経済学で検討しなければならないであろう事柄について
どのような主体が存在するか?
政府
銀行 (銀行も企業の一つだが、金の貸し借りをするため、経済システムでは特殊な存在となる。)
企業
一般家庭
どのような現象が確認されるか?
中央銀行が貨幣を造る。
これは政治体制に依存するので必ずしもそうならないことはあるが、少なくとも日本では中央銀行である日本銀行が日本銀行券を発行している。
中央銀行の貨幣の供給方法は多岐に渡る。
銀行への貸し出し
金融商品の購入
中央銀行が市場に介入することになるため、可能な限り中立的な買い方しかできない。
単独株は買えずインデックス型のETFを買うなど。
銀行の貨幣の調達手段は多岐に渡る。
預金
中央銀行からの借り入れ
金融商品の販売
政府の貨幣の調達手段(通貨発行できるのに貨幣の調達の必要性はあるのか?という疑問は別として)
徴税
政府は、政策に基づき、何らかに対して税率を決定し徴税することができる。
国債の発行
サービス料金の徴収
貨幣で取り引きされたのか、貨幣と同価値のもの(債権など)で取り引きされたのかは区別が付かない。
プリペイドカード、クレジットカードでの取り引きを見れば分かる。プリペイドカードは前払い、クレジットカードは後払いになっている。これは貨幣そのものではなく同価値の債権である。
会社から給料が銀行口座に支払われ、それを銀行引き落とし、クレジットカードで使うのであれば、個人が貨幣を直接使うことはなくなってしまう。
このため、単純な、中央銀行の貨幣発行量、実物貨幣の量だけでは経済現象を理解することはできない。
銀行は決済機能を持つ。
貨幣は距離の離れた銀行間、支店間でやり取りすることができる。貨幣の直接運輸はしなくても済む。
会社は給与として貨幣を従業員に直接渡すのは不便なので、銀行口座での取引で引き渡す。
企業間取り引きでは、貨幣を直接渡すのは不便なので、銀行口座での取引で引き渡す。
通販の販売で、銀行口座への入金が使われる。
銀行は貨幣の安全な保存先としての機能を持つ。
普通の個人は貨幣をそのまま自宅で保管するのは不安なので、銀行に預ける。
銀行は貨幣の運用先としての機能を持つ。
貨幣を銀行に預けておけば、勝手に運用してくれて、金利が付く。
銀行に貨幣を預けると、銀行内では通帳上の数値に置き換えられる。預けた貨幣は金庫の中に入れてそのままにするのでは、銀行としては利益が得られず、金利支払いも発生するため、その金利以上になるように運用される。
銀行の貸し出しは、まずは通帳への記入で行われる。また口座に入金した分の債権が同時に発生する。
債権は単なる約束だが、貨幣と等価値の有価物となる。
この時点では貨幣の移動は行われない。このため、貸し出しの処理自体は銀行が実際に持つ貨幣の量には依存しない。
貨幣に依存せずに、書いただけでお金を作ることができるため、「万年筆マネー」と呼ばれる。
銀行間での口座取引は相互に行われるため、銀行間で相殺される。
銀行間の取引は、「いつか貨幣を移転する」事を約束することで、貨幣の実際の移動を行わなくても良くなる。
銀行はほぼ倒産せず、夜逃げもしないので、信用貸しすることができる。
銀行が本当に貨幣を必要とする時は、顧客が銀行から貨幣で出金する時のみである。
このため、銀行は通常予測される範囲でしか貨幣を用意していない。
預金者が大勢で貨幣で出金しようとすると貨幣が不足して出金不能となる。(取り付け騒ぎ)
銀行が無闇な貸し出しをしないように、BIS規制と預金準備制度が存在する。
BIS規制は資本に対して自己資本比率が一定以上であることで制約をする。
無制限に貸し出しすることが不可能となる。
預金準備制度は一定の金額を日銀の口座に用意させる制度。
預金された貨幣の一部を必ず日銀の口座に残しておかなければならない。
預金された貨幣を100%そのまま貸し付けることができない。
元々は取り付け騒ぎのようなことが起きないことを期待していた?
その後金利政策に使われていた時期があったらしいが効果がなく行われないようになった?
