『錯乱のニューヨーク』
Delirious New York: A Retroactive Manifesto for Manhattan, Rem Koolhaas
マンハッタンのあらゆる空間原理は空間の最大効率化をめざす「過密」の論理に基づいており、この原理によって成立する都市のなかでは建築物の内部と外部、あるいは各階の機能が分裂する状況がもたらされる。コールハースはこれを「建築的ロボトミー」と称し、プログラムとアクティビティの機械的な並列に可能性を見出している。 またグリッドによって分割される「ブロック」は、その範囲内での自由を保証しつつ、ほかのブロックとは切り離されている。資本主義の欲望から自動生成される錯乱した都市像は、規範的なモダニズムとは正反対のものだ。コールハースはそこで生まれる予想外の文化的突然変異を肯定し、正史としての「建築」と区別され黙殺されてきた存在を一転して議論の俎上に乗せた。
参考文献
『錯乱のニューヨーク』,レム・コールハース(鈴木圭介訳),ちくま学芸文庫,1999
『ユリイカ』2009年6月号,特集=レム・コールハース 行動のアーキテクト,青土社
S,M,L,XL,Rem Koolhaas,Bruce Mau,Monacelli,1995
著者:江川拓未