不条理演劇
Theatre of the Absurd
評論家マルティン・エスリンは『不条理演劇』(1961)のなかで、不条理演劇は人間の条件の不合理性・無意味さを内容とする点でサルトルやカミュの実存主義的な演劇と問題を共有している面があるものの、実存主義演劇がそうした新しい内容を古い習慣のなかで合理的な形式を通して上演するのに対して、不条理演劇は形式と内容の統一を目指している点で異なるとしている。すなわち、不条理演劇は人間の条件の不条理性を議論しようとはせずに、むしろその不条理的状態を具体的に舞台の上に提示するのである。 もともとはフランスの劇作家に多く見られる手法だったが、50年代後半には世界的な運動となり、日本においても、別役実をはじめ多くの作家たちに影響を与えた。
参考文献
The Theatre of Absurd,Martin Esslin,Vintage,2001(原著1968)
著者:木村覚