コンストラクティッド・フォトグラフィ
構成的写真
Directorial Photography
「ストレート・フォトグラフィ」とは反対の作り込まれた写真。「ステージド・フォトグラフィ(演じられた写真)」とも呼ばれ、1980年代の写真表現の大きな流れになった。
ポール・ゲティ美術館ディレクターのウェストン・ネフによれば、「撮る」写真から「作る」写真への移行である。あらかじめ想定した画面を作るために撮影者は演出家となり、撮影の前段階においてほぼすべての準備が終えられていることが多い。また、美術大学出身の作家が多いことも特徴的である。コンストラクティッド・フォトグラフィの作家が数多く輩出されたのは写真の客観的な記録性への信頼が崩壊していった時期にあたり、彼らは現実と虚構のはざまにおける遊戯性をベースとしながら、現実には存在しないイメージを人工的に作り上げた。例えばシンディ・シャーマンのように演じられた自己像を主題にするものや、ベルナール・フォコンのように人間のモデルやマネキンをジオラマのように配置して人工的に場面を演出するもの、サンディ・スコグランドのように精巧なセットや俳優を配するものなど、作家たちは虚構を現実化するために大掛かりな舞台装置を作り、自らのイメージバンクからさまざまな演出を引き出している。
参考文献
『現代写真の展開』,小久保彰,筑摩書房,1990
『世界写真全集12 ニューウェイブ』,集英社,1984
著者:小原真史