写真美術館
Museum of Photography
写真を専門的に収集、保存、展示する美術館。日本では1980年代末から1990年代前半に、その設立に向けての動きが本格化した。
まず、1979年に日本写真家協会が中心となって、写真家、評論家、歴史家、教育関係者など52名による「日本写真美術館設立促進委員会」(代表:渡辺義雄)が立ち上げられ、行政機関への働きかけやPR活動を展開。協会は1968年に「写真100年 日本人による写真表現の歴史」展を開催しており、その際の収集経験が美術館設立運動を促すきっかけとなったほか、アメリカのジョージ・イーストマン・ハウス国際写真美術館やニューヨーク近代美術館(MoMA)の写真部門など、海外の先行例も参考となった。また、1985年にツァイト・フォト・サロンの石原悦郎らによって「つくば写真美術館’85」展が開設され、一時的にではあったが、写真専門の美術館の設立が実現した。
こうした動きを経て、1988年に川崎市市民ミュージアムが、1989年には横浜美術館が写真部門を設置。1990年にはついに写真専門の美術館として東京都写真美術館が一次開館し、1995年に総合開館したほか、東京国立近代美術館にも写真部門が設けられた。また土門拳記念館(1983)のように、写真家の個人美術館も設立されるようになり、田淵行男記念館(1990)、入江泰吉記念奈良市写真美術館(1992)、植田正治写真美術館(1995)などが生まれた。近年では2009年に静岡に誕生したIZU PHOTO MUSEUMが、写真専門のミュージアムとして活発な活動を行なっている。
参考文献
『日本写真美術館1 設立趣意』,日本写真美術館設立促進委員会,1979
『日本写真美術館2 海外の写真美術館』,日本写真美術館設立促進委員会,1980
『日本写真美術館3 設立運動の総括』,日本写真美術館設立促進委員会,1994
『日本の美術館と写真コレクション』,松本徳彦,淡交社,2002
著者:冨山由紀子