著作権についての基礎知識
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
①知的財産権について
「知的財産権」とは、知的な創作活動によって何かを創り出した人に対して付与される、「他人に無断で利用されない」といった権利のこと。同じものを意味する用語として,「知的所有権」や「無体財産権」という用語が使われることがある。
https://gyazo.com/980cd2f7b3cad8946fc4c3e29afc57e4
著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~令和2年度
近年、知的財産権の対象は拡大される傾向にあり、今後も上記以外にさまざまなものが保護の対象となる可能性がある。
また、産業財産権などは権利を取得するために「申請」「登録」などの手続きが必要となるが、著作権はこうした手続きを一切必要とせず,著作物が創られた時点で「自動的」に付与するのが国際的なルールとされている(権利取得のための「登録制度」などは禁止)。これを「無方式主義」という。
②著作権制度の沿革
著作権の保護の歴史は非常に古く、十五世紀中頃の印刷術の発明に始まるといわれ、ヨーロッパ諸国では18世紀から19世紀にかけて著作権の保護に関する法律が作られた。
多くの国々が陸続きで接し合うヨーロッパでは著作権は国を越えて保護しなければならないため、19 世紀後半からヨーロッパ各国で二国間条約による相互保護が行われてきたが、1886年,10ヵ国がスイスのベルヌに集まり、「ベルヌ条約(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)」が作成された。
日本の著作権法制度は江戸時代まで遡ることができるとする説もあるが、「図書を出版する者」を保護する規定を持つ「出版条例」(1869年)がその先駆と考えられている。
我が国が近代的な著作権法を備えたのは1899年に「著作権法」(いわゆる「 旧著作権法」。以下「旧法」)を制定した頃であり、同時に、著作権保護の基本条約である「ベルヌ条約」を締結した(アメリカが「ベルヌ条約」を締結したのは1989年)。
この法律は数度の改正がなされたが、1970年に至って全面改正が行われ、現在の著作権法が制定された。なお、新しい技術の開発・普及に迅速・適切に対応するとともに、国際条約により定められた保護水準に適合させるため、最近ではいわゆる「知的財産戦略」の確立・推進など、国全体として著作物等の知的財産を重視していく動きを踏まえた制度の見直しが行われており、著作権法は毎年のように改正されている。
③著作権制度の概要
知的財産権のうち「著作権」は国際条約に従い、次のような権利によって構成されているが、「著作権」 という用語が広狭さまざまな意味に用いられているため、注意を必要とする。
https://gyazo.com/bee05fc3a8a4ebf53272cef6c76c4b1a
著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~令和2年度
(1)著作権
著作物→小説、講演、音楽、美術、映画、コンピューター・プログラム、データベース等々
https://gyazo.com/1a828284428538a5ee1eb005dc0b56e6
著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~令和2年度
著作者→著作物を創作したもの
「著作者の権利」の付与→「著作者の権利」は,著作物を創作した時点で「自動的」に付与されるため、登録等は不要(無方式主義)
「著作者の権利」は以下の通り。
https://gyazo.com/7b43299d77b85bef41f2b3efbb5e4cd8
著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~令和2年度
財産権における「○○権」の意味→他人が「無断で○○すること」を止めることができる(使用料などの条件を付けて,他人が○○することを認める)権利(許諾権)
「著作権(財産権)」の保護期間→原則として、創作のときから著作者の死後 70年間まで(例外として、無名・変名の著作物、団体名義の著作物及び映画の著作物については公表後 70 年)
「著作者人格権」の保護期間→著作者の生存中(ただし、著作者の死後においても原則として著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない)
(2)著作隣接権
著作隣接権→著作物等を「伝達する者」(実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者)に付与される権利
「著作隣接権」の付与→著作隣接権は実演等を行った時点で「自動的」に付与されるため、登録等は不要(無方式主義)
著作隣接権者→実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者
実演家→著作物を演じる「歌手」「俳優」など(アマチュアがカラオケで歌っているような場合も含まれる)
レコード製作者→音を最初に固定(録音)した人(アマチュアが鳥の鳴き声などを録音したような場合も含まれる)
放送事業者→同じ内容を受信者の手元まで無線で同時に送信する事業者(各国ごとの規制行政とは無関係であり,キャンパスFMなど,「放送法」等に基づく免許を得ていない場合も含まれる)
有線放送事業者→同じ内容を受信者の手元まで有線で同時に送信する事業者(各国ごとの規制行政とは無関係)
【注意事項】
「放送法」上の放送 :「不特定の人」向けの同時無線送信
「著作権法」上の放送:「不特定の人」又は「特定多数の人」向けの同時無線送信(「特定多数の人」向けの場合,「放送法」では「通信」に当たる)
著作権法には「通信」という概念は存在しない。
著作隣接権の内容は以下の通り。
https://gyazo.com/56c3172c188fce69e14f75f296e34a43
著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~令和2年度
【注意事項】
実演家の了解を得た「映画の著作物」に「録音」、「録画」された実演については、その後の利用について実演家に財産権は存在しない。
https://gyazo.com/34e760ef68b0b9bcf585645285b6c6f1
著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~令和2年度
※レコード製作者、放送・有線放送事業者には「人格権」はなく、「財産権」のみ認められている。
【注意事項】
許諾権→他人が「無断で○○すること」を止めることができる(使用料などの条件を付けて他人が○○することを認める)権利
報酬請求権→他人が「○○した」ときに使用料を請求できる権利
「著作隣接権」(財産権)の保護期間
https://gyazo.com/ae5467fff388e4a99d7661773b861400
著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~令和2年度
「実演家人格権」の保護期間→実演家の生存中(ただし、実演家の死後においても、原則として実演家人格権の侵害となるべき行為をしてはならない)
(3)「伝達的な行為」をする者の権利
国際条約では、著作隣接権は「実演家」、「レコード製作者」、「放送事業者に付与することとされているが、日本はこれよりも保護が厚く、「有線放送事業者」にも著作隣接権を付与している。
「映画の製作・上映」や「本の出版・販売」も、ある意味で「原作」等の「伝達」を行っている(「レコード製作者」と似た行為をしている)ともいえるが、著作権に関する条約や多くの国々の著作権法は、次のような考え方を採っている(ただし、「レコード製作者」を著作者として保護したり、「出版者」に著作隣接権を付与したりしている国も一部には存在する)。
映画の創作者=著作者
映画の創作はある意味で「原作」や「脚本」を「伝達している」ともいえるが、映画を創る行為は「著作物の創作」であるという考え方により、映画の創作者には「著作者の権利」が付与されている。
レコード製作者=著作隣接権者
レコードの製作(「音」の録音)は「著作物の創作」ほどの創作性はないが、「著作物の創作に準ずる行為」であるという考え方により、レコード製作者には「著作隣接権」が付与されている。
出版者=権利なし
本の製作(「文章」や「写真」などの印刷)は、現行の条約や多くの国の著作権法では権利の対象となる行為とはされておらず、出版者には著作者の権利も著作隣接権も与えられていない(ただし,当事者間の契約により出版者に「出版権」を設定することは可能)。
基礎知識はここまで(この後が長い)。もっと詳細に知りたい方はは文化庁の上記テキストを読んでください。