サウンドバーを買おうと思ったら、AVアンプを買っていた
最近流行り(?)というか、アキヨドなどの大型家電量販店でAV機器コーナーに行くと頻繁に目に入るようになったサウンドバー(シアターバーとも)。前々からテレビの音を良くすることには少し興味があって、置くようなスペースがあれば使ってみたいと考えていた。今回引っ越しをしたことによって、そのスペースを確保できそうになったので、サウンドバーの購入を検討していた。 それとは別にPC環境で使っているスピーカーを買い替えてもいいかもなあとも考えていて、検討する中でPolkというメーカーが値段のわりに良いという評判を見かけたので、候補にしていた。Polkはサウンドバーも出しているので、合わせて検討できたらと考えていた。 どちらにしても実物を見たり、音を聞いてみないことには分からないので、実際にモノを置いているアキヨドへと行くことにした。アキヨドには目当てだったPolkのR100をはじめとして、Signa S4などのサウンドバーも置いてあって流石の品揃えだった。R100は確かにいい音が出ていたので、買っても良いかもしれないと感じることができた。 ただ、ここで難点がひとつ。R100はデモ環境として、MarantzのM-CR612に繋いであった。いわゆるコンポ。私のPC環境にはオーディオ・インターフェイス(RME Babyface Pro FS)はあるけど、アンプがないのでアンプ相当のものがないとスピーカーから音が出せないことは分かっていた(現在はモニタースピーカー(HS5)なのでアンプがなくても音が出る状態)。 アンプが必要といっても具体的にどういうものが必要なのか分かっていなかったので、店員さんと話して教えてもらいたいという狙いもあって今回アキヨドまで足を運んでいた。というわけで、早速店員さんを探して話しかけることに。上記のような環境でスピーカーを変えたいと考えているが、どういうものが必要か教えてほしいとお願いした。事前に調べた通り、アンプが必要だと言われたんだけど、手頃な価格帯でアンプはほとんどないとも教えてもらった(正確に言えば、有名どころはミドル/ハイエンドに振ってしまっているという感じの話)。
やろうと思えば前述のM-CR612のようなものをアンプ代わり使うこともできると教えてもらった。その流れでPM7000Nを紹介してくれた。私は音楽を楽しむ環境に関してはほぼほぼ素人で、スピーカーを良いものに変えれば一定いい音が鳴るくらいの認識でいた。以前にDAPのようなモノを買って使っていたときもあるけど、結局ポタアンみたいなモノにまでは手を出していなかった。それもあって、アンプを変えるとどういう影響が出るのか理解していなかった。ヨドバシにはちゃんと違いが分かるようにデモ環境が作られていて、M-CR612とPM7000Nを並べて比較できるようになっていた。PM7000Nで聞いた音はとてもよくて確かに高いだけあった。いや、なんというか淡々と書いているけど、思わず笑ってしまったレベルで全然別ものだった。 M-CR612とPM7000Nを全く同じように設定して入力ソースも同じ条件(Spotify Connect)、アウトプットのスピーカーも同じで聞かせてもらったけど、最初PM7000N -> M-CR612だと正直違いがパッとは分からなくて、「あれ、なんかちょっと寂しくなった…?」程度だったのが、M-CR612 -> PM7000Nと戻してもらったらこんなに情報量違うんだ…というのが理解できてしまった。ちなみにこういうの普段よく聞いている曲を再生できるとより違いが分かりやすくていいですね。私は祝福/YOASOBIを再生させてもらいました。 https://www.youtube.com/watch?v=3eytpBOkOFA
