《ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ》
Rosencrantz and Guildenstern Are Dead, Tom Stoppard
主人公のローゼンクランツとギルデンスターンは、《ハムレット》では端役の小悪党にすぎないが、本作では対照的にハムレットが端役として登場するなど、正反対の関係になっている。ローゼンクランツが劇中、自己言及的に「はじめあり中あり終わりある、ちゃんとしたストーリーが欲しい」と訴えるように本作は筋が不明確で、ト書きに「これといって特徴のない場所」と記された舞台で脈絡を欠いた事件が続く。二人は原作の通りハムレットの策略によって処刑される運命にあるが、にもかかわらずやって来るハムレットをただ待っている。そうした物語の展開に対して主人公が徹底的に無力な点や全体に漂う不条理性から、サミュエル・ベケットの《ゴドーを待ちながら》と比較されることがある。 初演当時、「哲学的な喜劇」と称されたように、仕掛けの巧みさと着想の周到さが賛否を呼び、また「ここ十年間の英国演劇界における最も重要な出来事」と評された。 参考文献
『現代演劇』no.5,現代演劇研究会編,英潮社フェニックス,1981
著者:木村覚