表現主義建築
Expressionismus(独), Expressionism(英)
第一次世界大戦
終結の頃に、ヨーロッパに起こった
デザイン流派
のひとつ。同時期に起こった
デ・ステイル
(近代の技術革新をベースにした幾何学的・
抽象主義
的なデザイン流派)とは対照的に、主観的・有機的なデザインを基調とする。
表現主義
が内包する代表的なグループは、ベルリンを中心としたドイツ語圏で見られた
ドイツ表現主義
、およびオランダのアムステルダムを中心とした
アムステルダム派
である。ドイツ表現主義の作品には、ガラスやコンクリートといった素材のもつイメージや性質を生かした造形が多い。
ブルーノ・タウト
の
《ガラス・パヴィリオン》
(
1914
)や
「アルプス建築」計画案
(
1919
)、
ミース・ファン・デル・ローエ
の
「ガラスの摩天楼」案
(
1921
)、
エーリヒ・メンデルゾーン
の
《アインシュタイン塔》
(1919-21)などが代表作として挙げられる。
また、アムステルダム派はレンガ造による曲線の造形が特徴的である。一方、建築史家の
藤森照信
によると、日本の表現派は、
大正9年
の
堀口捨己
、
山田守
らによる
分離派建築会
結成を機に隆盛した。堀口捨己の
《平和記念東京博覧会の塔》
(
1921
)や
《紫烟荘》
(
1926
)、
岩本禄
の
《西陣電話局》
(
1922
)、
吉田鉄郎
の
《山田郵便局電話分室》
(
1923
)、山田守の
《東京中央電信局》
(
1927
)、
石本喜久治
の
《朝日新聞社》
(1927)などが挙げられる。しかし、
1920年代
末には表現主義が姿を消し、
ワルター・グロピウス
、ミース・ファン・デル・ローエ、
ル・コルビュジエ
らが先導する
インターナショナル・スタイル
が世界的に普及した。
参考文献
『日本の近代建築(下) 大正・昭和篇』,藤森照信,岩波書店,1993
『カラー版 西洋建築様式史』,熊倉洋介、末長航、羽生修二ほか,美術出版社,1995
『表現主義』,鈴木貴宇編,ゆまに書房,2007
著者:田口純子