アンプ(PM7000N)の話を聞いているとSpotifyやNASとも接続できるようになっているようで、こうなるとわざわざPCに繋げなくてもスタンドアローンで使った方がいいように感じた(以前からNASに保存している音楽をGoogle Homeで再生させたいということを書いていたように、NASに保存されている音源を再生させたいというモチベーションはあった)。元々話を聞きたかったスピーカーそっちのけですっかりピュアオーディオの魅力に引き込まれてしまっていたけど、こうなってくるとPC環境の音を改善するよりリビング環境で気持ちよく音楽を聞きたいという気持ちが強くなってきていた。 そのため、PM7000Nにテレビを接続することができますか、という質問をしてみることにした。すると、店員さんが「できなくはないですが、2chなのでサラウンドにしたいならAVアンプがオススメです」と言って別のコーナーでAVアンプを紹介してくれた。それがMarantzのNR1711だった。 AVアンプというものに対して最初ピンとこなかったのだけど、Dolby Atmosのデモ音源を再生してもらうと映画館で聞くそれと同じような音の聞こえ方でまたしても笑ってしまった。純粋なピュアオーディオではなくなるが、リビング環境の音を良くしたいという意味ではこちらも良い製品とのこと。どちらの製品にも一長一短があり、できること、というか機能という側面で見ればAVアンプの方が確実に多機能ではあるのだけれど、純粋に音の良さを楽しみたいのであればアンプ機能だけを持ったPM7000Nのようなものに軍配が上がる、というような理解をした。 ついでなのでサウンドバーも紹介してもらった。サウンドバーは確かに不思議な感覚で面白かった。確かにテレビだけ繋げたいのであれば、手軽で良いかもなあと感じた。ただ、純粋に音楽を楽しみたいシーンや環境の拡張性という意味ではAVアンプの方が好ましいことが理解できた。
うんうん唸っていると店員さんがMarantzのコーナーに連れて行ってくれて、NR1711の後継にあたるCINEMA 70sを見せてくれた(正確に言えば後継機ではなくて、シリーズとしてはリニューアルしたものになるらしい)。めちゃくちゃカッコいい。PM7000Nも相当欲しくなるようなカッコよさだったけど、CINEMA 70sは段違いだった。フロントパネルを見た瞬間、これをリビングに置きたいと思ってしまった。それくらいカッコよかった。 話を続けて聞くと、後ろにHDMI端子をいくつも持っていてパススルー出力に対応しており、4K/120Hz, 8K/60Hzに対応しているとのこと。最初は何の役に立つのか分からなかったのだけど、ゲーム機やBD再生機器のHDMI出力先はテレビではなくて、AVアンプになるからゲーム機やBD再生機器がDolby Atmosなどに対応している場合、ゲームやBDでもサラウンドを楽しめるということらしい。そういえば、デモ機はBD再生機器を使っていましたね。
いろいろと迷ったけど、心の中ではCINEMA 70sを買うことがほとんど決まった。値段的に即決するかは悩んだけど、欲しくて買えなくはないなら買ってしまった方が長期間楽しめるしいいかなと思った。2倍の値段するCINEMA 50というのもあったけど、70sで満足できなかったらでいいかと踏みとどまった。
そして、最初のスピーカーの話にようやく戻ってこれたんだけど、目当てのPolkのR100について改めて視聴しなおすことにした。運良く比較してみたい機種がすべて同じ機種のコンポに接続されていたので、純粋にスピーカーの違いを見ることができた。R100と比較したのは、PM7000Nの視聴をしたときに使っていたKEFのQ150。R100も良かったんだけど、Q150の方が好みの音が鳴ってるように聞こえたのでQ150に決めた。これは店員さんもこの価格帯で買うならこれはいいですよ!と一押ししてくれたのでよかった。 余談というか、本編?