債権はデフォルトされることがある。(相手が債務を履行できない状況になる。)
使われる貨幣と使われない貨幣とが存在する。
使われない貨幣とは、タンス預金のようなもの。貨幣のまま保持して取引に使わないこと。
使われない貨幣と使われる貨幣とを明確に区別すること、また、その量を推測することは困難。
貨幣で取り引きされたのか、貨幣と同価値のもので取り引きされたのかの区別が付かないため。
有価物の価値は、主に市場で決定される。
通常は、誰か1人が値段を決定するわけではなく、市場参加者の総意で価格が決定する。
額面価格と市場価格とが一致しないことがある。
例えば、債権の場合、デフォルトする可能性があり、その分安くなる。
例えば、株の場合、将来値上がりしたり配当金が増える可能性があり、その分高くなる。
有価物の価値は、状況により変動する。
経年変化
ブーム
利益率の変動
希少性
売買をした時に価格が決定される。
売買するまでは真の価格は分からない。それまでは評価額(おそらくその値段で売買可能であろうという価格)でしかない。
人により物の価値が異なる。
売りたい人と買いたい人、双方にその思惑がある。
欲しいと思うものにどれだけの値段を付けるのかは欲しい側(買いたい)の自由。
可能であれば安く買いたい。
安く買えれば、残った貨幣でさらにより多く買うことができる。
値段が高いなら買いたい人は減っていく。
売りたいと思うものにどれだけの値段を付けるのかは売りたい側の自由。
可能であれば高く売りたい。
少ない労力でたくさんの貨幣を手に入れることができ。その貨幣で欲しいものを買うことができる。
たくさん売れるなら値段を上げた方が得になる。
一方、値下げしてでもたくさん売った方が得になることがある。
例外的に値段が高い方が売れる物がある。
「悪いものは安く、良いものは高い」という思い込みによる。
売りたい人と買いたい人の価格が交差しなければ売買は成立しない。
これ以上安く売りたくない、これ以上高く買いたくない、となれば売買は成立しない。
売り手、買い手の片方がまったく居ない場合、売買は成立しない。
基本的には、同一商品であれば、安い物から順に買われる。高い値を付けた人から順に売られる。
市場が分散している場合には、若干のブレが発生する。
いちいち価格比較したり、市場を移動したりできないため。
一見同一商品のように見えても、付加サービスなどで差別化されていることがある。
買いたい人、買う人が増えれば価格は上昇し、売りたい人、売る人が増えれば価格は下落する。
売買される商品数が少ない場合には、大量の売買により、急激な価格変動が発生することがある。
1つしか商品がないのに複数の買い手がいるような場合には奪い合いになり、価格は最大限に引き上げられる。(オークション)
大半の人間は労働により賃金の支払いを受け、消費する。
経営者1割、労働者9割程度
よって、賃金の水準が個人消費に関わる価格の水準を決定する。
基本的には、以下の3つが消費行動となる。
個人による消費
企業の活動に伴う消費
政府による消費
財物の多くは、経年変化で価値が低くなる。場合によっては無価値(ゴミ)となる。
財物には有形のものと無形のもの(権利など)とがある。
サービスは受けた時点で償却される。(財物が残らない。)
少なくとも、日本では、賃金の支払いは貨幣によるものと法的に定められている。(現物支給は許されない。)
基本的には、商品の価格は、材料の仕入れ値、加工費、会社の運営費に利益を乗せたものになる。
売値(総生産額) - 材料の仕入れ値(正確には原材料費+燃料費+減価償却費)が付加価値となる。
企業は、利益が出ないなら、通常はその活動をしない。
将来、投資以上の需要が見込めないのであれば、投資をしない。
複数の企業がある場合、価格競争が発生する。
通常は安い方が買われ、高い方は買われなくなる。
このため、安くするためのインセンティブが自然発生する。
生産物の価格を安くするためには、以下のような方法がある。
材料費を下げる。
材料を減らす。
少ない材料で同一製品を作れるようにする。
材料の質を落とす。
価格交渉で材料を安くさせる。
加工費を下げる。
加工の工数を減らす。
人件費を下げる。
加工に関わる人の数を減らす。
加工に関わる人の賃金を減らす。
品質を下げる。
品質を上げるために使っているコストを削減する。
間接費を減らす
人件費を下げる。
間接作業に関わる人の数を減らす。
間接作業に関わる人の賃金を減らす。
大量生産により、間接費の比率を下げる。
利益が出なくても、何らかの目的のために安く売ることがある。
安く売ることで他社を締め出して市場を独占すれば、その後、価格を独断で吊り上げることができる。
