『写真論』スーザン・ソンタグ
On Photography, Susan Sontag
1973年から『ニューヨーク・レヴュー・オブ・ブックス』誌に掲載された写真に関する論考を集成した、スーザン・ソンタグの論集。原著は1977年に刊行され、写真論においてはいまや古典的な書籍となっている。
写真という知覚を拡張するメディアの氾濫によって、世界があまねく複写されたかに見える時代に対峙する際、ソンタグが一貫して主張するのは、写真を通じて問われる「見ることの倫理」である。その意味で、この書物は写真についての論考であると同時に、写真を通じて見る文化論であり、かつ、視覚の政治学であるともいえる。
論のなかで特権的な対象として記述されている写真家は、ダイアン・アーバスであるが、アーバスによる奇妙な人々を捉えた写真は、可視的な世界を平滑に把 握するという視覚メディアがもたらす思い込みに対する、ある種の抵抗として取り上げられることになる。
参考文献
『写真論』,スーザン・ソンタグ(近藤耕人訳),晶文社,1979
著者:土屋誠一