薔薇の内部
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何処にこの内部に叶ふ
外部がある。どんな痛みを
人はかういふ麻布で蔽ふのか。
なんといふ天が此中に映ずるのだ。
これ等の開いた薔薇の、
憂のない花の
内海に。見よ、
彼等がゆるやかの中に緩かに
横つてゐるさまを、慄へる手が
彼等を散りこぼすことも出来ぬやうに。
彼等は殆ど自分をも保てない。
多くの花は溢れさせ、
内部から流れ越え、
いよいよ充ちてゆく
日の中へこぼれ入る。
全き夏が一つの部屋になるまで、
夢の中の一つの部屋に。
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