箱男と時代
以下では、『箱男』の作品が書かれた時代と作中内の時代を考察する。
年代の特定のための手がかり
作中の具体的な年代もかなり難問です。いくつか手掛かりはあるのですが、確定は難しいように書かれています。素直に書かれた1968~1973の間と考えてもいいですが、それ以上つめようとすると難しい。
本当だ、年代が明かされてないんですね。素直に1970年代だと思ってしまっていた(笑)
P106に、ベトナムでの北爆のニュースがあるから北爆の開始された1965年以後が主な出来事の舞台だということはわかるのですが、それ以上は時代風俗などからの類推になってしまいますね。 空気銃
P17など。現実の法規制との関係。「実銃」と「空気銃」の関係。1955年に装薬銃同様に購入と所持に許可が必要に。銃のモチーフ。
『箱男』は1973年に出版されているからもう購入と所持には許可が必要な状況になっているんですね。 そうだと思います。Aも友人に借りに行っていますし。
空気銃規制は行われている年代だと思います。
新聞記事を手がかりに
P103やP106、新聞記事などの言及されているニュースをもっと検討すればもっとつめられるかもしれません。
あとこれはもっとあとに言おうとしていたことなのですが、冒頭P6の新聞記事でピストル連続殺人魔一〇九号が警戒されてますが、これは明らかに連続殺人犯の永山則夫という人をモチーフにしていると考えています。この人は中上健次たちに注目されたほど、社会的(文学的)にも有名なようです。この人の事件は1968年に起き、1969年に犯人・永山則夫が逮捕されました。実際は警察庁広域重要指定108号事件だったのですが、わざわざ一〇九号にしていることが引っかかります。 あくまで物語の世界だということを示したかったんですかね?
それもあり得るし、この小説自体を特定の時代的枠組みに限定しない目的もあったのかもしれません。
ちなみに、P6の新聞記事?に出てくる「浮浪の罪」は1948年に廃止されている。つまり、冒頭で時代が不確定的にされている?
現実には存在しない日付
名古屋高裁の安楽死についての判例
P185・186、名古屋高裁の安楽死についての判例は昭和三十八年二月とあるが、モデルとなった事件(山内事件)では昭和三十七年12月22日に判決が下された。内容はほぼ同じ。
その他 今後考察したいこと
また、P154などに「九月の最後の土曜日」という記述もあり、この辺も総合するとつめられるかもしれません。
仮に作中年代をほぼ執筆期間だとすると、1970年の大卒初任給が4万円の時代における5万円や3千円。