長々と書いたけど、個人的に今回の件は非常に面白い体験だった。サウンドバーを買いに行ったのにAVアンプを買っていた、というストーリー自体も面白いけど、そこに至る過程が面白くよくよく考えるとなんでそうなったんだろう、と考えさせられた。元々私の中ではサウンドバーしか眼中になかったし、それを買うことしか考えていなかった。だけど、店員さんと話をしている中で自分の中にあった気持ちや課題感を整理することができて、そこにサウンドバー以外にもAVアンプというものが世の中にはあることを教えてもらって購入に繋がった、というのが気持ちの良い体験だったし、面白い。
簡単に私がサウンドバーを買いに行くまでの状況を整理すると…
音楽を聴くことが好きで、暇さえあれば朝から晩まで好きな音楽を流していることが多い
メジャー、マイナー問わず自分が好きな音楽を聴く
メジャーは昨今Spotifyなどの配信サービスで聴けることが多い
マイナーでも配信サービスで聴けることは増えてきたけど、古い音源はCDしかなかったり、直接音源を売ってるケースもある
自室にはPCとスピーカーが置いてある
HS5自体は悪いものではないので、それなりに音楽を楽しむこともできる
オーディオ・インターフェイスがあるので、ヘッドホンを接続することもできる
とはいえ、ほぼ仕事や作業をするための部屋なので、くつろぐときにはあまり使わない
キッチン、リビングエリア
Amazon Echo Dotが置いてあるので、キッチンに立っているときなどはEcho Dotから音楽を流していることが多い
わりと面倒なので再生しているのはSpotifyの楽曲だけになる
どうしても聴きたい音楽があればスマホからBT接続で再生する
テレビがあるが少し音が寂しい、もう少し迫力がほしかった
ゲームや映画で良い音を楽しみたい欲がある
という状況で「良いスピーカーがほしい」「サウンドバーがほしい」という目標地点を自分で設定してしまっていた。何より投資額としてはものにもよるけど、比較的安価で済むというのもあってそういうゴールを描いてしまったのだと思う。それが今回店舗で店員さんと会話をすることによって、「AVアンプを購入する」という結果に変わった。
何が良かったんだろうなと思い返すと
店員さんがしっかりと話を聞いてくれた
最初はPC環境用のスピーカーを変えたいという話
私がPC環境で使いたいという欲求を「PCやNASの中にある音楽を聞きたい」と解釈してくれた
実際には私の中でそこまでイメージはしてなかったけど、それができるならPCの前に行かなくても良い音楽を聴けるとイメージすることができた
聞いた上でアンプで音が結構変わることを教えてくれた
実際に聴き比べをさせてくれたり、馴染みの曲を聞けるようにしてくれた
この時点で私の中で感動が生まれた
感動して良いなと思った反面
PC環境だと置き場がない
オーディオ・インターフェイスの出力を流すだけにしてはアンプ自体が機能を持ちすぎていると感じた
もしこれを買うならリビング環境だなとイメージを持った
私がアンプで音が変わるのを理解できたのを一緒に楽しんでくれた
ニーズに合わせて提案するものを変えてきてくれた
私がテレビにアンプを接続できるか、という質問をしたときに「こうすれば一応できますよ」と教えてくれた
「こちらの方がいいかもしれません」とAVアンプというものを教えてくれた
さらにサウンドバーと比較させてくれたので、違いを理解することができた
CINEMA 70sと50の話をしているときにめちゃくちゃ共感してくれた
私が「カッコいいですね」って言うと、「そう思います。今私は50がほしいんですよね」という感じで話にノッてくれた
最初だから50ではなくて70sでも十分に楽しめると思う、ということも一緒に伝えてくれて、それがいい選択であるように感じさせてくれた
安価なものを買おうとしていることをバカにしてくるような態度をとられることがなかった
安いものなら何買っても一緒ですよ、みたいなことは一切言わなかった
私が最初にR100の話をしていたのを考慮してくれたのか、スピーカーはその価格帯をベースに考えてくれた
KEFのQ150に感動していたら、「これいいですよね、私もこの価格帯でこれはかなり良いと思うんですよね」ってノッてくれた
一言で表現するなら良いオタクの店員さんだったというのが良かった気がする。自分の沼にゆっくりと沈めにくる感じ笑 思い出したのは以下のツイート。
4Kテレビほしな〜って電気屋へ
わい「すいませーん、エルデンリングの暗いとこまでバキバキ見えるテレビくれ」
店員さん「フロムゲー!20時間ぶっ続けでやって寝落ちしますよね!有機ELはステータス画面のまま焼き付くからダメです!!!!」
そうなんや〜
やっぱりちゃんと話して自分の中に潜在的にあったニーズを引き出してもらって、自分の中で買った後のことをイメージできるように話せたのが良かったんだろうな。
最後は店員さんも「こんなに長く説明させてもらうのはなかなか珍しいので、楽しくなって話し過ぎちゃいました」と言ってくれていたんだけど、別れ際は私も思わず「本当にありがとうございました!」と無意識にお辞儀をしていた。周りの人が何事かと振り向いていたけど、そのくらい感動した買い物でした。