前位相空間
Pretopological space
位相空間を一般化したもの。位相空間に対して、閉包の閉包が冪等ではないことがある空間。 以下のように閉包作用素$ clが定義された空間
(K1) $ cl(∅)=∅
空集合の閉包は空集合
(K2) $ A⊆cl(A)
任意の集合は自身の閉包に含まれる
(K3) $ cl(A∪B)=cl(A)∪cl(B)
和集合の閉包は閉包の和
位相空間では、さらに以下が満たされている必要がある。 (K4) $ cl(cl(A))=cl(A)
冪等性:閉包の閉包は元の閉包と一致する
位相空間ではなく、前位相空間となる例
$ X=\{1,2,3\} とする。
閉包作用素$ cl を以下のように定義する:
$ cl(∅)=∅
$ cl(\{1\})=\{1,2\}
$ cl(\{2\})=\{2,3\}
$ cl(\{3\})=\{3,1\}
他の集合の閉包は (K3) $ cl(A∪B)=cl(A)∪cl(B) から導かれる:
$ cl(\{1,2\})=cl(\{1\})∪cl(\{2\})=\{1,2\}∪\{2,3\}=\{1,2,3\}
$ cl(\{1,3\})=cl(\{1\})∪cl(\{3\})=\{1,2\}∪\{3,1\}=\{1,2,3\}
$ cl(\{2,3\})=cl(\{2\})∪cl(\{3\})=\{2,3\}∪\{3,1\}=\{1,2,3\}
$ cl(\{1,2,3\})=\{1,2,3\}
この $ (X,cl) は (K1), (K2), (K3) を満たすため、前位相空間である。
しかし、(K4) の冪等性を見てみると:
$ A=\{1\} の場合:
$ cl(\{1\}) = \{1,2\}
$ cl(cl(\{1\}))=cl(\{1,2\})=\{1,2,3\}
よって$ cl(\{1\}) \ne cl(cl(\{1\})) であるため、この空間は位相空間ではない。
閉包作用素がより大きな集合を返してしまうような感じ。