次田瞬「目的意味論について」
以下は私の感想であり、要約ではない
(M) 表象rがpを表象するのは次のときそのときに限る.
消費者と協働してい る生産者がrをもたらし,かつ,pが成り立つことが,rによって引きおこされるrの消費者の行動が担う機能が果たされるための正常な条件で ある
rによって引き起こされる行動が複数の場合、それらの機能が果たされるための正常な条件が皆同じであるという保証は無い気がする (転ばぬ先の杖と合わせて考える)
ayu-mushi.iconDNA情報は、タンパク質を作るのにも、相補的な鎖を作るためにも用いられる (その例は多義的といってよさそうだけど)
行為毎に成功に必要な確率が違っていたらどうするか
非決定性の問題を引き起こさないか(それがビービー弾とハエの問題では)
ayu-mushi.icon人がカエルの舌を引っ張っても、「カエルの舌を引っ張る」はショウジョウバエを表す表象ではない
指令面は常に「生きろ」and/or「交尾せよ」なども表すことになりそう?
ガゼルのストッティングがシンプルなシグナリングなら、それが志向的記号でもあることはありえるか
もしそうならセミの鳴き声なども志向的記号だろう
私が大声を出せるということを伝えるために、「うわーっっっ!!!」と大声を出して見せたら (これはシグナリングですらないが)それは「ayu-mushiは大声を出せる」という内容を持った志向的記号ということになる?
これをグライス的に言うなら、私が「うわーっっっ!!!」と大声を出して見せたとき、それを聞いた人は、私の「この発話から、聴者に、私が大声を出せるということを、私の意図を読み取った結果として信じてほしい」というグライス的意図を読み取って聴者が「ayu-mushiは大声を出せる」と信じる(ように意図されている)わけではなく、全く別の理由から「ayu-mushiは大声を出せる」と信じる(ように意図されている)わけなので、「ayu-mushiは大声を出せる」は私の大声の話者意味ではないということになる (しかしこの場合は、「うわーっっっ!!!」に専用の読み解き方があるわけではなく、一般的に人は音の大きさを聴くことができるということに過ぎない)
このグライス的意図を使った説明を進化論的に書き直すとどうなるか
たとえば教育のシグナリング仮説が正しいとして、「大学に行く」という行動は、「私は知能が高い」という内容をコミュニケートしている、と言っていいのか? (他の人が大学に行かないようにすることによって別の人が得するということはありえるので、D.ルイスの意味でのコーディネーション均衡にはなっていない気がする。)
(そもそもグライス的意図による意味の説明がどうなのかという気もしてきた。たとえば、私は聴者に対し、「聴者は私を信用していないのは分かってるけども、もし私がここで間違っていた(¬p)ら後で恥をかくだろうから、言ってることは真(p)なのだろう」と推論させてそのことによってpを信じさせよう、という意図で発話uを行った場合、pはuの話者意味でない、ということになるのではないか)
(グライスの後のバージョンでは「話者がpを信じていると聴者に信じさせる」という形になっているのでこれは反例にならないか)
意図 i = 「pと聴者に信じてほしい」+「発話uから、聴者は意図iを推論でき、その結果として推論pと聴者に信じるであろう」
1. 「聴者がpを信じることは話者の利益になる (と話者は思っている)」
2. 「uを聞いたとき、聴者がpを信じるのは、まさに(1) のゆえにである」
という意図iを持って発話uを行う
このように話者と聴者の関係を再帰的にすることでストッティングを排除できないか
1'. 「消費者の祖先がuを聞いたとき、pをその機能が果たされる条件とする行動を行ってきたことが、生産者の祖先の利益になってきたのは、消費者の祖先が(2')のような淘汰圧を受けてきたことによってそうなっていた。」
2'. 「生産者の祖先がuを発話したときに、それを聞いた消費者がpをその機能が果たされる条件とする行動を行ってきたことが、消費者の祖先の利益になってきた。それはそこでの生産者の祖先が(1')のような淘汰圧を受けてきたことによってそうなっていた。」
というより、この場合において、記号の消費者である捕食者 (チーターなど) の「別のガゼルを狙う」という行為にとって、〈ストッティングしたガゼルが生存すること〉は副産物であり、機能ではないということが重要なのでは?
(C) rの生産者と消費者が協働しているのは,rの生産と消費がrの生産者と消費者双方の適応度を上げるときそのときに限る.
たしかにrの消費は生産者の適応度を上げているのだが、そのことはrの消費という行為の機能の一部ではない
https://www.youtube.com/watch?v=qr5Sru8gGSk&t=058
仮にチーターから逃げるための適応の結果ではなく、偶然の突然変異によってストッティングするようになったガゼルが居たとしたら、それを狙わないことはチーターの利益になるか? (逆パターン: チーターが突然偶然ストッティングしないガゼルを狙うようになったとして、ガゼルがストッティングすることはガゼルの利益になるか?(Yes. ))
ハンディキャップ理論によれば、偶然の突然変異である以上、俊足であるかについては何の情報も得られないと考えられそうなので、チーターの利益にならない
高く飛べるということが、健康さのシグナリングなら、ただの突然変異のためにストッティングするガゼルについても情報が得られ、それを狙わないことがチーターの利益になることになる
(偶然、「俊足なときに限りストッティングする」ように突然変異するという想定をするべきではないのか)
この場合、生産者の機能は、消費者に対し何であれ真な表象を供給することではない気がする
ストッティングという動きが恣意的ではない点
もしここで、記号は恣意的であるにも関わらず r という特定の記号に対しそのように反応する理由が問われているなら、共進化の歴史に言及せざるを得ず、ストッティングが排除されるのでは
意味論的写像関数としては、
xがストッティングする→xは俊足
xがストッティングしない → xは俊足ではない
ストッティングしない方は先祖が自分が俊足でないときにストッティングしないということでもたらされる消費者の行動が生存に役だったために現在ストッティングしないというわけではないだろう(そうではなく、ストッティングしたらむしろ死にやすくなったからだろう)
そもそもハンディキャップ理論について調べる必要がある
分離均衡?
生産者が酸を出すと、消費者が酸があるときに適応的な振る舞いをするなら、酸を出すことは酸を出すことそれ自体を表しているのか
肉体言語
攻撃や給餌とコミュニケーションはどのように区別されるのか
うなり声で敵意を表現するとき、その生き物は協調的な目的に従事しているか
威嚇
25.ここで,表象の生産者を考慮しても状況は改善しないと思われる.生産者の機能は事実に対応する表象を消費者に伝達することだが,どの事実と対応するこ とが重要であるかは消費者が決めるというのがミリカンの考えであった (Millikan 1993, p. 88f).蜜蜂のダンサーは,特定の位置に餌があるという事実に対応し ているだけでなく,強風が吹いていないといった事実にも対応したダンスを生 産しなくては,その機能を果たしたことにならない.
というより強風が吹いていないときに限りダンスを踊れば良さそう
実際にそのように進化することはありえる