自発版補償付き臓器くじ
臓器移植を望む人々が集まってお金を出しあって、「お金がもらえるが、一定の確率で臓器が取られる」自発版補償付き臓器くじを開催した場合、どれくらいの人が参加するか? また、合理的なプレイヤーの間では、自発版補償付き臓器くじは成立するか?
これがふつうの臓器売買と違う点は、心臓のように取ると死ぬので売るインセンティブがない器官でも、確率要素を入れることで、「一定確率で心臓取られるけどお金もらえる」なら同意する人もいるかもしれないってこと。
ただ、リスク回避性を仮定すると、くじにしたところで成立するようにはならないんじゃないの? っていう疑惑あり。
【自発版補償付き心臓臓器くじ】
心臓移植の被提供者は1人とする。
参加数 (提供者側) が1人なら、ふつうの臓器売買と同じ。このときの金額をXとする。
参加数を2人にすると、1/2の確率で死ぬが、X/2の金額を受け取れる。
一般に、参加者がn人のとき、1/nの確率で死ぬが、X/nの金額を受け取れる。
死の悪さをDと置く。金額Xに対する効用はU(X)とする。 参加者1名の場合は、U(X) < Dなので参加せず (と仮定する)。 参加者n名の場合、U(nX) > 1/n Dなら参加する可能性があり。Uがリスク回避的効用関数 (2回微分が負) と仮定すると、これはありえない
ただ、正確に言うと、参加者1名の場合参加しないのは、
U(X) < D だからっていうより、死んでるか死んでないかでお金の価値が変わるからだと言ったほうがいいので、上の議論により参加は合理的でないと結論するのは早急。
たとえば何人かが無人島にいて、みんなが餓死しそうなときに、ランダムに誰か選んで殺してたべるっていう契約に、全員が同意するっていう状況は考えられるから、自発型臓器くじに参加するのが合理的でありえるっていうのは納得がいく。
あれやっぱり式がおかしかった。 参加者n人の場合は、U(1/nX) > 1/nD なら参加か。じゃあむしろリスク回避的な方が参加することになる。
以下の話から、持ってるお金の金額 X と 命の有無 isAlive それぞれから考えた効用 U(X, isAlive)を、U(X)とU(isAlive)の和のように表すのはおかしい、ということが分かる。
生命保険: みんなが一定のお金を出す。死ぬとそのお金がまとめてもらえる。
自発版補償付き心臓くじ: 提供側の参加者みんなが一定のお金をもらえる。一定確率で死ぬ。
だから保険の逆みたいな感じがして、リスク回避を仮定すると成立しないのかと思ったけど、そうでもないっぽい
死んだ場合にお金は価値を持たないとすると、 生きてる確率:(1- (1/n))
もらえる金額: X/n
金額Xに対する効用: U(X)
死亡確率: 1/n
死んだときの効用: D
…として、
(1 - (1/n)) * U(X/n) > (1/n)D
のとき参加って言ったほうがいいのかな。
事前に臓器移植が必要になるリスクを緩和するための金銭補償じゃない自発型臓器くじもありえる (ランダムに提供者にされることがある代わりに、被提供者になる権利が得られる)。自分が提供者側になるリスクもあるけど、総体的には臓器を失うリスクが減らせそう。
「失う」リスクは減らせないや。健康でなくなるリスクかな。