それ以上高くしても売れない物は、安く売ってでも現金化した方が得になる。(在庫整理)
何らかの信念に基づき、安く売ることがある。(慈善事業など)
宣伝、客寄せのために商品の一部(または全部)を一時的に安くすることがある。
初期投資額を低くして、維持費で利益を得る方法がある。(例: プリンタ本体とインク)
各主体は、それぞれの目的に対して得になるように行動する。
何が得になるかは各主体の目的に依存する。
長期的に見て得になることと、短期的に見て得になることとがある。
多くの場合、短期的に得な方を選択してしまう。
長期予想をしない、または長期予想は外れやすいため。
一見、不合理に見えても合理性があることがある。
必ずしも厳密に考慮されているわけではなく、曖昧な条件で判断が変わることがある。
各主体が判断するために得られる情報は一部であり、必ずしも正しくない。(完全情報ではない。)
何らかの意図や誤解により、嘘の情報が流されることがある。
誤解、認知バイアスにより、情報を正しく受け取ることができないことがある。
統計を取ったとしても、それを見ての解釈は必ずしも正しくない。(背後の因果関係まで明確に分かるわけではない。)
未来予想は困難である。
人間が考える因果関係とその影響度は、それほど正しくない。
楽観、悲観によるバイアスが発生する。
世の中は複雑系になっていて、複雑な影響が発生するため、そもそも予測が困難である。
数学的に正確なモデルであっても、バタフライエフェクトにより、カオスが発生する。
短期の未来予想は簡単でも、長期の未来予想は困難である。
経済のシミュレーションは困難である。
シミュレーションを行うには、正確なモデルを作る必要があるが、経済に関わる諸要素は極めて複雑で単純化できない。
価格決定、行動決定は、物理現象ではなく心理現象なので、単純に数式にすることができない。
社会構造は動的に変化しているため、その変動を捉える必要があるが、統計しか取ることができず、また常に後追いになる。
モデルは仮説から作られ、またパラメータがモデル作成者により恣意的に決定されるため、実際の経済モデルと乖離する。
過去何が起きたのかを説明することはできるが、これから何が起こるかを正確に説明することは難しい。
せいぜいできるのは、今のままで進むとどうなるか、というシミュレーションだけ。
自己成就予言という現象が発生することがある。
予言を知った人が、その予言に基づいた行動を取ることで、結果的に予言通りになってしまう。
貨幣の移動は、以下の時に発生する。(基本的に、これ以外に発生しようがない。)
交換(他の有価物との交換)
貸借(貸す、借りる、返す)
贈与(あげる)。相続も贈与の一種。
捨てる。通常は行わない。
何らかの事故で失う。火事など。極めて稀。
落とす。どこかに忘れる。極めて稀。
拾う。極めて稀。
貨幣が(事実上)消える場合は以下の時
(統合)政府に吸収された時
会計上は残るが、市場から見て無意味な値となる。
何らかの事故で失われた場合。(火事など)
銀行に返済した時。(銀行が持つ債権が同時に消滅する。)
有価物の価値減少だけでは貨幣は消えない。
ただし、担保価値が下がったために、銀行からその分の返済を求められることはある。
有効需要は、貨幣と有価物の所有が裏付けになる。
潜在需要があっても、交換できる貨幣を持たなければ機能しない。
金を貸す側は、貸した報酬に相当するものがなければ通常は貸そうとしない。これは通常は、金利になる。
自分が単に持ち続けるよりは、誰かに貸して金利をもらった方が得になるから貸すことになる。
基本的には、インフレ率よりも高い金利を取らなければ実質損になる。
金を借りる側は、金利以上の儲けがあることが予想される場合で、手元に金がない時に、金を借りる。
手元に金がある場合はわざわざ金を借りる必要はない。
ただし、返すあてのない金を借りる人もそれなりに居る。
状況が同じでも、人によって判断が異なる。
情報が正しく伝わってこない。(伝聞での漏れ、間違い)
情報が正しく認識できない。(認知バイアス、知識の不十分さ、不正確さ)
正しく判断できない。(知識の不十分さ、不正確さ、論理的思考の欠如)
価値感により判断が異なる。(どちらがより望ましいかの判断は経験に依存する)
国債は、少なくとも日本の場合、政府から日銀が直接引き受けするのは禁じられている。(ただし議会で承認されれば良い。)
アメリカでは中央銀行による国債直接引き受けが認められている。
直接引き受けは禁止されていても市場取引は禁止されていないため、市場に国債が出てくる限りは中央銀行が買い取ることができる。
中央銀行は金利を見ながら国債を買い入れることができる。国債は買えば買うほど国債金利は下がり、貨幣の流通量は増える。