西洋哲学史:ギリシャ哲学(ゼノンとメリッソス)
パルメニデス哲学の継承
「なにかひとつであり、おなじあるもの、変わることがなく、動くこともないものだけが存在する」
このようなパルメニデスの思考を肯定的建設的に論証したのがメリッソスであり、運動や多というものをただの見せかけとして否定し、破壊するために論証したのがゼノンである。 https://gyazo.com/56630e73b73b94f01d1b9e83f65a6904
ゼノン(前490年頃〜前420年頃)
ゼノン 否定性の哲学
多、場所、運動の否定 〜現象世界一般を否定
もし多があるならば、それは有限である。それが存在する数だけ存在しているのであれば、その数は限定されているからである。
他方、もし多があるならばそれは無限でもある。あるものと別のあるもののあいだには常にもう一つのあるものが介在し、またほかのものの間にもほかのものが介在する。このため存在するものは無限である。
このように多が存在すると仮定すると、その数は有限であるとともに無限でなければならないことになり、これは矛盾である。
(シンプリキオス『アリストテレス「自然学」注解』)
*このように前提から矛盾を導き出し、前提を否定する帰謬法による論証を開発したゼノンを、アリストテレスは「弁証法の創始者」と呼んでいたと言われている。(ギリシャ哲学者列伝)
ものごとはすべて世界の内に位置をもち、世界内部の場所に存在する。そのため場所もまた場所の内にあり、そしてこの場所もまた他の場所に内にあらなければならない、というように無限後退におちいる。これは不合理であり、よって場所といったものは存在しない。
アキレウスと亀
アキレウスは決して亀を追い抜けない。
アキレウスが亀に追いつくためには、まず亀の出発した点まで行かなければならない。
ところがその時には亀は若干は前進している。そのためアキレウスはさらに亀の前進した点まで行かねばならない。
だがその時には亀はさらに前進している。このことが無限に繰り返されるためアキレウスは無限に亀に接近はするが、決して亀を追い抜くことはできない。
飛矢の問題
飛んでいる矢は飛んでいない。なぜなら同一の場所を占めている限り、ものは静止している。飛矢も各瞬間にはそれぞれ同一の場所を占めている。したがって各瞬間には矢は静止しているわけであり、それゆえ全体としても静止している。
パルメニデスが「非存在」という概念の自己矛盾に気づいただけであるのに対し、ゼノンはその擁護者というよりも否定性そのものを真理としそれが攻撃的な形で現れた哲学である。
"パルメニデスはあると思われているものの何ものも世界にはあらぬと言う。エレアのゼノンはそういった観点すら捨て去ることによって、一切の面倒を取り去った。彼は何ものもあらぬという。パルメニデスを信ずれば一者以外には何も存在しない。ゼノンを信ずれば、その一者すら存在しない。"
(セネカ『書簡集』88)
メリッソス パルメニデス哲学の肯定版
https://gyazo.com/83217ba39cfa72a0e8270ff326a72669
メリッソス(前470頃〜没年不明)
サモスの人。
パルメニデスの「ないものはない」という否定性に基づく「存在論的な存在の哲学」をメリッソスは「存在的な肯定的一者の哲学」に移行。
メリッソスは「有るもの」に積極的肯定的な規定を付加し、それを対象=存在者として捉えた。
「有るもの」は永遠であり、それは常にあったし、また常にあるであろう。なぜなら、もしそれが生成したとするなら、生成する以前はそれは何ものでもないもの(無)であったのでなければならないが、何ものでもないもの(無)から何かが生じてくるということ不可能だから、したがってそれには始まりもなければ終わりもなく、時間的に無限である。またそれは空間的にも無限である。もしその大きさが限られているとするなら、それは空虚によって限られているのでなければならないであろうが、空虚は何ものでもないもの(無)であるがゆえにおよそ存在しないからである。したがってそれは一でなければならない。なぜなら無限なものが二つ有ることはできないから。二つあるなら互いに限定し合い、それぞれが有限であることになろう。また空虚がない以上、運動も不可能である。それゆえそれは不動であり、生じることも滅びることも、大きくなることも小さくなることもなく、同一であって、位置によって様変わりすることも、姿の点で異なるものになることも、混ざり合うこともない。また苦しむことも悲しむこともなく、健康で無病である。また密で粗でもなく、一様で充ちている。また一である以上、部分を持たず、したがって厚みを有さない。それゆえそれは非物体的である。メリッソス自身の言い方によれば「身体を持たない」。
(シンプリキオス『アリストテレス「自然学」「天体論」注解』、擬アリストテレス『メリッソス、クセノパネス、ゴルギアスについて』)
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