想と呼ぶことにしよう。
両者によって、私たちが個人で持ちうる情報保存システムは、非常に複雑な形を取りうることになる。それは新しいタイプの利便性をもたらすと共に、新たな困難を生じさせることにもなる。
初出:2017.Jan.05